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体験活動を伴う諸教育の効果に関する考察
〜高3経済「宅配便から社会を見る」の実践を通して〜
  web.05
(2008.8)
同志社香里中学校・高等学校 藤井 宏樹先生

1.はじめに

21世紀を生きる私たちに課せられた大きな課題は、「持続可能な社会」のシステムを整えることだと考えています。しかし、地球規模での環境破壊や貧困、戦争、テロなどの問題が次々に起こっているうえに、原油や穀物価格の高騰が混乱に拍車をかけています。国内においても、種々の問題によりかつての安全神話やセイフティネットなどへの信頼が揺らいでいます。

1996年の第15期中央教育審議会の答申において、「生きる力」の育成が基本方針とされ、知識詰め込み型の教育から、子どもたちが自ら課題を見つけ、学び、考える教育に転換することや、ゆとりある教育活動をすることなどが提言としてまとめられ、総合的な学習の時間等で様々な取り組みがなされてきました。
 
しかし、学力低下を招いたという批判もあり、次の学習指導要領では理数教育の充実、時間数や内容の増加の一方で、総合的な学習の時間が縮減されることになりました。基礎的な知識やものの見方・考え方を教えることはもちろん重要なことですが、安易な詰め込み型教育への逆行は避けたいところです。

その点では、昨年2月に出された中央教育審議会「審議経過報告」で、「人間力の向上を図る教育内容の改善」として、「言葉や体験などの学習」を重視する必要性があると指摘されたことは銘記しておく必要があります。

現行の学習指導要領が掲げた「生きる力」を、社会生活の観点から見直した結果、「自立した一人の人間として生きていくための総合的な力を育成することを目指す」ということなので、学校も地域社会の構成要素であるという自覚に立ち、学内だけでは完結しない体験や活動を取り入れる必要があるということです。体験活動を伴う諸教育の重要性が高まってきたといえるでしょう。

2.体験活動を伴う諸教育により生徒に育成すべき資質や能力

起業家教育、消費者教育、経済教育、キャリア教育あるいはシティズンシップ教育等、体験活動を伴う諸教育の重要性が高まってきたと述べましたが、当然のことながら、これらを推進しようとしている団体の問題意識によって、それぞれの到達目標は違います。

そこで、官公庁や各団体が発表している文書のなかから、「ねらい」や「目標」として掲げられているキーワードをすべて抜き出して整理することで、学校教育現場で生徒たちに育成すべき資質や技能についてまとめました。「知識」の部分に関しては、それぞれの専門領域によりある程度限定されてしまうので、今回の調査対象からは省きました。その結果、84項目を抽出することができました。一覧表を掲載するスペースがありませんので、ここでは簡単な考察のみ紹介させていただきます。

まず、資質や意識の部分では、すべての教育が「自主・自立心、自己責任意識」を目標に掲げています。次に多いのが、「知識を活かす知恵」です。例えば、悪徳商法の知識を持っていても、言葉巧みに騙されて被害に遭うケースが後を絶ちません。学習の成果として得た知識を実生活の上で役立たせなければ意味がないといえるでしょう。

一方、能力や技能の部分では、「情報収集力」「分析力」「問題発見力」「解決力」、それに「意思決定力」「論理的思考力」「合理的判断力」をあげているケースが多く、「意思決定力」についてはすべての教育が目標に掲げています。

ここから生徒たちに身につけてもらいたい資質や能力が浮かび上がってきます。まず、自主・自立の精神に富み、論理的思考に基づいて主体的に意思決定でき、そのことに責任が持てる人物の育成が求められているということです。

次に、今日の情報社会において、主体的に情報を収集し、分析したうえで取捨選択できる力を身につけ、そこから問題を発見し、課題を設定してそれを解決する力が重要です。問題解決を遂行するに当っては、他者と協働するためのコミュニケーション力や表現力、評価能力、リスクマネジメントも必要です。

最後に、これらを実行する力やチャレンジ精神が求められているといえるでしょう。

3.資質や能力を育成するために効果のある体験学習の開発原理

本校では昭和40年代から、「野外調査」等の体験的な活動を取り入れてきました。その経験をもとに筆者が赴任してから「会社をつくろう」「環境NGO/NPOをつくろう」「コンビニから社会を見る」「海外旅行の企画を売り込もう」「宅配便から社会を見る」等々のプログラムを実施してきました。ここでは筆者が教材開発にあたって重視していることを紹介しておきたいと思います。

【1】 現実の社会を知ること
(1)新しい視点の提示
会社経営や商品企画の面白さを味わうだけで終わらせず、主体的な生活者や経営者という新しい視点から社会を見ることができるようにさせたい。
(2)現実社会の理解
「コンビニ」や「宅配便」など、生徒の身近にあるものを切り口にして、そこから社会の現状や変化、問題点などを考えさせたい。
(3)社会との接点
ビデオ教材や講演だけでなく、社会人や留学生とのワークショップのほか、自らが街に出て職場を見学したり、関係者へのインタビューやマーケティングリサーチを実施したりすることで、実社会や現場の空気を肌で感じ取らせ、進路決定の参考にさせたい。
(4)社会への還元(プロジェクト型学習のねらい)
調べ学習で終わらせず、社会への提案という形をとることで、知的好奇心や公民的資質を養うとともに、社会の一員としての自覚を促し、社会貢献を基にした自己実現の喜びを感じとらせたい。

【2】経営の疑似体験
(1) 会社経営のシミュレーションソフトを用いる
各自の意思決定がどのような影響を与えるかをコンピュータでシミュレートすることで、情報収集・分析、多様な視点からの判断、論理的思考力、「仮説-検証」過程の重要性について気付かせたい。
(2) 企画書・提案書の作成とプレゼンテーション
グループ内で社長等の役職を決め(ロールプレイング)、新商品・サービスの開発や近未来の○○事業の提案等をまとめて発表させることで、創造力や表現力のほか、コミュニケーション力等の人間関係形成のスキルの重要性に気付かせたい。
(3) 勤務評定(相互評価と自己評価)
役割理解、興味・意欲・関心、得意分野等を評価することで、多様な評価の観点を示唆するとともに、自己の潜在能力や可能性に気付かせ、自己理解・他者理解の一助としたい。
(4) 競争原理の導入と振り返り作業
すべての活動に競争原理を導入して意欲を高めることと、自己の意思決定や活動を丁寧に振り返らせることにより、自ら学ぶことや失敗から学ぶことの重要性について気付かせたい。

以上の8項目を重視してプログラム開発を行っているわけですが、プログラムによって、あるいは実施する学年や配当時間によっても重点を置くポイントは変えています。

次に、これらの原理を取り入れた実際のプログラムを紹介し、さらに授業を受けた生徒たちがどのように変化したのかという点について述べさせていただきたいと思います。

4.「宅配便から社会を見る」

4.1 単元設定理由と目的

改めて云うまでもありませんが、この授業で宅配便事業の経営そのものや、業界のことを詳しく教えたいわけではありません。宅配便事業が急速に成長してきた原因を探ることで日本社会の変化を読み取ること、経営ノウハウ等を知ることで、商品開発・流通・販売にいたる経済のダイナミックな動きや雇用関係、監督官庁との関係等について生徒自らが学ぶことを目的としています。

また、授業開始当時のタイムリーな話題として小泉内閣の構造改革、とりわけ郵政民営化について考えることも求めました。つまり、「宅配便」を切り口にして、社会のしくみや動きをマクロ的に見る視点を与えることが第一の目的です。

第二の目的はミクロ的な視点を与えることです。経営シミュレーションソフトを用いて、データ分析と仮説―検証を繰り返させ、それを丁寧に振り返らせることで、効率よく経営(学習・行動)するためには正確な情報分析、多様な視点からの判断、意思決定のスピードとタイミングが重要であるということに気付かせることも重視しました。

第三の目的は、キャリアデザイン力の養成です。業界関係者の講演のほか、最前線で働いておられる方々にインタビューすることで、仕事とは何か、働くとは、生きるとは、生きがいとは、等について考えるきっかけを与えることと、社会人に求められる種々のスキルを体験から学び取れることを目指しました。

つまり、これら一連の活動を通して、情報を分析する力、自分で考えたことを整理して発表する力、議論してひとつの結論を纏め上げる力等、第2節で検討した資質や能力を身につけるとともに、望ましい職業観や勤労観を養ってくれることを期待しています。

4.2 対象生徒(2005年度)と授業概要

・高3 選択科目「経済特論」受講者69名(男61・女8)
・すべての生徒は、高1で「環境NGO/NPOをつくろう」と株式学習ゲームを、学内中学出身の男子55名は中3時に「会社をつくろう」を経験しています。
・2005年6月に内閣府主催の「日本21世紀ビジョン−子どもトークライブ」に参加し、竹中平蔵大臣(当時)の講演とパネルディスカッションを経験しています。

表1:学習活動の流れ
単元 学習テーマ 学 習 内 容
第1章
(授業)
イントロダクション ◇「宅配便」を切り口にした授業の概要を説明する。
◇宅配便について、インターネットで調べる。
1時間 宅配便経営シミュレーションの試用 ◇シミュレーションソフトを試用し、経営について考える。
◇メンバー同士による情報交換と意思決定を行う。
※「シミュレーション!宅配便経営」・・・(株)アントルビーンズ 
▲宅配便 経営戦略シート No,1・ No,2
第2章
(VTR)
1時間
ビデオ鑑賞 ◇NHK プロジェクトX 挑戦者たち(2000年5月29日放送分)
「腕と度胸のトラック便 〜翌日配達・物流革命が始まった〜」 
▲ワークシートNo,1 【クイズとビデオ】
第3章
(授業)
(作業)
1時間
授業とインターネット利用による調査 ◇クイズの解説とインターネットによる調査により、宅配便事業の誕生および発展の経緯を探る。
◇宅配便が急増した理由・社会的背景を考える。
◇宅配便が経済・社会に与えた影響について考える。
◇一連の作業を通じて見えてきた現代社会の状況についてまとめる。その際、コンピュータネットワークや情報化社会、道路網の発達、核家族や単身世帯の増加、少子高齢社会、環境問題、行政との関係など、プラス・マイナス両面から社会を見つめ直すことに注意する。
◇調査内容・質問事項などを考える。
▲ワークシートNo,2 【宅配便に関するリポート その1】
第4章
(講演)
1時間
宅配便業界最前線 ◇宅配便会社の経営責任者より、業界最前線の話を聞く。
◇講演内容やインターネットの調査で疑問に思ったことを質問する。
▲ワークシートNo,3 【宅配便に関する講演】
第5章
(作業)
1時間(宿題)
宅配便事業から見る社会
(情報分析)
◇インターネットでの調査や講演内容を分析して、宅配便事業の現状や将来像について考える。
◇郵政民営化との関連について考える。
▲ワークシートNo,4 【宅配便に関するリポート その2】
  課題(第8章で作成する企画書・提案書)配布 ◇現状を把握したうえで、今後の動向を予測し、第8章で作成する企画書・提案書の課題について各自で考える。
▲ワークシートNo,5 【宅配便新商品・近未来の宅配便事業の提案 個人用】
第6章
(宿題)
関係者へのインタビュー(フィールドワーク) ◇宅配便の営業所や取次店の方あるいはセールスドライバーの方から、宅配便の現状や将来性について聞き込み調査を行う。
◇最前線で働いておられる方々から現場の声を聞くことで、新商品開発と、近未来の宅配便事業について考えるベースをつくる。
◇社会人との折衝により、コミュニケーション力等を養う。
▲ワークシートNo,6 【関係者へのインタビュー:現場の声を聞こう】
第7章
(作業)
1時間
宅配便経営シミュレーション ◇シミュレーションソフトを使用し、経営について考える。
◇時々刻々変化する状況(データ)を記録しながら、メンバー同士による情報交換により意思決定を行う。
→「シミュレーション!宅配便経営」 
▲ワークシートNo,7 【シミュレーション経営戦略シート その1・その2】
(作業)
1時間
(宿題)
振り返り(ディブリーフィング) ◇事前計画と実際の意思決定を比較して、わかることをまとめる。
◇データと決定事項・タイミングの関係についてまとめる。
▲ワークシートNo,8 【振り返りシート その1・その2】
第8章
(作業)
1時間(宿題)
グループ討議 ◇(1)・(2)どちらかの課題について考え、企画書・提案書を作成する。
(1)宅配便に関する新商品・新サービスを開発せよ!
(2)宅配便事業はどのように進化すべきか提案せよ!
◇宅配便の会社に送付して審査していただく。
▲ワークシートNo,9 【宅配便新商品・近未来の宅配便事業の提案グループ用】
第9章
(作業)
1時間
相互評価と自己評価 ◇一連の学習を終えて、活動に対する意欲や姿勢を評価する。
◇グループメンバーによる相互評価(勤務評定)と自己評価
◇他人を客観的に評価することの大切さに気付かせるとともに、評価規準を持つことで自己理解の一助とする。
▲ワークシートNo,10 【相互評価:勤務評定と自己評価】
第10章
(作業)
1時間
振り返りの振り返り ◇第7章の振り返りワークシートその2(マークシート式)を集計したデータを客観的に分析し、考察する。
◇生徒たちが何をどの程度意識していたのかを示すデータなので、自分の考えと他人の考えを比較することにより再度自分たちの行動を振り返ることができる。
▲ワークシートNo,11 【振り返りの振り返り(考察)】

5.効果測定

5.1 「振り返り」と「振り返りの振り返り」

従来の実践では、事後に自由記述の感想を書かせることが主でしたが、今回は、第7章「振り返り」、第10章「振り返りの振り返り」という2つの単元を設けました。

マークシートを使用することで質問を約100項目に増やすことができたため、自由記述と併用することでかなり綿密に振り返らせることができました。その結果、「宅配便から社会を見る」の実践により、生徒たちは多くのことを学んだということができます。

5.2 体験活動はいかなる資質や能力の育成に効果的だったのか

このような体験活動がいかなる資質や能力の育成に効果的だったのかという点で、さらに詳細な検討が必要であると考え、2007年度には、「政治経済特論」受講者 133名を対象に、「生徒に育成すべき資質や能力」で検討した84項目について、下記の(1)〜(3)に関して、それぞれ10段階で評価させました。
(1) 学校を卒業して社会に出る段階で、どの程度身に付けておくべきだと思うか。(以後、「理想」とする。)
(2) あなた自身は現在どの程度身に付いていると思うか。(以後、「事前」とする。)
(3) 授業を終えた今、あなた自身はどの程度身に付いていると思うか。(以後、「事後」とする。)

まずは、「宅配便から社会を見る」の授業に入る前(10月5日)に(1)と(2)のアンケートを取り、11月20日に終了した時点で(3)について再評価させました。なお、いずれかの日に欠席したものは対象から除外しましたので、有効数は128名です。

「事前」と「事後」のデータを比較分析することにより、効果があったと言えるかどうかを判定するために「t検定」を実施しました。なお、統計ソフトは、SPSSを使用しました。

その結果、t検定で有意確率「0.000」と出たのが63項目あります。これらは実施前後で有意さが見られたということですから、一定程度の効果があったということができる項目です。

これによると、実施前後で生徒自身が一番身に付いたと実感できたのは「責任感」でした。責任感は、将来社会に出る前に必要だと考えられる項目としても、平均9.0pで2番目に高い値が出ており、また、事前アンケートで、現在身に付いていると思う度合いは6.5pで4番目に高かった項目です。

つまり、すでにある程度身に付いていると思っている生徒が、このプログラムを通してさらにその重要性を理解し、なおかつ自分自身の身に付いたと実感できたということです。なお、「理想と現実との差」では(有意確率の高い項目を除くと)2番目に低い(-1.6p)数値となっているので、多くの生徒がかなり理想に近づけたと考えたようです。

次に高かったのは「学習意欲」です。日本の高校生の意欲が低いという調査も出ているので、このような体験活動が学習意欲にも好影響を与えているということは特筆すべきでしょう。他にも、9番目に「チャレンジ精神」、12番目に「労働意欲」と、意欲やモチベーションに関する項目が並んでいます。

他の項目では、3番目に「経済的な見方・考え方、経済学的な推論の能力」、4番目に「WIN-WIN思考」、そして6番目も「働く意義の理解」、「仕事上の役割、仕組みや進め方を理解する」、「社会に関与し貢献しようとする意識」等の3項目が0.7pで並んでおり、さらにこの後にも、「効果的な仕事の進め方(PDCAサイクル)の理解」や「社会の仕組みを理解する力」が続きます。

これらはいずれも「仕事」や「社会」に関する項目ですが、いずれも0.7p以上も上昇しています。 〈以下、省略〉 

5.3 各章の活動の効果に関する考察

前章では、実施前後に行ったアンケート結果を比較することで、生徒自身が身に付けることができたと実感できた資質や能力を明らかにしました。

そこで、次に「生徒に育成すべき資質・能力」と、諸活動との関連を明らかにするために実施したアンケート(2007年12月10日・11日)の結果について検討してみたいと思います。

「政治経済特論」受講者133名のうち、欠席者を除く124名分回収できました。内容は、「生徒に育成すべき資質・能力」84項目のうち50項目に関して、これらを身に付けるのに効果があったと思うものを、各章の活動から選び、第1位〜第4位まで順位を付けなさいというものです。このアンケートで、1番効果があったとした活動を集計しました。これも紙幅の関係で一覧表の掲載は不可能ですから、どの活動が効果的だったかという例を二つだけ紹介しておきましょう。

まず、「経済的な見方・考え方、経済学的な推論の能力」に関して一番影響を与えたのは経営シミュレーションでした。授業でも「希少性」や「機会費用」、「トレード・オフ」等、日本の学生・生徒が苦手としている「経済学における基礎的な概念」について、例をあげながら説明しましたが、おそらく生徒は単なる知識、あるいは用語解説程度に受け止めていたと考えられます。

しかし、シミュレーションを通して、実際に刻々変化するデータを見ながら、次はどこに営業所を開設するか、不足している車両を何台購入するか、等々を議論しながら意思決定していくなかで、これらのことを体験的に学ぶことができたと実感したということでしょう。今回は実施後のペーパーテストで、このような経済学の概念、あるいは「経済リテラシー」に関する出題はしませんでしたが、今後はそのことを確かめることも必要でしょう。

次に、「自己に関する意識や資質」に関して、1位にあげた生徒が最も多かったのは「インタビュー」でした。特に、「積極性、能動的姿勢、前に踏み出す力、勇気」に47.5%、「自律心、規律性」に関しては、45.0%の生徒が1番効果的だったと答えました。

「インタビュー」が他の活動と最も異なるのは、自分で営業所に行ったり、セールスドライバーの方に声をかけて、インタビューさせていただくように要請しなければならないことです。ある生徒は、「好意的にインタビューを受けてくれて助かったが、働いている人に時間を取ってもらって会うことの難しさを学んだ。」と述べています。高いハードルをクリアしたときに得られるものは大変大きいということがわかります。

インタビューの効果に関して次に多かったのが、「労働意欲」でした。現場で働いておられる方の姿を見るだけでなく、直接会話することで多くのことを吸収したようです。以下、「チャレンジ精神」、「自信、自己肯定感」、「共感」、「感動する心」、そして「知的好奇心、探究心」に対しても効果的だったと答えた生徒が多かったです。〈以下、省略〉

5.4 アンケート結果と考察 (まとめ)

 これまで、プロジェクト型学習「宅配便から社会を見る」を事例に、生徒たちに身に付けさせたい資質や能力と体験活動との関連性について検討してきました。考察の結果、次の2点が指摘できます。

第1は、育成したい資質や能力の種類によって、効果的な体験活動が異なること。
第2は、理論的検証に加えて教育効果からの検討を行ったことで、教育プログラムに取り入れるべき活動内容が一層明確になったこと。

6.おわりに

このホームページでは紙面の関係でそれぞれの単元内容を詳しく説明することができませんでした。
2006年度・2007年度の2年間、大阪府金融広報委員会から「金融教育研究校」の指定を受けておりましたので、その研究結果報告書を作成しました。下記のURLで公開していただいておりますので、ご意見、ご批判等をいただければ幸いです。
http://www.sogogakushu.gr.jp/tkf/fuji2008.htm

〈主要参考文献〉
1)小倉昌男『経営はロマンだ!』日本経済新聞社,2003年。
2)舘沢貢次『ヤマト運輸の野望 進化する宅急便の21世紀戦略』ぱる出版,2002年。
3)土井教之,西田稔編著『ベンチャービジネスと起業家教育』御茶の水書房,2002年。
4)古田龍助『ベンチャー起業の神話と現実―起業家教育のメッカ,米バブソン大学からのレポート』文真堂,2002年。
5)横山秀樹「コンピュータ・シミュレーション活用による市民的判断力の育成−多目的意思決定学習の論理−」,『社会科研究第54号』全国社会科教育学会,2001年。
6)原田紀久子「地域活性化に不可欠なアントレプレナーシップ教育 −産官学連携のもとに人材育成に取り組む必要性:教育に投資せよ!−」,『ベンチャー学会全国大会2002発表論文集』,2002年。
7)山根栄次「社会科と総合的な学習の時間における起業家教育の意義と方法」,『三重大学教育学部研究紀要 第54巻 教育科学』,2003年。
8)藤井宏樹「2005年度 高校3年生 経済特論 宅配便を切り口にした経済教育プログラムの試み」,『教育研究誌第33号』同志社香里中学校・高等学校,2006年。
9)藤井宏樹「海外旅行の企画を売り込もう!〜起業家教育の手法を取り入れた中1地理的分野の授業」,『日本シミュレーション&ゲーミング学会 全国大会論文報告集 2006年秋号』,日本シミュレーション&ゲーミング学会,2006年。
10)藤井宏樹「中学校・高等学校における起業家教育の意義」放送大学大学院文化科学研究科教育開発プログラム修士論文,2007年。

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