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中学校社会科 公民的分野
「私たちの生活と経済〜テレビCMから企業の役割について考える〜」
  web.09
(2009.12)
川崎市立京町中学校 吉澤 晋先生

1. はじめに

(1)単元について

中学校社会科では3年生の公民的分野の学習において、経済の学習が行われる。
現行の学習指導要領では経済に関する内容の学習について「経済活動が我々の社会生活にあらゆる面で密接なかかわりをもっていることを踏まえながら、今日の経済活動に関する諸問題に着目させ、自ら考えようとする態度を育てることが大切である」とある。

そこで、特に「私たちの生活と経済」の項目の「社会における企業の役割と社会的責任」において、生徒の生活に身近な教材を用いて企業活動がどのように行われているのか、企業の社会的責任とは何かを考えさせたい。

教材については、企業のテレビCMを用いることにした。公民的な学習のなかで特に経済に関する内容について生徒たちは「難しい」、「自分とはあまり関わりがない」、という先入観をもっていたようである。
そこで、経済の学習全般についてはその都度、できるだけ自分たちの生活に関わるものを教材化することに努めた。

昨今、企業による食品偽装問題や製品の不備による欠陥商品問題、エコに代表される企業の環境問題への取り組みなどが話題になっていて、我々、消費者が企業に求めなければならない社会的責任を身近なこととしてとらえやすい。

そこで、この単元では生徒の生活ではきわめて身近なものであるテレビコマーシャル(CM)を教材に用いた。

特に商品についてのCMではなく、企業自身のCMを用いることによって、「なぜ企業が企業自身をCMするのだろうか」という問題提起を行い、直接的には企業の利益には直接結びつきにくいCMから企業の社会的責任や社会的貢献について気付き、考えさせたい。

さらに、今後私たち消費者が企業に何を求め、企業で将来働くならばどのようなことを考えて生活すればよいのかを考えさせたい。

(2)新学習指導要領に向けて

平成24年から新学習指導要領が全面実施されるにあたり、現場では新学習指導要領の勉強会などが行われている。
この指導案を作成するにあたっても新学習指導要領を念頭に置き、各教科で重点的に育成すべきであるとされている「言語活動」を単元構成のなかに組み入れてみた。

言語活動とは論理的思考能力・コミュニケーション能力にはじまり、感性・情緒もすべて言語活動であると考えられている。これらをどのように授業に組み入れ、充実を図っていくかは全面実施までに様々な検討を要すが、多くの研究会などで実践報告がなされているので新学習指導要領全面実施に向けた研究の一助としたい。

言語活動とは(中教審答申より)

言語活動とは

2.単元の流れ


学習活動と予想される生徒の反応 教師の指導と支援
単元を貫く課題 「企業はどのような役割や責任があるのだろうか」
  前時までの内容
ねらい 市場経済の基本的な考えを理解する
○消費と生産について
○消費者をめぐる問題について
○価格の決まり方について
○貨幣について
○企業について
・市場経済の中で様々な仕組みや経済活動があることを理解させ、民間企業は利益追求が最大の目的であることに気付かせる。
ねらい 企業の社会的責任について考えさせる
◎CMを見てみよう

○企業CMにはどのような役割があるのだろうか?
・イメージアップのためだ
・会社の名前を知ってもらい、商品を買ってもらうためだ
・企業がやっていることを世の中の人に知ってもらうためだ
言語活動
企業が企業自身をCMすることの意味を考える
※教材CMのVTR(3社)
・なぜ直接利益につながらないCMを流すのかを考える
◎企業の今後を考えよう
○今までの学習から企業はどうあるべきだろうか?
・世の中のため、人のために活動をすべきだ
・環境に配慮した商品を作るべきだ
・もうけることだけを考えてはいけないと思う
・企業の社会的責任や企業におけるコンプライアンスについても触れる


◎広告代理店となってCMを作ってみよう
○班ごとにCMを作成する
言語活動
CM作り
・商品だけのCMにならないように工夫させる

◎CMを評価し、クラスの中で優秀CMを決めよう
○各班の発表を見て、評価する
言語活動
CMの発表
 
◎これまでの学習で感じ、考えたことをまとめよう
○文章に表し、それを発表する
・企業は利潤を追求するためにあるが、そこには環境問題の取り組みなども関わることが分かった
・いますぐに目に見えて効果はないことでも、企業にとって見れば重要なことがあるし、世の中のためになると思うと働く人もやりがいを感じると思う。
言語活動
感じ、考えたことをまとめ、発表する
・市場経済の原則も意識しながら書かせるように支援する

3.生徒が感じたこと、考えたこと

・私はCMを見て企業は「見ている人に良いイメージを与えて、自分の企業の名前を覚えてもらおう、知ってもらおうとしている」と感じた。また、地球環境の問題に訴えて、インパクトのあるCMもあった。企業のねらいは環境を守る企業だということを言いたいのだと思った。

・環境問題や地雷撤去などテレビを見ている人たちが興味を持ちやすい内容を使っていると思った。また、そのCMで使われている曲も印象的だった。その曲を聴けば、その企業を思い出すと思う。

・自分がCMを作ってみて、内容より名前を覚えてもらう方を優先した。インパクトのあるCMが作れた。

・企業は儲けるだけのものではないと分かった。消費者の立場としてはやっぱり安心な企業の商品を買いたいと思うので、より消費者から信頼される企業になる努力が必要で、信頼を得るためには社会に対して貢献できるような商品を作ることが大切だと思う。企業にとって一番大切なことは信頼だと思った。

・企業は自分にとって都合の良い情報だけを流し、悪い情報は流さない。それは企業にとって最も重要なことは利益を上げることだからだ。その情報を選択して消費者が商品を買うので企業の情報だけを聞いて買うのは危険だと思う。

・環境に配慮した商品は値段も高くなる。今は政府が援助しているけど、もしその援助もなかったらやっぱり消費者は買わないと思う。そうした商品をいかに安くできるかが企業努力だと思う。

4.終わりに

公民的分野の内容は生徒の実生活にも関わる内容も多く、関心をもって取り組みやすい。
授業の最初には必ず「今日のニュース」を生徒に尋ね、いま話題になっているニュースを2,3挙げてもらっている。

定期試験においても、時事問題を出題し、現在の動きについて興味・関心をもたせるようにしている。特に政治経済の内容については教師のニュース解説によってその意味が理解できたという生徒が多い。

教師もテレビニュースや新聞、文献、インターネットなどを駆使して情報について敏感でなければならず、常にアンテナを広げ、自分の教材になりうる引き出しを1つでも多く持つことが大切であると感じている。

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