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「あたり前」のことを「あたり前」に
−キャリア教育の視点からの見直し−
  web.10
(2010.1)
台東区立御徒町台東中学校長 関本 惠一先生(現 台東区立上野中学校長)

1. はじめに ―キャリア教育の視点―

朝8時15分、「ちょっと勇気がいるけれど 思いきって声を出してみよう あいさつは魔法の力 ラ〜 ラララ〜 ラ〜ララ〜 朝は爐はよう瓩任いさな 道で会ったら爐海鵑砲舛廊瓩曚蕕海鵑覆佞Δ法 ΑΑΑ廚函軽快な音楽が流れ出して本校の一日が始まる。

「第1回東京あいさつフェスタ」で発表されたあいさつソング「あいさつは魔法の力」(作詞 多湖輝、作曲 伯耆田Hiromi)である。

本校では、「平成18・19年度台東区研究協力学校」として「キャリア教育の視点に立った進路指導の推進―自らを知り、目標に向かい努力する生徒の育成―」をテーマに研究を進めている。

平成18年には教育基本法が改訂された。教育の目標(第2条第2項)に「個人の価値を尊重して、その能力を伸ばし、創造性を培い、自主および自律の精神を養うとともに、職業及び生活との関連を重視し、勤労観を重んずる態度を養うこと」とある。進路指導、キャリア教育が教育の目標の一つとして明確に位置付けられている。

キャリア教育は、新しい教育というわけではない。呼び名は違っても小・中・高、どの校種でも取り組まれてきたものであるが、その認識が十分でなかったと言える。

キャリア教育の柱の一つは、平成11年12月の中央教育審議会答申に「『キャリア教育の推進』は、『接続』『移行』にかかる課題と子どもたちの変容を前に、教育は何ができるのか、何をなさねばならぬのかという、教育の在り方についての包括的な提言」とされるように、小中高の連携ではなく、小中高の接続、連続である。

その接続、連続の中で、キャリア教育を進める4つの能力(これは各学校の実態に応じて考えるものとされている)を小学校から引き継ぎ高等学校につなげるように、中学校では教科、道徳、特別活動、総合的な学習の時間をはじめとした教育課程、そして教育課程外での学校生活など全教育活動を通して行うことである。

もちろん、4つの能力さえ育てば万全というのではない。根底にあるのは、「生きる力」を育てることを目的としている進路指導である。そして、進路指導を推進する中核は学級活動であり、また、それを支えるのは学級担任の学級経営であることを忘れてはならない。

学級担任を中心に、すべての教師が「何のために学ぶのか」を見つけ出すための取り組みを推進することこそ、キャリア教育の基本であると私は理解している。

「何のために学ぶのか」。これを中学生に説明するには、「今の学習が、社会人となった時、職業に就いた時どう役立つか」を示すとわかりやすいのではないだろうか。

社会人イコール職業人、学ぶ意義と働く意義を意識づけること、そして生涯にわたって学ぶ意識を育てることが大切である。そのための基盤を中学校で教えていきたい。

2.キャリア教育の視点で今までの教育を見直す

進路指導、キャリア教育は教育活動全体を通して行われるものである。そこで、教育課程にはないところにも留意したい。登校したらすでに教師の教育活動の中にいることを教師自身が意識すべきである。

たとえば登校時。本校の生徒は、「あいさつは魔法の力」を耳にし、口ずさんで学校生活がスタートする。教師も生徒に「おはよう」と声をかける。あいさつをするのは社会人として生活をする基本である。

(1)教科指導の中で
学校生活の大半は教科の授業である。「なぜ学ぶのか」を意識づけさせることを常に念頭に置いて授業を工夫し、展開する。また、授業前後のあいさつ、授業を受ける姿勢、発言、グループ討議など、教師はキャリア教育の視点でとらえながら授業に臨む。特に、教師の姿勢としてチャイム始業は大切なことである。

(2)道徳の授業の中で
望ましい生活習慣や規範意識を身に付けること、自己を見つめ自己の向上を図り、個性を伸ばし充実した生き方を追求することをねらいとして授業を展開している。題材によってはグループ討議を中心に規範意識の向上を図り、コミュニケーション能力を高める授業を行っている。

(3)特別活動の中で
特別活動は、「望ましい集団活動を通して・・・」とあるように、集団の中での話し合いによる活動が中心になる。学級活動と学校行事との組み合わせ、学級活動と生徒会、生徒会と学校行事との組み合わせにより、生徒の手によって運営させていくことができる。

生徒の無力感が蔓延しているような現在、取り組みの成功により自己の存在意義意識を高め、生きる力を育んでいくことは、大事な課題である。

また、学級活動は学級経営の重要な実践の場である。今日の児童・生徒の心の荒れや落ち着かない精神状態からみると、学級経営はかつてなかったほどの重要性をもってきている。

授業の成否が学級経営にかかっているということは以前から言われていることであるが、それは生徒をただ単におとなしくさせ、授業をやりやすくするといったことではない。生きる力を育てることが求められている今、特別活動は教師と生徒が持てる力を出し合って育て上げていくものでなければならない。

(4)総合的な学習の時間の中で
学校の創意工夫が一番生かされる学習の場であり、教科、道徳、特別活動とリンクした計画を立てる。本校では「地域」をテーマに、地元の企業にお願いをし、職場訪問、職業体験を特別活動と組み合わせながら実施している。

(5)教育課程外で
日常的に行われている、時間を守ることの指導や清掃・給食指導は、キャリア教育の視点に立ったものだと理解している。このような活動が社会に出たときどう役立つかを、教師が意識しているかいないかによって、生徒に与える影響も違ってくる。

本校は、従来行われている教育活動をキャリア教育の視点から見直すことで、「あたり前」のことが「あたり前」にできているかを探る取り組みをしている。

そのことが、学校の活力、教師の自覚、生徒の成長を生み出す源と言えるのでは、と考えるからである。
ここで、キャリア教育の視点を盛り込んだ指導案(教科は英語)を紹介することとする。

3.キャリア教育の視点を盛り込んだ指導案

第1学年○組 英語科学習指導案

1 単元名   Let’s Enjoy Shopping

2 単元の指導目標

(1) 積極的に英語を活用しようとしている。(コミュニケーションへの関心・意欲・態度)
(2) 既習の学習内容を活用して、 買い物の場面でのコミュニケーションがとれる。 (表現の能力)
(3) 買い物の場面で必要な英語表現やおつりの数え方を理解している。(理解の能力)
(4) 外国と日本の買い物の仕方の相違点に気付くことができる。(言語や文化についての知識・理解)

3 単元の評価規準

観点 評価規準
コミュニケーションへの関心・意欲・態度 ・役割分担をし、仲間と協力してグループ活動学習ができる。
・これまで学習した英語を活用して、積極的に言語活動に取り組もうとしている。
表現の能力 ・相手の目を見て、適切な声の大きさで会話をしている。
・豊かなコミュニケーションのためには、話し方やアイコンタクトや表情等も大切な要因であることを理解することができる。
理解の能力 ・店員役、お客役という役割毎に、相手の会話内容を正しく聞き取り、理解することができる。
・外国でのおつりの数え方を理解できる。
言語や文化についての知識・理解 ・外国でのお店の店員の接客の仕方やおつりの数え方の違いに気付くことができる。

4 研究主題との関連
キャリア教育の視点

(1)人間関係形成能力の視点
・あいさつは他者とコミュニケーションを構築していくうえでの礎であることを英語の授業からも気付かせる。
・自分の思いや願いを相手に正確に伝えようとする態度を育成する。
・相手の思いや願いを正しく受けとめようとする素直な態度を育成する。
・仲間と協力しながら、課題を解決していくことの大切さと楽しさを知る。

(2)「何のために学ぶか」の視点
・実際に英語を話し、聞くことで一層豊かなコミュニケーションを築くことができる体験をさせ、英語をコミュニケーションの道具としてとらえて意欲的に学ぶ姿勢を身に付ける。
・仲間と協力しながら、課題解決をしていくことの大切さや楽しさを学ぶ場面を設定する。
・日本と外国の文化の違いを知ることで、広い視野とものの考え方を身に付けられるようにする。

5 本時の学習(本時の展開)

  学習内容 学習活動 *指導上の留意点
☆評価
◎キャリア教育上の視点



・既習学習内容の確認をする。 ・ウォームアップ(既習内容の確認)グループごとに教師の発問に答える。
・What day is it today?
・What’s the date today?
・What is your name?
・What is this?
・Are you a student?
・Is this your book?
・Do you have a pet?
・Where do you live?
・Can you make a cake?
◎授業はじめのあいさつができる。〔人間関係形成能力〕
*英語学習の雰囲気作りをする。
*教師の発問に文章で答えるように指示し,適宜支援をする。
◎仲間と協力して、課題を解決しようとする。〔人間関係形成能力〕
☆積極的に言語活動に取り組もうとしている。【関心・意欲・態度】
☆相手に伝わるような声の大きさとスピードで話すことができる。 【表現の能力】


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・学習のめあてをもつ。
・学習のめあてを黒板に提示する。
・買い物場面でのスキットを配布する。
スキットの内容
A: 店員  B: お客さん
A) Hello. May I help you?
B) Yes, please. Do you have potatoes and beef?
A) Yes, we have. Here you are.
B) Thank you. How much is it?
A) It’s 2 dollars.
B) OK. Here you are.
A) Thank you. Here is your change. 3,4,5 dollars.
B) Thank you.
A) You’re welcome. See you.
*教師2名によるデモンストレーションで、場面状況を明らかにする。
*おつりの数え方の違いに気付かせる。
・スキットの音読練習をする。 ・教師のデモンストレーションを見る。
・生徒は教師のあとについて音読する。
・奇数列の生徒は店員役、偶数列の生徒はお客さん役になって音読をする。
・生徒は役割を変えて音読をする。
・生徒は隣の生徒とペアになって音読練習をする。
・生徒は発表をする。
☆大きな声で正しく発音できる。【表現の能力】
*声の大きさ、話すスピード、発音等についてアドバイスをする。
☆友だちの発表をしっかり聞こうとしている。【関心・意欲・態度】
・カレーを作るための材料の準備を理解する。 ・全体で英単語の意味を確認する。
みんなでカレーをつくろう!
材料
・potatoes   ・eggplants
・carrots   ・tomatoes
・onions   ・beef
*材料を黒板に掲示する。
☆大きな声で正しく発音できる。【表現の能力】
・グループ内で役割分担し、互いに英語で表現しながら買い物場面の活動をする。 (1)生徒同士で会話練習
・座席で6〜7人のグループを作り,向き合って座る。
・買い物は,向かい合った人に対してする。
・奇数列の生徒は店員役、偶数列の生徒はお客さん役になる。お客さんの生徒たちは、買うものを相談して分担する。
・お客さん役の生徒は、実際にお金のカードを渡しながら、店員役の生徒に英語で話しかけて買い物活動をする。
・お客さん役の生徒1人に、お金を渡す。
・生徒の役割を変えて活動をする。
*ルールを正しく理解しているか確認する。
*声の大きさ、話すスピード、発音、おつりの数え方等についてアドバイスをしながら各グループを回る。
◎グループでの自分の役割を理解する。〔人間関係形成能力〕
☆コミュニケーションがスムーズに進むように、アイコンタクトや声の大きさや表情に気を付けて会話している。【表現の能力】
☆役割ごとに,相手の会話を正しく理解している。【理解の能力】
☆買い物の場面で必要な英語表現やおつりの数え方を理解している。【理解の能力】
  (2)グループで会話練習
・6〜7人のグループを6つ作る。
・グループ内で役割分担(店員役,お客さん役)をする。
・店員役の生徒はお店の準備をする。 (6店舗用意)
・お客さん役の生徒には、お金のカードを渡す。
・5種類の材料を買い揃えることを目標として、ゲーム感覚で活動してグループ活動をさせる。
・教師の質問に答える。
(教師の発問例)
What did you buy?
*買い物で使うお金と品物は、活動開始前に渡す。
*ルールを正しく理解しているか確認する。
☆積極的に言語活動に取り組もうとしている。【関心・意欲・態度】
◎自分の役割を通して、相手と共に学習しようとする姿勢をもつことができる。〔人間関係形成能力〕
◎目標を達成するための計画を立て、行動に移すことができる。〔意志決定能力〕
*声の大きさ、話すスピード、発音、おつりの数え方等についてアドバイスをしながら各グループを回る。
  ・活動内容を発表する。   ☆友達の発表をしっかり聞こうとする。【関心・意欲・態度】




・振り返りシートに記入する。 ・振り返りシートに自己評価を記入する。 ◎自分の活動を振り返り、情報をまとめることができる。〔情報活用能力〕
◎授業の終わりのあいさつができる。〔人間関係形成能力〕

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