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家庭総合の授業を通して「生きる力」をつけるための取り組み
  web.12
(2010.3)
大阪府立高石高等学校 亀崎 多佳子先生

Ⅰ. はじめに 

本校は、大阪南部に位置する公立の普通科高校である。地域では進学希望する生徒のための中堅校として位置づけられている。生徒たちはクラブ活動や学校行事にも積極的に取り組み、基本的生活習慣や学習習慣もほぼ確立している。

ここまでは以前と変わらない平均的な高校生の姿であるが、精神的自立度が年々低下してきている。この状況は本校に限ったことではない。高校教育の役割として、生徒たちに高校卒業に見合った学力をつけると共に、社会に貢献できる自立した大人を育てることが求められている。

近年はキャリア教育という名のもとに様々な取り組みが行われているが、高校家庭科の教科指導の中でも、生活の主体者としての「生きる力」をつけさせることを意識していかなければならない。ここでは、1年生を対象に「家庭総合」で行った授業内容のうち「生きる力」をつけることを意識したものを紹介する。

Ⅱ. 「生きる力」を意識した取り組み

1.年間授業計画  1年 家庭総合 (2単位)

単元名・項目名 学習内容 「生きる力」の取り組み
Ⅰ.人の一生と家族・家庭 1.ライフステージの特徴と青年期の課題
2.家族・家庭の意義
3.生活時間と職業労働・家事労働
4.家族と法律
5.家庭生活と福祉
a)将来の目標
(進路希望、生き方、自立目標)
b)一行詩(家族へ)
Ⅱ.衣生活の科学と文化 1.被服の構成と製作
2.衣服の文化
3.健康・安全に配慮した衣生活
4.資源・環境に配慮した衣生活
 
Ⅲ.高齢期の生活と福祉 1.高齢者理解と高齢期の生活課題
2.高齢者福祉の現状と課題
3.介護の基本的知識と技術
c)高齢者インタビュー
Ⅳ.暮らしと経済 1.家庭経済のしくみ
2.消費者としての自立
3.資源・環境に配慮した消費行動
d)一人暮らしの経済計画

2.「生きる力」のための取り組み

a)将来の目標(希望の進路、生き方、自立)

【学習のねらい】
入学後直ぐの授業で、将来の進路目標、ライフスタイル、自立について考えさせることで高校生活の目標設定をさせる。

「ライフステージ」の学習の中で、青年期にある高校生は自立に向けての活動の時期であることを理解させ、将来の進路希望等を考えさせる。ほとんどの生徒の意識は、大学に入学するという漠然としたものである。高校生活の中で将来の進路希望を具体化していくことの必要性を理解させることで、進路実現に向けての積極的取り組みが期待できる。

また、自立度(生活的自立、精神的自立、経済的自立、社会的自立、性的自立)については現在の自立度と将来の達成目標を考えさせる。青年期にある自らが成長し、大人として自立することに向かっていることを意識させることで、意欲的に自らの進路を切り開こうという意識を持たせ、高校生活をより前向きに取り組ませることができる。

b)一行詩「家族へ」

【学習のねらい】
家族に対する思いを一行詩で表現することを通して、家族関係について考えさせる。

「父よ!・・・」「母よ!・・・」と一行詩で家族に対する思いを表現させる。また、他の生徒の詩も読ませることで、家族間での様々な思いに気づいたり、家族に対する自分の態度を反省することにつながったりする。詩の内容は、家族に対する批判や注文が多いが、家族に対する思いやりや感謝の気持ちを表現するものもある。

近年は、家族の小規模化や単純化が家族関係を築くことを難しくしているといわれている。身近な仲間が作った「一行詩」に込められた家族への思いを理解することで、家族関係について多角的に考えることのできる能力を身につけ、円滑な家族関係を築けるようになることが期待できる。

≪生徒の作った一行詩の一例≫
「お母さん! わかってるから何回も同じこと言わんといて。」
「お父さん! もっと家事を手伝ってください。」
「お母さん!いつもさからってばかりですみません。これからは言うことききます。」
「母よ! あんまり無理して働くな。また、倒れるぞ。」
「お父さん! 僕が身長抜かしてしまった時、なんか寂しかった。」
「お父さん、お母さん、お兄ちゃん、げん、よし、最高の家族やな。」
「ヒナ! はやくしゃべれるようになれよー。」
「弟よ! もっと成長しろよ。」
「兄よ!姉よ!起きもしないのにケータイのアラームかけるな!!  こちらは今日は休日じゃ!」

c)高齢者インタビュー

【学習のねらい】
祖父母などの身近な高齢者に、人生でうれしかったこと、大変だったことなどをインタビューすることを通して、高齢者について理解すると共に自分自身の人生についても考えさせる。

夏休みの課題として、自分自身の祖父母などの身近な高齢者にインタビューをさせる。

インタビューの内容
・これまでの人生でうれしかったこと。 ・これまでの人生で大変だったこと。  
・健康維持のために心がけていること。 ・現在の生きがい。 ・高校生に伝えたいこと。

このインタビューで初めて祖父母に向き合って話をしたという生徒も少なくなく、今まで持っていた祖父母に対するイメージが話をすることで変わったという生徒もいる。個々の生徒がインタビューしてきた内容は、プリントにまとめて生徒全体にフィードバックしている。高齢者の方々へのインタビューを通して、生徒たちが高齢者を理解すると共に、高齢者の方々の人生に触れ、そのことが自分自身の人生についても考えることにつながることを期待したい。

生徒の祖父母の世代は戦争を経験し、戦後の貧困に苦しめられた世代であり、「食べるものがなかった。」「学校に行きたくても行けなかった。」などという話を祖父母から聞いた生徒も多く、現在の生活が豊かで恵まれていること、勉強ができるありがたさを感じるよい機会にもなっている。

うれしかったこととしては、「孫や子どもができたこと。」という答えが多く、自分自身が祖父母や父母にとって大きな存在であることを知る。また、「高校生に伝えたいこと」の中に祖父母の自分自身への将来への期待がこめられていることに気づくことができる。人生の大先輩である高齢者の方々の言葉が一人ひとりに人生を切り拓いていく力を与えてくれると期待している。

≪ 高校生に伝えたいこと。−高齢者インタビューから− ≫
・ 今しかできないことがたくさんあるから、それをしっかり頑張ってもらいたい。
・社会のレールや親の期待に乗って日常生活を送るのではなく、自分は何をやりたいのかをしっかりみつめつつ行動をおこしてほしい。
・人生は一度きりとよく言います。何をしてもいいと思いますが、自分で責任をもてる人になれるように、それには先生、両親、大人の意見を素直に聞ける人になってほしい。
・自分の行いに責任を持つこと。人に優しく素直に育つこと、人の話をよく聞くこと、良い友達を作ること。
・今の時代に生きていることが幸せだということ。過去の過ちを二度と繰り返さないこと。
・変化する世界や社会の動きに関心をもって、それに対応する生き方をすること。
・すべてのもの(人)に愛と慈しみの心を持って接すること。

d)一人暮らしの経済計画

【学習のねらい】
社会人1年生の家計の収支を通して、生活に必要な管理能力について理解する。
一人暮らし世帯の家計の収支を考えることを通して、自立のために必要な能力を養う。
給与明細の読み方や、1ヵ月の食費、一人暮らしを始める際にかかる費用や手続きなどできるだけ具体的に考えられるような教材作りを心がけた。

参考資料  教材プリント「一人暮らしの経済計画」

Ⅲ.今後にむけて

高校で何を身につけさせるべきなのか。自分の人生を自分のものとして考えられているのだろうか。全てに受身的な生徒たちを見ていると彼らの将来に不安を感じずにはいられない。「一行詩」は前任校から、「高齢者インタビュー」は現任校に来てすぐに取り組み始めた。

身近なところから発信されるものには生徒たちも学ぶことがたくさん詰まっている気がする。彼らが自分自身の人生を送っていく上での何かプラスになってくれればと思う。
今後も「生きる力」をつける授業での取り組みを考えていきたい。

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