文字サイズ変更
  • フォントサイズ大
  • フォントサイズ中
  • フォントサイズ小
生命保険文化センタートップページ>学校教育活動>教育の現場から>教育の現場からINDEX>web.02
コンピュータシミュレーションを用いたキャリア教育における職業観の形成指導
  web.02
(2010.5)
前橋市立前橋高等学校 上原 功 先生

1.目的

高校生に対する進路指導において、キャリア教育の取り組みとしてインターンシップの体験による職業意識の形成がさまざまな場面で検討されている。本校においてはインターンシップの効果を認識しつつも、その導入については今後対処すべき課題がある。

今回、インターンシップを体験することと同様の効果を上げることができる教材を活用することで、生徒の職業観の形成を図る取り組みを実施する。

教材は、コンビニのオーナー店長の立場で経営を成功させることを目標とし、その過程において、意思決定を行い、結果をデータ表示し、対応を考察させることなどを通して、課題解決能力の形成を目指すものである。それぞれの場面における取組を体験していきながら、関連する職業に対する興味や関心を持っているかどうかを発見させることで職業観の形成を図ることを目的とする。

2.日程

平成21年6月16日(火)  5〜6限(13:30〜15:20)

3.対象

1学年全員(6クラス)

4.指導者

篠田 健一郎 氏
(東京都立富士森高校教諭、全国公民科社会科教育研究会事務局長)

5.会場

前橋市立前橋高等学校 体育館メインアリーナ
会場

6.内容

「やってみ店長」(株式会社アントルビーンズ社)を使用
コンピュータシミュレーションによる職業観の形成

7.方法

各クラスより1グループを選出し、クラス代表の6グループを対象に授業を実施する。

◎代表グループ
・各グループごとに指導者の指示を聞きながらワークシートに沿って作業を行い、結果をコンピュータに入力する。
・生徒が使用するコンピュータのうち1台をプロジェクターに接続し、取り組み状況をスクリーンに映しだしながら授業を展開する。

◎代表以外のグループ
・各クラスともに5グループがワークシートによる授業をうける。
・代表グループの授業を見ながら、同じ作業を実践し、自己検証を行う。

8.授業展開

コンビニのオーナー店長の立場で経営を成功させることを目標とし、その過程において以下の5つの場面を通して意思決定を求め、結果をデータ表示し、対応を考察させることで、課題解決能力の形成を目指すものである。それぞれの場面における取組を体験していきながら、関連する職業に興味や関心を持っているかどうかを発見させることで職業観の形成を図る。

次にあげる各シーンの展開の中で、関連する職業分野を提示し、生徒各自の興味の度合いと関連職業をワークシートに記入させる。

シーン1:出店場所の決定
・出店候補地からデータに基づき出店場所を決定する。
・都市計画、街作り、不動産業、住宅リサーチなどの職業

シーン2:資金調達
・自己資金と他人の資本との組合せで出店に必要な資金を調達する。
・自己資金だけでは出店がかなわないので他からどの程度借り入れるかを決定する。
・金融関係、株式関係、ファイナンシャルプランナーなどの職業

シーン3:パートの雇用
・雇わないと店舗経営が成り立たないため人数と時給を決定する。
・売り上げから人件費をひいた利益から、アルバイトの雇用条件について見直す 。
・経営コンサルタント、雇用情報提供の仕事など

シーン4:店内配置
・店舗内の品物配置について決定させる。
・どの場所に何をおくかで売り上げが違ってくる。
・店舗レイアウト、マーケティングリサーチ、心理学など

シーン5:商品配置
・5段設定の棚に指定商品を陳列する。
・商品を陳列する位置で売り上げが違ってくる。
・デザイン、食品関連産業、レイアウト、心理学など

<営業開始>
・シーン1〜5を経験させた後、開店して営業成績を提示する。

*経営のノウハウを知らないと赤字になる。
赤字の原因を明らかにさせるとともに、改善策を考えさせる。

*1日1つずつ、売り上げアップの集客アイテムを増やせるため、導入を検討させる。
・宅配便などの導入・・・経営への興味
・利用客層から利益を上げることができるアイテムの導入・・・情報の分析・活用

*パート条件の変更
・時給の改善に注目・・・労働にかかわる仕事への興味
・パートに対する教育の導入・・・教育への興味
     パートの質を上げると売り上げがアップし、万引きなどの被害が減少する。
     パートを生徒にたとえ、普段と異なった立場から自己を観察させる指導が可能。
・宅配便などの導入・・・経営への興味

営業1日目までを指導者の指示で作業を行わせる。
*廃棄ロスの問題・・・経営への興味、環境への興味

営業2日目以降は各グループごとに1週間程度経営させる
*曜日による売り上げの変化・・・データ分析の分野への興味

*1週間経営させたところでコンピュータ操作を終了させ、結果を公表させる。

9.評価  〜期待される効果について〜

シミュレーション教材の活用による職業観形成指導は、コンピュータソフトを用いて、コンビニエンスストアの出店候補地のリサーチから営業活動にかかわる、さまざまな仕事を擬似的に体験する取り組みにより、インターンシップを体験することと同様の効果を得ることをねらいとしている。

今回の取り組みでは、グループによる活動を行うため、「人間関係形成能力」を育成することができる。使用するコンピュータソフトは実際のコンビニエンスストアの経営によるデータであるため「情報活用能力」が求められ、自らの選択と決定が経営状況に反映されることから「意思決定能力」を形成することや、コンビニエンスストアの経営にかかわるさまざまな職種や各種職業分野との関係についても考察させることができる。

また、指導者の働きかけにより、営業にかかわる職業実務指導も可能である。そのため、インターンシップによる経験と同様の体験を通して、生徒は職業観を形成しながら自らの将来を考える「将来設計能力」の領域についても学ぶことができる。

この取り組みの中で、他者とのコミュニケーションや情報交換の必要性、自らに必要な情報や知識の収集と選択、そして、入手したデータを関連させて必要な情報をまとめ上げる方法を学んでいることに気付かせ、その方法を他のキャリア教育にかかわる体験活動に応用させることができることを確認させる。

指導者からの働きかけを待つ状況から、自ら取りかかる方法を身につけさせることで、目的や課題を持って各種取組に対応することができる能力を身につけることを意図している。

* 生徒の反応で顕著なもの

・自分の進路を考えるとき、興味や関心から捉えることができる対象が従来の進路関係の資料とは異なるところにあることに大きな関心を示した。

・自分が関心を示した分野とその分野につながる仕事内容が、現時点での自分の希望と異なっていても、そのつながりを「全く違う」と否定する生徒は少なく、むしろ、新たな発見があったという反応を見ることができた。

・教材にゲーム性があるため、ゲーム展開を先行し、指導する場面よりも先に進んでしまう生徒がいた。この場合、意図したキャリア教育の効果を見いだすことは困難だった。

*事後指導
ホームルーム担任より、上記期待される効果の内容について生徒への指導を行い、今回の取り組みを通して課題解決の手法を学んでいることも意識させる。

*今後のことについて
今回の取り組みを通して、次年度以降、ホームルーム担任によるキャリア教育の指導として実施したい。

⇒指導者用ワークシート(PDF)

教育の現場からINDEXへ戻る