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家庭科で養う「家計管理能力と消費者としての自立」
〜家計シミュレーションをとおして〜
  web.04
(2010.7)
大阪府立茨木西高等学校 西田 恵理 先生

1.はじめに

本校は、大阪の北部に位置する普通科高校である。平成21年度には、大阪府が実施した「心の再生府民運動」において「茨西PRIDE」を掲げ、地域に根ざしたこころの再生活動に積極的に取り組み、ボランティア活動などで顕著な成果をあげ、最優秀賞の表彰を受けた。生徒たちは、校訓の「和」を合言葉に、様々な活動に積極的に取り組む姿勢を持っている。

高校生の発達課題として、生活における経済の計画と消費者問題や消費者の権利と責任などについて理解し、現代の消費生活の課題について認識し、消費者としての適切な意思決定に基づいて、責任を持って行動をすることができるようにしならなければならない。

家庭科では、様々な体験参加型実習ワークを取り入れることで、生徒が主体的、意欲的に学び、様々な課題を協力して解決する取り組みを実施し、気づきを共有することで更に理解が深まる授業を実践している。ここでは、「家計管理と消費者の自立」の力を身につけるオリジナルのグループワーク授業『茨西「和」家計シミュレーション』を紹介する。

2.活用にあたって

家庭経済分野において、家計管理能力を育成するために、まとめのワークとして実施すると効果が高い。

3.授業計画案

  • 対象学年・・・・・1年生
  • 対象科目・・・・・家庭総合
  • 使用教科書・・・第一学習社「家庭総合」

<構成>

単元名「消費を考える」〜私たちの暮らしと経済〜
(1)家庭の経済の仕組み・・・1時間
(2)家庭の収入と支出 ・・・・・1時間
(3)家庭経済の設計・・・・・・・2時間(本時1/2)

<ねらい>

(1) 家計管理能力の必要性を理解し、消費者として自立することを育成する。
(2) 家計の構造、家庭の生活を支える収入と支出の運営など、短期及び長期的な視点に立った家計管理能力を育成する。

<展開の特色>

(1) 体験参加型グループ実習ワークとして模擬家族体験型家計シミュレーションを実施する。
(2) 模擬家族の構成者の名前や金融商品に学校名を利用することで生徒が身近に感じる内容である。
(3) 家族状況を模擬家族で設定することにより、積極的に取り組むことができる。
(4) 模擬家族会議をとおして商品購入の意思決定の過程を体験し、家計簿を実際に記帳することにより、家計における収入と支出をシミュレーション体験し、家計管理能力の重要性を理解する。
(5) 商品購入の支払い方法をクレジットカード、現金などから選択し、キャッシュレス時代の家計管理についても理解する。
(6) 預金、株式、債券、投資信託、生命保険、損害保険などの商品を選択するワークを実施し、短期、長期的に家計管理することの必要性を認識する。
(7) 本校の生徒は、自転車通学も多く、事故による怪我などのリスク対策についても考えさせている。
(8) 生徒自身が、様々な疑問や課題意識を持ち、家計管理を身近なものとして捉えることができる内容となっている。

<本時の目標>

(1)家庭の収入と支出をとおして家計の構造を理解する。
(2)家計簿の仕組みと収支のバランスの重要性を理解し、家計管理能力を身につける。
(3)家族で協力して商品購入の意思決定の過程を体験し、課題解決する必要性を理解する。
(4)預金、保険、クレジットカード、ローンなどを理解し、自己責任について学ぶ。

<本時の展開>

  学習活動 教師の支援・指導上の留意点 備考
(  )はPDFファイル
導入
  • 家族模擬体験による1ヶ月の家計シミュレーションを実施することを知る。
  • 指示書を利用し、ワークの方法を知る。
  • 家計管理能力の必要性を認識させる。
  • 指示書を分かり易く、しっかりと説明する。
指示書)配布
展開 ※ワークシート1を実施する。
4人〜5人のグループで実施する。
(1)家族の役割分担を決める。
(2)今月の家庭状況を設定する。
(3)それぞれが希望や意見を述べる。
(4)家族会議で必要度を決定する。
(5)家族会議の満足度(%)を記入する。

  • ワークがスムーズに進行するように時間を指定する。
  • 家計を管理のための家族会議の重要性をワークより理解させる。
  • 各グループの状況を適宜サポートする。
ワークシート1)配布
家庭状況カード)配布
※ワークシート2を実施する。
  • 生徒の疑問に答えながら、家庭の収入と支出について理解させる。
  • 商品支払い方法の選択することにより、キャッシュレス時代の家計管理についても理解させる。
  • 預金、保険などの金融商品について、助言し、理解させる。
ワークシート2)配布
支出項目リスト)配布
商品カードa
商品カードb)配布
(6) 支出項目リストによる資金計画を実施する。
  • 1ヶ月の収入と支出について家族会議で決定 し、家計簿に記入する。
  • 実施の条件は、黒字を23万円以上にし、残高を0円にする。
  • 黒字は、具体的な金融商品等を選択する。
※ワークシート3を実施する。
(7)金融商品の選んだ理由を記入する。
(8)家計診断をする。
  • 可処分所得、エンゲル係数、エンジェル係数、消費性向、貯蓄率
  ワークシート3)配布
(9) 生徒それぞれが家計診断の考察を実施する。
  • 家計診断により今回のワークの反省評価を実施させる。
まとめ (10) 取り組みの他者評価と自己評価を実施する。
  • 生徒に振り返りをしっかりと実施させ、家計管理能力を身につける必要性を再認識させる。
ワークシートを回収する。
(11) 本日のワークの考察、感想を実施し、学んだことを振り返る。

参考

「勤労者世帯平均の1カ月の収入と支出」(総務省 http://www.stat.go.jp/data/kakei/family/index.htm

配布資料について

指示書 本日の実施手順が記入されたプリント1枚。
ワークシート1 (1)〜(5)までが、表で構成され、順番に記入できるプリント1枚。
ワークシート2 (6)の家計簿が記入できるプリント1枚
収支項目リスト
  • 収入・支出が項目別に、選択できるように構成されたプリント1枚。
  • 実収入は、経常収入は勤労者世帯平均の1カ月の金額を参考にしている。
  • 特別収入は、賞与20万円とし、金融商品選択にあてる。
  • 実収入以外の収入は、テレビ購入費として預金を引き出すか否か選択させる。
  • 消費支出は、住居、食料、教育、光熱・水道、通信・交通、保健医療については、贅沢型、標準型、節約型の3パターンから金額を選択するようになっている。
  • その他の費目については、家庭の状況に応じて購入する商品などを選択する。
  • 自分達で、商品や金額を設定しても良い。[支出項目リストの商品例を使用]
  • 実支出以外の支出は、金融機関(銀行・証券会社・生命保険会社・損害保険会社)による金融商品(預貯金・株・投資信託・債券・生命保険・損害保険)。[商品カードb使用]
商品カード a.性能、デザイン、環境、金額より商品選択するようになっているプリント1枚。
(地上デジタル放送対応型テレビ)
b.預貯金・株・投資信託・生命保険・損害保険を選択するプリント1枚。
(金融機関、利率、商品内容を明記。商品名例「茨木西銀行「和」定期預金」)
ワークシート3 (7)〜(11)までの金融商品等の選択理由、家計診断、家計診断の考察、他者評価、自己評価、感想・考察を記入するプリント1枚。
家計診断の考察と感想については、個人がそれぞれ記入する。

※指示書、収支項目リスト、商品カードa・bは、ラーミネート加工し、繰り返し利用可能なものにする。
※ワークシート1〜3は、グループで各1枚配布。(A3に拡大して使用)

<評価の観点>

  • 家計シミュレーションに積極的に参加、取り組むことができたか。(関心・意欲・態度)
  • 家計簿をしっかりと記帳し、家計管理能力を身につけることができたか。(思考・判断)
  • 家計診断を実施し、消費者としての自立の重要性を理解することができたか。(知識・理解)

4.生徒の反応・感想(昨年度、前任高校にて実施)

  • 生徒たちは、自分達が家族の設定ということで大変意欲的に参加し、グループで協力して主体的に課題に積極的に取り組むことができている。
  • <生徒の感想>
  • 「とても分かり易く、楽しく学べる授業でした。これからもこういった授業をしてほしいです。」
  • 「家計簿の意味やつけ方がわかるようになりました。」
  • 「生活をやりくりすることは大変だということが分かりました。父や母に感謝しようと思いました。」
  • 「何を買うかで、家族会議でもめました。でも、最後には、みんなで納得してすることができました。家族で話し合ったり、協力し合うことは大切だと気づきました。」
  • 「金融商品とか保険を選ぶのは初めてで良く分からなかったのですが、少し分かることができて良かったです。」
  • 「私も大人になったら家計簿をつけようと思いました。」
  • 「可処分所得、クレジット、ローン、保険、エンジェル係数など難しいことも多かったが色々と知らないといけないことがあることがわかった。興味が湧いてきたので、これから勉強して生活に役立てたい。」
  • など、前向きに受け止めている生徒が多くいた。

5.さいごに

今回、体験参加型グループ実習ワークとして、「家計管理と消費者の自立」の力を身につけることができる模擬家族体験型家計シミュレーションを紹介した。

従前より、家計シミュレーションを実施しているが、短時間に分かりやすく、家庭の経済生活をどのように運営していけばよいかを、高校生の発達課題のひとつである「消費者として責任のある意思決定や知識の確立などの自立」の視点を取り入れて、総合的にかつ効果的に詳しく学ぶことができるように改良を重ねた。

このワークは、グループ協議記入型ワークシートとラーミネートした指示書、支出項目リスト、支払いカード、商品選択カード、家計簿診断シートを利用し、グループでワークを進めることで、高校生の誰もが、家族会議の必要性、家計簿の仕組みや商品購入の責任ある選択と意思決定の過程、クレジットカードなどの支払い方法の選択、金融商品の意味や家族の危機への対策など、家庭経済生活にかかわって学ぶべき事柄を主体的に、理解を深めることができる。

グループワーク中には、生徒から多くの疑問が出るが、互いに説明しあうなど理解し合い相乗効果も生まれる。
生徒は、この授業により、家庭経済生活に関する興味関心や課題意識が高まった。これを次の授業に上手くつなげ、進めていくことで更に学習効果をあげことができる。 これからも高校生が主体的に積極的に取り組む家庭科ならではの授業を実践し、自立へのサポートをしていきたい。

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