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生命保険文化センタートップページ>学校教育活動>教育の現場から>教育の現場からINDEX>web.05
「家計の仕組み」を学ぶことで、自分の今と未来を考えよう。
〜家庭科教材キット-新しい「家庭経済」授業プラン-の活用〜
  web.05
(2010.8)
東京都立小松川高等学校 家庭科 林田 加代子 先生

1.はじめに

本校は、学習と部活動・学校行事の両立という、いわゆる文武両道をモットーとした都立高校である。1年次より将来の夢や可能性を探求、人生の目標を設定し、その実現を目指す進路学習体系「ウィンズプロジェクト」を展開。平成19年度から東京都の進学指導推進校に指定されている。

家庭科の授業は週に2時間、1年次に行っている。衣食住について学ぶことはもちろん、消費者として生活をどう切り開いていくかということを学ぶ。例えば大量生産・大量消費の時代に、消費者として食を素材で買い素材でつくることの大切さを知った上で、市販品や加工品には何が入っているのかという情報を理解して、取捨選択できる能力を養うことなどを念頭において授業を進めている。

取捨選択に正解はなく、取捨選択するにしても使えるお金には限りがある。自分にあった選択をするためには、調べて知り、気づくことが大切で、知識だけではなく「考える力」をつけるよう指導している。

  東京都立小松川高等学校東京都立小松川高等学校  

2.本時

単元名「消費生活を生きる」(新家庭基礎21、生活学Navi−資料+成分表−)
・ 実施日:平成22年6月 ・ 対象:第1学年全組 ・ 場所:ホームルーム教室

<本時の実施にあたって>

「家計の仕組み」を教えるにあたっては、具体的に給与明細を見せながら、非消費支出(税金・社会保険料など)を説明し、収入のすべてを自由に使えないということや、何のために非消費支出があるのかをまず考えさせることとしている。

また、ワークシートを使って実際に家計収支の予算を立てさせるなど、可処分所得の範囲内で生活費をまかなわなければならないことを理解させている。

クレジットやローンなどお金の使い方を教えることも大事だが、まずベースとして家計の全体的な収支を理解し、消費者信用を利用する理由を知ることが大切と考えている。

<本時のねらい>

(1) 自立した経済生活のためのお金の管理を考えさせる。
大学生活で一人暮らしをしている教育実習生に、収入と支出、お金のやりくりなど自分の体験談を交えながら授業をしてもらった。
(2) 『理想のライフコース(4月実施)』を考えた上で、本時で「家計の仕組み」を学び、夏休みの課題『ホームプロジェクト〜世話をされる側から世話をする側へ〜』のテーマ設定へとつなげさせる。

『理想のライフコース』を考える(1年生・4月実施)・・・
家族の生活時間モデルと、現代日本の社会情勢(教科書参照)を参考に、将来の自分はどのような生活をしているのかを想像し、その感想を書く。

本時「家計の仕組み」を学ぶ
夏休みの課題『ホームプロジェクト〜世話をされる側から世話をする側へ〜』のテーマ設定・・・
高校生の今は世話をされる存在であるが、数年後には世話をする存在になっていると思われる自分は、今家族の中で何をしてあげられるのか。本時で学んだ「家計の仕組み」をもとに、『ホームプロジェクト〜世話される側から世話をする側へ〜』のテーマを考える。

<本時の展開>

  • 家庭科教材キット〜新しい「家庭経済」授業プラン〜【基礎編】スライド活用
  • ワークシートを使用→スライドを見るだけではなく、書くことで理解させる
  • スライドショーには電子黒板(電子ペン)を活用

※ 【新しい「家庭経済」授業プラン】は生命保険文化センターが作成したパワーポイント教材です。
当サイトから自由にダウンロードできますので、ぜひご活用ください(生命保険文化センター)。
⇒パワーポイント教材【新しい「家庭経済」授業プラン】はこちらから

   
時間 学習活動 指導上の留意点・配慮事項 ワークシート(PDF)
使用スライド
導入
10分
  【未来の自分】を想像しよう  
  • 本時の目標を確認する。
  • 4月当初に自分のライフコースを考えたことを思い出し、3ヶ月後の意識の変化を考えさせる。
 
  • 将来の自分を想像し、生活設計の重要性に気付かせる。
  • 30年後の『生育家族』の姿を想像させ、自立の必要性を認識させる。
スライド2-4
展開
80分
  【家計の仕組み】を理解しよう  
  • 給与明細を読む。
  • プリントの給与明細を読み、実収入、非消費支出、可処分所得を理解(再確認)する。(ワークシート1)
ワークシート1(PDF)
スライド10
  • リスクに備えるために、どのようなシステムがあるかを知る。
  • 非消費支出と公的保障の関係を理解し、リスクへ備えるために社会保険のシステムがあること、また、私的保障として金融商品の利用を自己決定していかなければならないことを知らせる。(ワークシート1)
→非消費支出は支給額の約何%かを記入させる
→スライドを見ながら、リスクに備えるためにはどんな保障があるのか記入させる
スライド18-22
  • 保険のシステムを確認する。
  • 身近な例で保険に関する理解を進めさせる。
スライド23-29
  • 家計の構成を確認する。
  • 実収入、実収入外収入、実支出、実支出外支出の意味を正しく理解させると共に、財布・銀行口座・負債・動産・不動産と総合的に資産を考えさせる。
  • 各項目の説明を行い、収支項目分類を理解させる。 (ワークシート1)
→スライドを見ながら、家計の構成を記入させる
スライド9
  【休憩】  
  • 予算計画を立てる。
  • 一人暮らし(学生、社会人25歳)の収支を考え、今の生活と比較させる。
  • 生活上必要な諸経費の想定は難しいため、参考資料を提示する。
  • 各項目を数千円、数万円単位で計画させ、社会人の場合は必ず預貯金、傷害保険掛金などの設定をさせる。(ワークシート2)
→金額のヒントを与えながら、予算計画を記入させる
  • 支出が増えるほど、収入が足りなくなることを理解させる。
ワークシート2(PDF)
スライド32
  • ライフステージと経済課題を確認する。
  • ライフコースの中で、多大な金銭が支出(独立・結婚・出産・住宅購入など)される時期があることを認識し、その準備が必要であることを確認する。また、年代によって支出(住宅費・教育費など)の特徴が変化することを理解する。
スライド17、33
まとめ
10分
  • 現代の家計の特徴をまとめ、家計管理の実際を理解する。
  • 現在、家計全体の把握、支出の実感が希薄化していることにより、どのような問題が生じているかを理解させる。自動振り込みなどのキャッシュレス化や、クレジットなどによる支払いの長期化など、お金の流れがとらえにくく複雑になっていることを説明。
また、将来は短期的な経済計画と共に、ライフコースを考慮した長期的な経済計画の必要性があることを知らせる。財布だけでやりくりしている高校生の家計と、将来の家計は違うことを理解させる。
スライド34-36
  【自分にかかる費用】を理解し、考えてみよう  
  • まとめとしての宿題。
  • 本時の家計シミュレーションに関する感想を書かせる。さらにワーク『大学卒業までの教育費』を計算し、現代日本の支出のうち教育費が増加していることを理解させる。(ワークシート3)
    →ワークシート2で作成した予算計画の感想を記入させる
    →自分自身の教育費を計算して、その費用に対する感想を記入させる
ワークシート3(PDF)
スライド14-16

<生徒の感想(ワークシート3)より>

経済計画において <『予算計画を立てる。』実施後のまとめ>
  • 今回の授業を通して、両親はこんなにも大変な思いをしていたんだなぁと感じた。
    自分だったら、買い物をし過ぎて残金が不足し赤字になってしまいそうだ。その様なことにならないように節約をこつこつ続けていかねばならない。
  • 好きなだけお金を使うと収入をはるかにオーバーすることが分かった。遊びなども少しは減らさないとだめだと分かり、こう考えると一人暮らしは大変だと思う。
  • しっかりと計算して予算を立てても、ぎりぎりの生活になってしまった。うっかり娯楽費などに使ってしまうと、次の日に生活が出来なくなるということがありえそうで、将来自分が生きていけるか心配になった。
  • 私は今、お小遣いをもらって、その中で自分が使いたいように使えるけれど、それを使い切っても生活に困ることは無い。でも、予算計画はそんな気楽なものではないと改めて思った。今は計画を立てるだけだからいいが、実際はもっと問題があるだろうし、何より自分が働かなければ収入が無いのだから大変だ。
  • 収入はある程度あったとしても、実支出でだいぶ減るのだなと思った。これでやりくりをするのは大変だ。無駄にお金は使えない。万が一のときのために貯金をしておくことが大切。
  • こうやって、将来のことを具体的に考えるのは、結構楽しかった。将来、自分でお金を管理するようになったら、しっかり管理できるか不安だけど、頑張ってお金をいっぱいためようと思った。なんでも計画的にしておくと後で困らないから、お金に関することは特に計画的にしたいと思った。
  • 出来る限り節約したつもりでも、余ったお金が少なすぎてとても難しかった。この収入に見合った生活をしようとすると、必然的に衣服代や教養・娯楽費を削減しなければならなく、あまり自由でない生活だと思った。
  • 自分だけで生活を立てていくのは大変なことだと思った。そして、早く独立したいと思った。独立したら大変なことがいっぱいあるけれど、そういうことを乗り越えてこそ、人は強くなれると思う。私は親に楽な生活をしてほしいので、仕送りが出来るようになったら毎月したい。

教育費計算において <ワーク『大学卒業までの教育費』実施後の感想より>
  • ずっと国公立に進んだとしても一千万以上かかってしまうなんて考えていなかったのでとても驚いた。
  • かなりお金がかかると思った。兄弟が多いと、この金額×2、×3となるから大変だと思った。私立と公立の違いが結構大きい。
  • 教育費が予想以上に高かったので驚いた。公立校はあまり教育費がかからないと思っていたからだ。両親がこの大金を払ってくれているおかげで、学校に行くことが出来ている。両親に感謝し、また学校生活をもっと楽しみ、もっと勉強しようと思った。
  • 教育費だけでも子ども一人に対して約1500万円もかかることに驚いた。さらに食費、服飾費など、子どもを育てるだけでも多くのお金が必要だろう。人が一人で生きていくことにもお金がかかり大変なのに、子を持つ親は苦労しているんだなと感じた。今まで以上にお金に対して「重要さ・大切さ」を感じ、無駄使いは避けなければならないと思う。

3.さいごに

  • 将来の予算計画を立てたことで、自由に浪費できないお金があることを生徒は実感し、経済計画の必要性を理解したようである。また、自分の教育費の計算により、両親への感謝の気持ちや、子育て=経済的自立の必須という図式が生徒たちの頭の中に宿ったようで、今回の授業の効果を感じる。
  • 高校生のうちに、収入には自由にならないお金(税金など非消費支出)があることをある程度知っておくことは大切である。このことが生徒のなかで、税金のムダ使いはしてほしくない、年金問題もきちんと考えてほしい、といった政治への関心につながればと思う。
  • パワーポイントのスライド(映像)を活用した授業は、TV世代、テロップ世代の生徒たちには最適で、最後まで興味を持ってみてくれた。
  • 「世話をされる側」である生徒達は、近い未来「世話をする側」になる。その時に、何ができるようになっていればよいのか。自立した時、限られた金銭を有効活用できるように、生活力を上げるための課題として「ホームプロジェクト」を設定している。この授業が、その意識付けになればよいと思う。

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