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私たちのライフデザイン(人間の発達を考える)
―家庭科で学ぶ仕事インタビュ―
  web.07
(2010.10)
大阪府立茨木高等学校 入交 享子(いりまじりきょうこ) 先生

1.はじめに

茨木市は淀川の北の、大阪府北部に位置し、大阪・京都へのアクセスも便利で緑多い衛星都市として、また学園都市として活気溢れる地域である。本校は、その茨木市の中心市街地にある文武両道の伝統校である。

本校の生徒は学力も高く知識入力に長けているが、文字・言語出力にはまだまだ学習が必要である。現代の若者全般に言えることであるが、「本当にわかる」体験が不足している「経験不足症候群」の生徒たちでもある。
家庭科の授業の中で、自然な形でそれを補うことができないだろうか。この授業は、人生80年、出生から死に至るまでの生涯教育としての人間の一生・発達を身近にとらえ、「よりよく生きる」ための体験学習とする。

「仕事インタビュー」は、まず、生徒が身内でインタビューをしてもいい人の了解をとり、その広告を作成し、壁に掲示する。掲示された広告をみてインタビューする相手を決めるが、できるだけ初めて出会う人とする。
もちろん、家族や知人の紹介でインタビュー相手を決めてもよい。

2.活用にあたって

「仕事インタビュー」は本校が家庭一般4単位で学習していたときのものである。家庭総合で実施するだけでなく、キャリア教育として、進路HRや総合学習において実施可能である。資料のみ新しいものに差し替えれば学習の進め方を参考にしていただきたい。また、課題提出もICTを活用するとよい。

3.家庭科が大切に考えていること

・何を学ぶか

<昔の教科書から抜粋>
人間はひとりでは生きられない。
家族がいて、地域の人びとがいて、友がいる。
高齢者がいて、子どももいる。
人間はそこで、どのような暮らしぶりをしているのだろうか。
どのような家族関係や社会をつくれば、 もっとよりよく生きられるのだろう。

本校の黒板横に掲示してあるもの

・どう学ぶか

学び方

学び方

『生きること』と家族

4.授業の流れ

(1)授業形態

毎時間クジを引き、グループ分けをする (いろいろな出会い)
        ↓
5人1班×8グループで授業 自己紹介ならぬ他己紹介?にはじまる
(エンカウンターグループに匹敵)
        ↓
それぞれの気づきを言葉にする・皆の想いを共有する・班としての意見をまとめる
折り合いをつける・ファシリテーターを生む・・・

(2)授業の進め方

自分の生き方・仕事を考える(単なる職業調べに終わることなく、自分の生活設計と合わせて考える)。
     ↓
自分がやってみたい仕事(2つ以上)書く
     ↓
『わたしの仕事』理論社いろいろな仕事を知る=『わたしの仕事』理論社
1993年増補版 今井美紗子著・写真:今井祝雄
260人が語る220の仕事が詳しく掲載されているので目次を印刷し、各班に1セット配布する。
興味を持った仕事、全く知らない仕事など皆で共有する。
20年近く経った今、この本を利用すると、
それぞれの仕事人が大きく成長し、社会貢献している姿が見れることが大変興味深い。
現在は
『平成若者仕事図鑑』シリーズや
『13歳のハローワーク』などを活用するとよい。
ワークシートに記入しながら、仕事の解説などをしたり
時間があればビデオ視聴をするとよい。 ⇒ ワークシート(PDF)

☆解説を加えた仕事

しっかい屋・テーラー・表具匠・蒔絵師・コピーライター・あくあらい・セラピスト・シンクタンク・鳶・宮司・樹木医・消防吏員・ラウンドスケープ・アーキテクトなど

自分がやってみたい仕事や興味のある仕事を一つ選び実際にインタビューしてみる
⇒ 資料「仕事インタビューについて」(PDF)

☆インタビューしてもいい身内の方の広告を書く → その方の了解をもらって家庭科室の壁に掲示する

例

☆インタビューする相手に制限をかける

身近な人は避ける。できるだけはじめて出会う方にする。←ハードルをつくる(困難に立ち向かう)

☆報告書はB4用紙1枚にまとめる

☆発表は相互評価を(1)か(2)の方法で実施し、評価に反映させる。

(1) 各自にA6かB6くらいの用紙を渡し、良かったところを一言書く→集める→本人に渡す→提出
発表した時間内に評価票が本人の手元に届き、自己評価に効果的。
(2) 各自にB4用紙に40人分の評価(ABC)・コメント・良かったもの3つを選ぶ・感想と自己評価を書ける評価票を配布→提出→(裁断して本人に渡すこともできる)→良かったものの公表をする。

☆発表後は学年一緒に仕事別の冊子に仕立てる → 各クラスに配布

・暮らしを守る人
・教える人、学ぶ人
・命と健康を守る人
・味を求める人
・生きるエネルギーを売る人

5.生徒の感想

  • 看護師って、体力的にも精神的にもしんどい仕事だと思うのに、すごく楽しそうに話してくださって、「やっぱりやりたい事をやれるのは、どんなにしんどくても手ばなせない喜びがあるんだろうな〜。」と思った。私も早く、本当に自分がやりたいことを見つけたいと思った。よい体験ができたと思う。
  • 今の私とほとんど変わらない時期に、既に将来なりたい職業を見つけ、そして努力して実現したのがすごいなと思った。歯科医師の仕事は私が思っていたよりも時間的にも体力的にもハードだということがわかった。
  • 大学の先生は、大学で何をやっているのか、あまり知らなかったのでとても興味深かった。これから私たちが職業を決める上で大事なことも聞くことができたので良かった。
  • 表面の華やかなイメージとは違って想像以上に大変な職業(パイロット)のようです。「自分の仕事に誇りを持つ」私も○○さんのように誇りを持てるような仕事に就けるよう目標に向かって頑張りたいと思います。
  • このインタビューでスチュワーデスってすごく人間性が問われる職業だなあと思いました。実際、○○さんは気品溢れるお人柄でした。しかし、思っていた以上に大変な仕事のようです。でも「一生に一度絶対やっておくべき!」とこの仕事を勧めてくれた○○さんはすごく素敵な方でした。余談ですが以外と出会いが少なく、特にパイロットとは接点がほとんど無く、数少ないスチュワードはモテモテだそうです。
  • 家にいてする仕事も、家族の協力が不可欠で大変だなと思った。アドバイスを参考にして、自分のやりたい仕事を早く見つけて、その仕事に就けるよう努力していこうと思った。この「仕事インタビュー」は、とても良い経験になった。
  • 今回この仕事インタビューで○○さんに話を聞いて。○○さんの生き方がすごく素敵だと思いました。家庭に縛られず、自分のしたい仕事をして、だからといって家庭をほったらかしにせず、家庭を大切にしていました。私も一生したいと思える職業を探したいです。

6.まとめ

まず、本の目次での仕事調べにおいて、知らない仕事の多いこと。自分は世間知らずでまだまだ世の中に学ぶべきことがたくさんあるのだと自覚ができた。いろいろな仕事を知ることやインタビューを通して、なぜ勉強をするのか、何のために学ぶのかという根源的な問いに光が当てられ、それはとりもなおさず『生きるとは』なんぞやを考えるベースにもなった。

また、家族や学校に守られ、コミュニケーションスキルの低下が危ぶまれる子どもたちに良い体験が与えられた。これは授業でやらなければ、なかなか取り組めないことでもあった。
しかし、個人情報の保護が強くうたわれる昨今、そのことへの配慮を怠らない。

また、この授業においては事前学習が終了したならば、生徒の状況に応じて充分な余裕を持って望むことが肝要だ。夏休みをその時間にあてて、休み明けに発表してもいい。生徒たちが教科書からだけではなく『人』から学ぶことはたくさんある。そんな機会を授業の延長線上につくることは、本当に大切なことだと生徒の感想からも強く感じることができる。

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