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中学校社会科 公民的分野
『財政と国民の福祉』
  web.05
(2011.8)
鳥取県伯耆町立岸本中学校 松原 隆 先生

1.はじめに 〜単元設定の理由〜 

本単元では、国民生活の諸課題に対して政府が果たしている役割、財政の役割、さらに租税の意義と役割、納税の義務について学習することになっている。その中でも、諸課題への対応のための財源の確保・配分というところで議論がなされ、対立する意見がみられる。

財政、特に税制について考えていくところに、これまで学習してきた政治と経済の接点があり、総合的な認識の上に立って社会参画をしていくことができる資質の育成という公民的分野の大きな学習課題があると言える。

財政と租税の意義と役割を捉えた上で、税制改革についての自分なりの意見をもち、それを表現できること、および、他の意見を聴いて自分の意見を修正し合意にいたる努力をすることは、公民的資質の基礎を培うと考える。

2.単元目標

(1)【関心・意欲・態度】

税制改正はこれからの社会をデザインすることであるという認識に立って、その望ましいあり方について自分の考えを導き出そうとする。

(2)【思考・判断・表現】

税制改正について、政府の方針と経団連の提言をふまえた上で、望ましい税制改正について自分の考えを説明することができる。

(3)【資料活用技能】

適切な資料を選択し、それを正しく読み取り、望ましい税制改正に ついて説明するときの根拠とすることができる。

(4)【知識・理解】

わが国が抱える経済的・社会的な課題と租税・財政の役割とを関連づけて理解することができる。

3.単元の指導計画(全8時間)

単元名「財政と国民の福祉」
・実施日:平成23年2月10日(木)第5時限
・対 象:第3学年B組
・場 所:コンピューター室

第1次 財政の役割と課題・・・・・・・・・・・・・・・1時間
第2次 税金の種類と特色・・・・・・・・・・・・・・・1時間
第3次 財政の役割 ・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・3時間
第4次 望ましい税制改正とは・・・・・・・・・・・・3時間(本時3/3)

◆単元を貫く課題

菅直人首相の「消費税10%」発言に対して、あなたはどのような提言をしますか?

◆単元導入時の生徒の意識

政府の財源が苦しいことはわかるが、この不景気の中で国民の負担が増えることを考えると、消費税を10%にすることには反対である。

◆単元学習後の生徒の意識

「消費税10%」だけで賛成、反対を決めるのではなく、税制全体のバランスとこれからの社会設計の中で考えて提言していく必要がある。

4.本時の目標

意見交換を通して、所得税、法人税、消費税、その他の税について、それぞれ増税か、減税かについて論理的に判断し、最終的な自分の考えをまとめることができる。

5.学び合い活動の場面

展開【2】において、意見交換を行い、他の考えの根拠を聴いて、納得がいけば自分の考えを修正していく。

6.準備物

 コンピュータ・プロジェクター

7.本時の展開

学習内容 学習活動 支援と指導上の留意点 評価

【1】これまでの学習内容の確認

・わが国の財政が抱える課題に対して、その解決に向けた税制改革の提言であるという視点を確認する。 ・プロジェクターを使いながら、視覚的に確認ができるよう配慮する。  

【2】各税金についての立論と質疑
(1) 所得税
(2)法人税
(3)消費税
(4)その他の税
【学び合いの場面】

・各税金について、それぞれ増税か、減税かについて根拠をもって立論していく。その際に、他の意見を聴いて疑問に思ったことや、学んだことを出しながら、合意点をさぐる。 ・論点がかみ合うようにポイントを整理し、さらに足りないところの発言を促す。

・生徒への手立てとして、理解ができないと判断した発言については、より分かりやすい発言を再度促す。
 

【3】自分の考えの修正

・意見交換を受けて、最終的な自分の考えをワークシートにまとめる。なお、時間があれば数名が全体に発表する。 ・個々の税金での話し合いをもとに、対立する意見の合意点を意識して考えることを確認する。 ・ワークシートの記述、および発言内容を観察する。

【4】本時のまとめと振り返り

・納税の義務とともに、税制改正に関心をもつことも大切であることを理解し、「平成23年度税制改正大綱」について知る。 ・「大綱」については深く立ち入らず、継続的な自主学習の材料として有効なものであるという認識にとどめる。  

8.生徒の反応

本学級の生徒は、落ち着いて学習に取り組み、社会事象への関心が高い生徒が見られる。全体的には、自分の考えを述べる意欲に乏しい面が否めず、関心が高い生徒の意見だけで話し合いが進んでしまう傾向がある。

そこで、社会的諸課題に対して、自分の立場を決めて、そのように判断した根拠を書けることに指導の重点を置いてきた。その点では自分の意見を持てる生徒が増えてきている。

さらに、意見を出し合うことで合意形成をする「学び合い」を意識して取り組んでいるが、まだまだ充分な成果を挙げているとは言いがたい面がある。

9.まとめ

「マニフェスト選挙」による政権交代とその後の政治の状況については、多くの生徒が関心をもち、話題になっているキーワードの多くは雑然とではあるが耳に入っている。

それらを「財政」という全体像の中に位置づけることは社会的な認識を深めることにあたる。さらに、財源をいかに集めるか(税制)について、またそれをいかに配分するかについて議論をすることは、これからの社会をデザインすることでもある。

税務署の方をゲストティーチャーとして招き、税制改正の政府の方針や産業界からの要望を読み解き、税制改正について個々が自分の考えをもち、去る12月16日に発表された「平成23年度税制改正大綱」の方向に興味をもってさらに追究できる生徒を育てたいと考える。

[参考資料] *単元の指導計画部分

◆【第1時】 財政の役割と課題

【評価規準】 財政の役割とわが国の財政上の課題について説明することができる。
【本時のねらい】 財政の3つの役割について理解し、膨大な国債残高や社会保障関係費の増加など、わが国の財政上の課題を理解する。
【学習内容】 経済の循環、財政の役割(所得の再分配公共サービスの提供景気の調整)
国の歳入と歳出、財政赤字、国債(公債)

◆【第2時】 税金の種類と特色

【評価規準】 主な租税の特色について説明することができる。
【本時のねらい】 租税には様々な種類があることと、主な租税の特色を理解する中で「水平的公平」と「垂直的公平」という概念をとらえる。
【学習内容】 税金の種類、直接税と間接税、所得税
累進課税方式、法人税、消費税

◆【第3時】 財政の役割(1)景気の調節

【評価規準】 「景気の調節」における租税の役割、財政の役割について説明できる。
【本時のねらい】 景気変動に関連して、政府の財政政策、日本銀行の金融政策が経済に及ぼす影響について理解する。
【学習内容】 好景気、不景気、財政政策、金融政策、増税、減税
公共事業、就職氷河期

【第4時】 財政の役割(2)所得の再分配

【評価規準】 社会保障関係費が増大する要因を説明することができる。
【本時のねらい】 社会保障制度の役割を理解するとともに、社会保障関係費の増大と少子高齢社会の進展の関連性をとらえる。
【学習内容】 社会保障制度、社会保険、介護保険、公的扶助、社会福祉
公衆衛生、社会保障関係費の動き、子ども手当て、高校授業料実質無償化

◆【第5時】 財政の役割(3)公共サービスの提供

【評価規準】 社会資本の充実や環境問題における財政上の取り組みを説明することができる。
【本時のねらい】 国民の利便性を考えた社会資本の充実や、環境問題に取り組むために、租税や財政支出が役割をもつことを理解する。
【学習内容】 社会資本、環境基本法、四大公害病、NPO(非営利組織)
高速道路無料化、環境税

◆【第6時】 望ましい税制改正とは(1)情報収集する

【評価規準】 税制改正のポイントについてワークシートに整理することができる。
【本時のねらい】 「平成22年度税制改正大綱」の視点・方向性と経団連の提言のポイントの 両者を比較し、相違点と共通点を整理する。
【学習内容】 所得税、法人税、消費税、その他の税についての改正の方向性とその根拠 (税務署の方からの聞き取り)

◆【第7時】 望ましい税制改正とは(2)考えをまとめる

【評価規準】 望ましい税制改正について、収集した情報を根拠として自分の考えを論述することができる。
【本時のねらい】 所得税、法人税、消費税、その他の税について、ぞれぞれの根拠を明確にしながら増税か、減税かについて自分の考えをまとめる。

◆【第8時】 望ましい税制改正とは(3)みんなで考える

【評価規準】 望ましい税制改正について、他の考えを聴いて自分の考えを修正することができる。
【本時のねらい】 意見交換を通して、所得税、法人税、消費税、その他の税について、それぞれ増税か、減税かについて論理的に判断し、最終的な自分の考えをまと めることができる。
※参考: 「平成22年度鳥取県版私たちの生活と税」(鳥取県租税教育推進協議会)
  「税制について考えてみよう」(平成22年10月 財務省)
  「平成22年度税制改正」(平成22年4月 財務省)
  「平成23年度税制改正に関する提言」(2010年9月14日 日本経済団体連合会)


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