文字サイズ変更
  • フォントサイズ大
  • フォントサイズ中
  • フォントサイズ小
生命保険文化センタートップページ>学校教育活動>教育の現場から>教育の現場からINDEX>web.07
「かしこい消費者になりましょう」
〜外部講師の協力による授業〜
  web.07
(2011.10)
横浜市立藤の木中学校 遠藤 まり 先生

1.はじめに

社会の急激な変化の中で、多くの消費者問題が起き、賢い消費者としての教育が求められています。中央教育審議会初等中等教育分科会教育課程部会家庭、技術・家庭、情報専門部会では、家庭科、技術・家庭科の現状と課題、改善の方向性にあるように、今後、中学校技術・家庭科家庭分野の指導の中でも、消費者教育は重要な内容として示されています。

改善の方向性
○社会の変化に対応して、次のような改善を図る。
持続可能な社会の構築や消費者トラブルの増加に対応し、社会において主体的に生きる消費者をはぐくむ視点から、消費の在り方、資源や環境に配慮したライフスタイルの確立を目指す指導を充実する。

しかし、社会で起こっている様々な問題は日々更新され、新たな問題が次々と出現しています。そこで、消費者教育においては、それらの問題に対応するために、常に新しい情報を収集し、その情報を授業で有効に活用することが必要であると考えます。

今回は、外部の専門の知識を持った方、外部講師に授業に協力していただき、新しい課題も含めて生きた授業にしたいと考えました。また、具体的な課題を提示することで、生徒にとって自分の身の回りで起きている問題としてとらえ、自分の消費生活を振り返る生きた消費者教育の授業ができないだろうかと考えました。

本校では、1年生の携帯電話の所持率は75%となっています。

〈藤の木中学校1年生を対象にしたアンケート調査結果より抜粋〉
(1)携帯電話の月額使用料
携帯電話の月額使用料
(2)携帯電話やインターネットを使っていて困ったことはありますか?
1)ある  26%…パケット代が高い、パケ放題の設定を忘れた、変なサイトからの請求、非通知で電話が来る、
                      迷惑メール、個人情報漏れ、ウィルス等
2)ない  74%
(3)消費生活総合センター※1を知っていますか?
1)知っている  11%
2)知らない     89%

2.授業の準備

まず、外部講師をお願いするにあたり、横浜市の「消費者団体等協働促進事業」※2として行っている「消費生活講座」に申し込みをしました。今回、消費者団体より1年生の授業4回(4クラス)に講師を派遣していただけることになりました。

講師は消費生活専門相談員の経験がある方々で、最近の中学生からの相談は「オンライン等関連サービス」※3に関する内容が圧倒的に多いということから、「生活の中の身近な問題を考える」というテーマで、「携帯電話やパソコンの利用に関するトラブル」に焦点を当て授業を展開することにしました。

講師の方には、事前に中学校技術・家庭科(家庭分野)の指導要領や教科書の内容について説明をして、授業の流れについて相談しました。

※1…消費生活に係る相談・啓発・情報提供・商品テスト等の事業を実施している。
指定管理者(センターの管理・運営):財団法人横浜市消費者協会
※2…地域における消費者トラブルや消費者被害の防止を図るため、横浜市が、消費者団体等との協働により実施する事業。消費者教育啓発講座等の事業を実施している。 ※3…携帯電話やインターネット等に関連したサービス。これに関連した相談では、有料サイト料金を請求する不当請求などがある。

3.授業実践

3-1 指導計画(1年生・4時間扱い)「賢い消費者になりましょう」

1時間目(本時) 契約とは・生活の中の身近な問題を考える
〈外部講師とのT・T授業〉
2・3時間目 販売方法と購入方法・あなたも消費者
4時間目 悪質商法・消費者保護

3-2 本時の目標

中学生に関わりの深い事例から、「契約」について理解し、消費者が適切な判断と行動をとる必要があることを理解して、自分の問題として考えることができる。(関心・意欲・態度、創意工夫、知識・理解)

3-3 本時の流れ(1時間扱い)

講師は授業計画に沿って授業を進める。
教師は導入で話をし、ロールプレイにかかわり、最後のまとめを行った。

授業風景
授業風景

3-4 授業計画・・・1時間(50分)の授業計画

◎ 授業の主旨
契約は売る人と買う人の合意で成立する
契約はいったん成立したら簡単にはやめられない。契約は慎重に。
いらない時ははっきりと断る。
あいまいな態度では ズルズルと契約に引きずり込まれる。
その例として ロールプレイを行う。
(合意していない契約は成立していない。54000円は払わなくても良い。)

携帯電話を例に 個人情報の大切さと さまざまなトラブルへの対処法 を学ぶ
成立していても解約できる例がある それは冷静でなかった契約。
消費者の権利としてのクーリング・オフを説明して、消費生活センターを紹介する。

◎授業の流れ

時間・担当 指導内容 生徒の活動
0〜3分
先生
相談員
・あいさつ
・前回の授業と今日の学習内容について 
・講師(相談員)の自己紹介
あいさつ
3分〜
相談員
1、消費って何?
バナナを買う 電車に乗る などのカードを見せて
a(物資)と  b(サービス)の違いに気づかせる
空欄への記入
  2、契約って何?
  *売る人と買う人の  c(合意)。
空欄への記入
    *いらない時は  はっきり断る  d(いりません
空欄への記入
  事前アンケート調査の結果をもとに
店で、返品・返金ができたりするのは、店の好意であることを伝える。
表示の確認や試着・品質の比較が大切であることを伝える。

あいまいな態度では契約に引きずり込まれる
    ↓
 
15分〜
先生
相談員
3、携帯電話の落とし穴
ロールプレイ   役になる生徒の決定。
シナリオなどの準備、役へのアドバイス。
他の生徒に問題点を探すよう指示。
(1)どんな落とし穴?
問題点を尋ねる。板書。
事前アンケートの結果から  携帯電話を持っている数などを知らせる。


役を決める
シナリオを読む。
どんな問題があるか、考える。
気づいた点を答える。
25分〜 (2)不当な請求がきたら?
(ロールプレイでは54000円の請求があった)
対処方法を指示⇒支払わない。
ネットオークション、貼り付け請求、中古車の事例、新聞契約
などできるだけ事例をあげる。


(3)出会い系・アダルトサイト・プロフ・ブログ・コミュニティサイトは、
トラブルがいっぱい。
(ロールプレイでは「18歳以上」をクリックし、個人情報を告げた)
個人情報とは  e(住所)・f(氏名)・g(電話番号
空欄への記入
 
(4)なりすましメールに注意
(ロールプレイでは、「覚えていますか、優です」)
対処法を指示⇒フィルタリング機能の利用
対処法を指示⇒受信拒否(電話会社に相談)
対処法を指示⇒削除する、携帯電話会社の迷惑メールセンターへ連絡

(5)チェーンメールは送らない  h(めいわく
空欄への記入
 
消費者を守る制度
 
35分〜 4、クーリング・オフって知っている?
* 特別なルールであること。
冷静になって考え、やめるこができる制度  i(8日間
空欄への記入
  * 訪問販売、電話勧誘について
学習教材、学習塾など例にあげて
* 方法について  j(はがき
空欄への記入
  * できない場合、  k()で買った場合 空欄への記入
                             l(3000円)未満 空欄への記入
* 通信販売は返品特約
5、困ったことがあったら すぐ相談を
45〜50分
先生
消費生活センターの紹介
事後アンケートの記入
感想等の記入

【携帯電話の落とし穴】

●不当請求→(ロールプレイ)準備されたシナリオ(携帯電話の落とし穴)を4人の生徒が役になりきって演じました。
講師が途中で質問をして生徒が考える場面があり、理解しやすかったようです。
⇒ ロールプレイのシナリオ(PDF)
●出会い系、アダルトサイトのトラブル、個人情報について ●チェーンメールについて
実例を、教室の壁に数例貼り出し紹介しました。
恐怖心から回してしまう内容や人助けと思って回してしまう内容など様々なものがありました。
チェーンメールは経験者も多く、自分の体験を話し出す生徒もいました。
●パケット通信料について
事前アンケートで「困ったこと」に挙げられていたもので、「荷物と同じでデータが重いものはお金が多くかかる」という説明はわかりやすかったようです。

4.授業を終えて

4-1 授業前と後の生徒の考えの違い

 
*お金を使うときに考えることはどんなことですか?   *どんなことを考えなければいけないと思いましたか?
コンビニなどよりは例えば文房具屋に行って少し安めの文房具を買うようにしている。 本当に必要なものだけを買う。むやみにダウン ロード等をせず、よく考えて慎重にする。
買おうと思っているものが必要なものかを考える。 一度契約すると簡単には解約することができないから、しっかりと考えてから買わなければいけないと思った。
買うものの値段。 ネット販売などでは安心できる店を利用する。

4-2 生徒の授業の感想

・携帯でダウンロードやメール、着うたフルなどいろいろお金がかかるんだなぁと初めて知り、お金を無駄遣いしないようにしたいなぁと思いました。 ・メール内容にだまされてはいけないと思いました。パケット通信料は時間じゃなくデータ量に応じてということを初めて知りました。 ・あまりデータの大きいものはダウンロードするとすごく高いということを知ってびっくりしました。 ・携帯で詳細を読まずに結構進んでいたことがあったので、次回からは気を付けて、そんな人たちにだまされないようにしたいです。 ・無料と書いてあっても規約を見たら登録料に1万円とか書いてあったりすると聞いて、今私が使っているサイト(韓国語の歌)は大丈夫かな?と不安になりました。個人情報を簡単に入力して登録することも時々あったので、これからちゃんと気を付けたいです。 ・個人情報を教えてはいけないと前から親に言われていたけど、何が危ないのかがよくわかりませんでした。改めて、携帯電話やパソコンは便利だけど危険がいっぱいあることが分かりました。 ・ちゃんと教えてくれてよかったです。困ったことがあったら消費生活総合センターに電話してみたいと思いました。悪質業者に引っかからないようにしっかり考えて行動したいと思いました。

4-3 今後に向けて

新しい情報、確かな情報を授業に取り入れることは大切であり、講師の話は説得力がありました。そのため、日常の生活を振り返り役立てようと考える生徒が多くいました。どのような場面で役に立てたか等、その後の様子を確認できる時間を取りたいと思います。

お話を聞く時間が多かったため、生徒の活動する場面を増やせるよう検討したいと思います。1時間扱いで行いましたが、ワークシートへの記入や質問をする時間がとれるように、2時間扱いで実施することが望ましいと考えます。

本稿は、教員向け消費者教育情報「NICE」第52号〔2007年9月28日発行〕の授業実践事例
「中学校技術・家庭科(家庭分野)《B(4)ア・家庭生活と消費》「かしこい消費者になりましょう」〜外部講師の協力による授業〜」による出典である。

教育の現場からINDEXへ戻る