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ライフスタイルと生活設計
〜「新しい家庭経済授業プラン」を活用して〜
  web.09
(2011.12)
大阪府立吹田高等学校 中島 美保子 先生

2011年度 夏季セミナー報告(2)

2011年8月19日(東京)、8月26日(大阪)の両日、当生命保険文化センターと(社)日本損害保険協会の共催で教師の方を対象とした夏季セミナー「くらしとリスク管理」を行いました。
今回はその中から、8月26日に「授業実践報告」をしていただいた内容をまとめました。

セミナー風景

実践教科:1学年 家庭科「家庭総合」
使用教科書:東京書籍「自立・共生・創造」

1.はじめに

本校は、大阪北部にある23クラス規模の普通科高校で、生徒の6割が地域から通学しています。生徒の約8割が大学や専門学校に進学し、残りを就職する生徒が占めています。進学する生徒のうち大学に進む生徒以外は、調理関係、美容関係の専門学校に進む生徒が多くなっています。

授業においては、座学より実験、実習などの実技教科に喜んで積極的に参加する傾向があります。しかし、指示を的確に聞くことができずに何度も同じことを質問したり、指示されるまで動かない生徒も多くいます。そこで、家庭科ではより多くの実験や実習、参加体験型の授業を取り入れ、生徒が気づき、考え、行動できるような仕掛けや授業展開を行うようにしています。

本校の家庭総合では、1学年の1学期に家庭経済の領域を学習します。学習指導要領に「将来を見通した生活を考えさせる」という目標があるため、最初に自分自身について見つめさせ、自分らしく生きるとはどういうことか、何を生きがいとし、これからの人生をどう生きるかを考えさせ、自己の職業観、結婚観、家族観、ひいては人生観の確立を目指しています。

女子生徒の中には、いまだに結婚がゴールであったり、専業主婦を望む生徒が少なからずいます。逆に男子は、共働きや家事分担に理解を示す生徒が多くいます。しかし、人生設計を考えるうえで大切なことは、さまざまな意味での「自立」です。自分自身をしっかり見つめ、自立することで、自分に自信を持って何事にも積極的に取り組むことができると考えています。

その際、重要な課題となるのが経済的な自立です。どのような職業に就くか、そのためにどのような資格を取得し、あるいは上級学校に進学するべきかについてしっかり認識させるとともに、国内外における経済活動と家庭経済とのかかわりや、消費者としてのあり方、ライフステージに合った家計管理について学習しています。

今回、通常はプリントのみで行っている授業において「新しい家庭経済授業プラン」から抜粋・編集したスライド等を活用することにより、生徒がより一層の理解を深めることをねらいとした授業づくりを行いました。

※「新しい家庭経済授業プラン」は生命保険文化センターが作成したパワーポイント教材です。

2.授業計画

本校における授業計画を説明します。
最初の授業では、なぜ家庭科を学ぶか、家庭科が男女共修になった経緯などを話します。また、2年間でどのような内容を履修するか、その中でどのような力を身に付けてほしいかということを話します。

授業計画(1年生)

時間 単元・教材名
4 1 家庭総合の学び方
12 自分らしく生きる
5     ・自分を見つめる
自分の人生を作る
6     ・共に生きる暮らし
    ・これからの家族・家庭
18 消費者として生きる
7     ・消費者として社会とかかわる
    ・消費行動と資源・環境
生活を設計する
8     ・経済・産業構造の変化と生活
時間 単元・教材名
9 23 心地よく着る
10     ・着るとは
11     ・被服の材料
    ・衣生活の管理
12 2     ・衣服の構成と製作
    ・これからの衣生活
ホームプロジェクト
1 14 快適に住む
2     ・住まいについて考える
    ・健康的な住まい
3     ・安全な住まい
    ・住まいと地域
 

次に、自分自身を見つめて、将来どう生きるかについて考えさせます。そして、そのためには自立が必要であると考えさせるために、経済の自立についての話をします。

さらに、生活自立の一つである衣生活について考えさせます。常にグローバルな視点で物事を考えさせるため、まずは被服の起源、なぜ被服を着るのか、どういったいきさつで被服を着るようになったのか、また、世界各地にはその地域の気候に合ったさまざまな服装があることなどを話しています。その後、素材や繊維の話、被服製作、洗濯・保管など被服の管理へと話をつなげます。

被服と同様、気候によって異なるものとして住居があるよね、という話から住生活へ移ります。一人暮らしを考える生徒も多いので、住居記号から住居を読み取らせ、書面では見えないけれども住むために必要なことは何か、例えば日曜日に家を見に行ったら静かだったが、実は隣に工場があって平日はうるさくて窓も開けられないということもある、というような例も挙げながら、生きていく上で必要なことを考えさせ、身に付けさせるようにしています。

本校では家庭経済を1年生の1学期に学習し、2年生の最後に再び生活設計の話に戻ります。これには理由があります。家庭科を2年間学んで自分の考えがどう変わったか、また、自立するために必要なことにはどのようなことがあるかを再確認するためです。
1年生の最初に考えた生活設計と比べて自分の考えがどのように変わってきているか、変わったのはなぜか、また、変わっていないとしたら家庭科を学ぶことで自分の価値観の確立に影響を与えたことはないのか、ということを考えさせます。

経済のほか契約や消費者問題も1年生の早い時期に取り上げます。その理由としては、第一に契約のことがあります。本校はバイクの免許取得を届け出制で許可しており、夏休みに免許を取得してバイクを購入する生徒もいます。また、見るたび最新の携帯電話を持っている生徒もいます。未成年である彼らは、契約には保護者の承認が必要ということは理解していますが、卒業後就職する生徒もいるので、契約の大切さや怖さを伝えたいという思いからです。

第二に、生徒の中には「カード破産すれば借金がなくなる」などと安易に考えている生徒もおり、多重債務に陥り抜け出せなくなることもあるということを教えたいという思いからです。大学によっては入学後に指定のクレジットカードを作らせる大学もあります。カードを無計画に使用することへの危険性や、キャッシングの怖さについても教えておきたいと考えています。

3.実践計画

次にご説明するのは、平成23年6月に1年生(38名)のクラスで実施した授業内容です。

題材名:「現代の家計の特徴とキャッシュレス化」
学習目標:家計のサービス化やキャッシュレス化の背景やその家計管理などについて理解し、
                主体的な消費者として責任ある行動がとれるようにする。

時間 学習内容 生徒の学習活動 留意点
3分 前時の復習と本時のねらい     ・契約の重要さと販売方法の多様化を確認する。 教科書と前時のプリントで確認する。  
17分 現代の家計の特徴     ・キャッシュレス化し、クレジット、ローンが多用されていることを知る。 スライド1を見る。 授業の内容に合わせてスライド内の語句を表示する。
キャッシュレス化する社会     ・さまざまな支払い方法とその特徴、カードの種類を理解する。 具体的にどのようなカードを持っているか、あるいは知っているか等の問いかけを行い、考えさせる。
スライド2を見ながら、プリントに記入する。
25分 クレジットカードの仕組み     ・三者間契約について、一つずつ提示しながら説明を加え、メリット・デメリットについても考えさせる。 スライド3・4・5を見ながら、少しずつ表示されたところをプリントに書き込む。 生徒の反応を見ながら進める。
消費者信用について
    ・販売信用・消費者金融について理解する。
スライド6を見ながら実際に自由に使える金額を考える。
    ・多重債務に注意することを理解させる。 スライド7を見ながらプリントに記入する。
5分 まとめと次時の予告
    ・クレジットの仕組み等について理解できたか。
プリント提出  
※ スライド1・3・4・5・6は、「新しい家庭経済授業プラン」の一部です。
当サイトから自由にダウンロードできますので、ぜひご活用ください(生命保険文化センター)。
⇒パワーポイント教材【新しい「家庭経済」授業プラン】はこちらから
⇒教師用手引書、ワークシートはこちらから

●前時の復習と本時のねらい
プリントを使い、前の時間の復習と、本時のねらいである契約の大切さ、販売方法の多様化について説明します。

●現代の家計の特徴(スライド1)

現代の家計の特徴

現代の家計は、家族が個々に収入源を持ち支出する個計化、現金を扱うことが少なくなっているキャッシュレス化、クレジットやローンの利用による支払期間の長期化、消費支出の中でサービスの割合が増加しているサービス化の4つの特徴があることを説明します。

●キャッシュレス化する社会(スライド2)

カードの種類

カードの種類と特徴について説明します。まず、支払いをするためのカードとして(1)プリペイドカード、(2)デビットカード、(3)クレジットカードの3つについて説明します。

次に、現金を引き出すためのカードとして、金融機関のキャッシュカードと、お金を借りるローンカードについて説明します。クレジットカードでもお金を借りることができるということ、また、クレジットカードでお金を借りるのは簡単だが金利は高いことなども話します。
最後に、身分を証明するカードとして免許証や、さまざまなIDカードについて説明します。

●クレジットカードの仕組み(スライド3〜5)

キャッシュレス化

三者間契約について、メリット・デメリットの話もしながら説明していきます。
まずカードの発行についてです。高校生はなぜクレジットカードが持てないのかについて考えさせます。カードは誰でも持てるものではなく、信用調査があるということ。経済的な保証があるか、勤め先は、会社の規模は、勤続年数は、持ち家か借家かなど、いろいろなことを申告して審査を受ける必要があり、信用されて初めてカードが発行されるのだという話をします。

次に、カードを使う際にお店は、このカードが本当に使えるものか、利用限度額に達していないか、盗まれたものでないかという照会をして、クレジットカード会社から許可が出て初めて消費者は売上票にサインするということを確認させます。簡単に「サインすればいい」と思っている人も多いが、その裏にはいろいろなことがあるということ、また、売上票に書かれたものと自分が買ったものが本当に合っているかの確認をしないままサインをしてしまっても、消費者が納得して買ったことになるので、きちんと確認しなければならないことなどを説明します。

次にクレジット契約の支払いの流れについて説明します。このとき、消費者に必要なこととして、後日クレジットカード会社から送られてきた利用明細について自分がサインした内容と合っているか、買った覚えもないのに請求が来ていないかを確認すること、もしも覚えのない請求が来た場合はカードが不正使用されている可能性があるので速やかにクレジットカード会社に連絡することを説明し注意を促します。

そして、クレジットカードによる支払いは、消費者とお店の「売買契約」、お店とクレジットカード会社の「加盟店契約」、消費者とクレジットカード会社の「立替払い契約」という三者間の契約で成り立っていることを説明します。また、分割払いやリボルビング払いには手数料が発生するということ、分割払いにすれば1か月の支払い額が少なくて済むと安易に考えるのではなく、手数料を含め総額を考えなければならないことなどを考えさせます。

●一人暮らしの家計(スライド6)

一人暮らしの家計

クレジットカードを使用した場合、その支払いが一人暮らしの家計のどれくらいを占めるのかについて考えさせます。
一人暮らしの家計では、消費支出が多いことがわかります。およその割合は、消費支出61%、非消費支出23%、預貯金・保険料・借金返済などが16%。しっかり計算して収入から残さないと、貯金やクレジット、ローンの利用はできないということに気づかせる必要があります。そこで、高卒者の収入はおよそ16万円くらいなので、16万円のうち実際にどれくらい使えるのかを生徒に計算させます。

収入から非消費支出(23%)の36,800円を引いた残り123,200円(77%)が自分の使えるお金です。そこから預貯金や借金返済のための25,600円(16%)を残すと、消費支出に当てられるのは97,600円です。さらにここから家賃、食費、光熱費、交通費、電話代などを払っていくと、自由に使えるお金というのはどれくらいになるか。

一人暮らしをしたいという生徒は多いのですが、これを考えさせると「やっぱり一人暮らしできない」ということになります。生徒はよく「食費を削る」と言うのですが、「食べるものも食べずに病気になるよ」と言うと、生徒は考え込んでしまいます。このようなグラフがあると、頭の中だけでイメージするよりも具体的になり、わかりやすくなると考えています。

●クレジットとは(スライド7)

クレジットとは・・・?

最後に、クレジットって何だろうということを考えます。クレジットとは個人の信用を担保にお金を借りることです。無担保の場合は金利がかなり高くなる。そういうことも考えながらお金を上手く使わないと多重債務に陥ることもある、と話します。多重債務の意味を説明し、クレジットは上手に利用し家計管理をするように、とまとめます。

4.授業時間での留意点について

今回、授業プランのパワーポイントに沿って、生徒が空欄を埋めるプリントを作成し活用しました。また、プリントに合わせたオリジナルのスライドも作成しました。画面を見ながら、生徒がプリントのどの部分を記入するか、ゆっくり確認しながら授業を進めます。一度に全体を見せると、生徒は黒板を写すことに集中し、説明を聞き漏らすこともあるので、説明を加えながら少しずつ表示すると、生徒の理解がより進むと思います。

5.生徒の反応・効果

デジタル教材を取り入れたことで、普段と異なる雰囲気だったため生徒は教師の問いかけに積極的に取り組んでいました。例えば、実際に自分が使える金額は少ないということを考えさせる際、通常であれば教師の言葉のみで生徒に質問し、考えさせるところです。

しかし今回は、視覚的にわかりやすい円グラフのスライド「一人暮らしの家計」を見せることによって、生徒たちは非消費支出の多さに注目し、収入のすべてが支出に回せないことや、上手にやりくりをしないと貯金やクレジットの支払いができないことに気づきました。

また、カラフルな色づかいに生徒は興味・関心を持って授業に集中することができました。教師も、板書の時間が少なくなるため、より多くの時間を生徒の様子を確認しながら授業を進めることに使え、学習効果も上がったように感じています。

6.まとめと今後の課題

この分野の授業では、一部にデジタル教材を取り入れて活用しました。分野全体をデジタル教材で行うことも考えましたが、そうなると授業がテレビ化し、生徒は一方的に受け取るだけになってしまう可能性があります。また、教師の側からも、自分の教案に一部エッセンスとしてスライドを利用することで、年間の授業計画の大幅な見直しをすることなく、授業の流れを損なうこともなく導入できました。

このように一部の活用であれば、気軽に利用できるのではないかと思います。今後は、生徒の反応を見ながら、視覚に訴えるほうが良いものについては少しずつ取り入れ、授業内の変化を楽しみつつ、生徒が考えながら取り組める授業の構築を進めていきたいと考えています。今回はスクリーンを使いましたが、ホワイトボードを使えば書き込みもできます。

デジタル教材は新鮮で生徒も興味を持って取り組んでくれますが、本校ではまだ十分に活用されているとは言い難い状況にあります。今後は、年間計画のどの部分にデジタル教材を活用するか、しっかりと計画・準備することが必要だと痛感しました。また同時に、教員自身も活用技術の向上を心がける必要があると感じました。そうすることで、生徒がよりいきいきと取り組める学習環境が整うのではないかと考えています。

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