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家庭基礎の授業で学ぶ消費者教育
「悪質商法」に騙されないために
  web.11
(2012.2)
東京都立つばさ総合高等学校 山﨑 靖 先生

1.はじめに

大量生産・大量消費のもとに成り立つ現代の日本の社会の中で、自らの意思で消費を決定する賢い消費者になることが重要視されている。それと並行して、販売形態の多様化に伴い、知らず知らずのうちに価値観と異なる消費を行うケースも増えてきている。

そのような環境に対処するには、これまで以上に自ら考え意思決定する訓練を行っていく必要性を感じる。

家庭基礎という全校生徒が履修する必修科目においてその経験をさせるべく、消費者教育を充実させることは急務であると考えている。

2.授業の位置付け

◇対象学年 1年次生
◇対象科目 家庭基礎(2単位)
◇使用教科書 実教出版 家庭基礎 自分らしい生き方とパートナーシップ


本校では、家庭基礎を1年次に2単位必修科目として履修している。消費者教育に関しては2学期後半より16時間で扱っている。時間配分については下記に示すが、今回紹介する悪質商法については、消費者の権利と責任の単元の中で扱っている。

  『消費者として自立する』
  消費行動を考える  
    (1) 主体的な消費行動 2時間
    (2) 消費者の権利と責任 6時間
    (3) 資源・環境を考える 4時間
  衣生活の基礎・・・木綿の布巾 4時間

この単元に最も時間をかけている理由は、生徒が近い将来に経験する内容が多く含まれているためである。具体的には契約、様々な販売形態、問題商法(悪質商法)、クーリングオフ、キャッシュレス社会とクレジットカード、消費者に関わる法律などである。

特に契約や問題商法への対応は自ら意思決定することが不可欠である。そのためにも自分で考え、それを言葉や行動にする経験が必要であるという発想のもと、以下のような授業を行っている。

 

3.授業展開(2時間)

 

本時授業の前授業では、契約について学び、社会の変化に伴い販売形態が多様化していることを具体例とともにその長所・短所を指摘する形で学習している。

過程 学習活動 生徒の学習活動 指導上の留意点
1限
導入
10分
悪質商法(問題商法)とは何か 悪質商法に関するニュース等からの情報を整理する 順法の是非について明確にしながら扱っていく
展開
30分
悪質商法の手口と問題点
  事例の多い10種類程度の商法
  の名称・扱われる商品・問題点
  について解説する
悪質な商法の問題点を整理する 最新の情報を収集し事例説明をする
まとめ
10分
問題点の整理と被害者にならないための心得 悪質商法に騙されないための心得を整理する  
2限
導入
5分
課題の説明とロールプレイについての諸注意 下記参照  
展開
20分
ケース別に、悪質商法に騙されないための断り方を台本にする 販売員・消費者の立場の二人一組で台本をつくる 細かい設定については両者で話し合い決めていく
15分 台本をもとにロールプレイを行う 4つのケースの中から展開の優れたものを発表する 全員が最低一つは発表する
まとめ
10分
悪質商法の被害者にならないためにどうしたらよいか 授業の感想とこれからどのようなことに注意していくべきかを記す  

課題『悪質商法への対応』

ケース1 友人から話があるから会いたいとの連絡が入る
→ A.「入会金30万円払い、仲間を5人紹介してくれれば1ヵ月後には100万円になる話がある。お金がなくても学生ローンの特別金利で借りることができるから是非一緒にやろう。」
ケース2 路上アンケートに協力した
→ A.「あなたのお話はわが社の商品開発をする上でとても参考になる。何かおごるから是非喫茶店でもっと詳しいお話が聞きたい。」
ケース3 無料体験に参加し、体験アンケートで"とてもよかった"に○を付けた
→ A.「とてもよかったのでしたら、体験者サービスで入会金を半額にしますので是非入会しましょう。」
ケース4 商品説明会に友人とともに参加し、いろいろな新製品を無料でもらった。最後に高額な商品が紹介され、友人も含め皆クレジット契約を結んだ
→ A.「まだ契約していないのはあなただけです。本当にこの値段では手に入らない商品ですから、悩まずに契約しましょう。」
  (1) 4つのケースについてまず自分でどのように断るかカードに記す。
  (2) カードを別の生徒に渡し、その生徒は販売員の立場に立って契約を結ぶようにもっていく言葉を記す。
  (3) カードをもとに戻し、さらに断る方法を記す。
  (4) これを繰り返し、話が完了し結論が出るところまで続ける。
  ※ カードは4種類を別々の生徒と交換する方が、展開が新鮮になってよい。
  ⇒ ケース1〜4の回答例(PDF)
 

4.生徒の反応(授業の感想より)

・販売員の立場で何を言えばいいかを考えることによって、そこにどのような落とし穴があるかが想定でき、逆に騙されにくくなると思った。 ・悪質商法の話だけ聞いているより、自分の問題になった時にどうしたらいいかを考える機会ができてためになった。 ・私は機転が利かないので即座に適切な回答ができないから、路上アンケートや商品説明会などには絶対に応じないようにしようと思った。 ・騙す側は心理学とかを勉強してそれを利用しているようだが、そこまで勉強するなら普通に働いて儲ければ犯罪者にならずにすむのに、なぜそこまでするのかと思った。

5.おわりに

消費者問題は社会の移り変わりとともに、日々変化している。教材を提供する立場としては現在話題になっている教材を探し提供することは可能であるが、生徒が数年後に社会人として自立する頃には新しい問題に直面することになる。

つまり、家庭科の授業で学んだ具体的な内容よりも、考え方のプロセスが大切になるのである。そのような視点から、消費者教育を行う上で大切なのは、知識を伝えること以上に考える姿勢を伝えることであるといえる。

このことより、消費者教育に限らず家庭科の授業においては、考え方のプロセスを体験させる授業を今以上に開発していく必要性を感じている。

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