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キャリア教育の視点に立った中学校社会科の授業
−生命保険の作文を通して将来を考える−
  web.01
(2012.4)
足立区立第十二中学校 高田 祐一 先生

1.はじめに 

将来の職業人・社会人として自立していくための基礎を身につけさせることが中学校の役割だと考える。何か特別な体験学習(例えば、職場体験学習など)を行うことだけが「キャリア教育だ」と誤解している教員が未だ多くいるようだが、キャリア教育は 教育活動全体を通して行うものである。

中でも、教科の授業は学校生活の大半を占め、最も重要なものである。そこで、キャリア教育の視点に立った社会科の授業を、公益財団法人生命保険文化センター主催の中学生作文コンクールを通じて実践し、以下に報告する。

2.中学校第三学年社会科での実践例

背景とねらい

約二十年前からこの生命保険の作文に取り組んでいるが、以前は中学三年生の 夏休みの宿題として「税の作文」と共に要項を配り「ただ書いてくるように」と指示し、一切の手を加えないまま集めて応募しただけであった。

しかし、幸か不幸か足立区は夏休みが5日間短縮され、8月25日より学校が始まることになったため、夏休み前後に指導する時間が十分確保された。

また、新学習指導要領完全実施に当たり、重点的に育成すべきとされた「言語活動の充実」を意識し、主体的に学習に取り組む態度を養う指導を意図したことから、今学年の生徒は第一学年次から三年間継続してこの「生命保険」の作文に取り組むことにし、ねらいを以下のように定めた。

【1】 「生命保険」という難しいテーマを家族や身近な人と話し合うことで、人間関係形成能力(コミュニケーション能力)をはぐくむ。
【2】 新聞・テレビのニュース、図書館やインターネットによる統計・資料を活用して、情報収集能力をはぐくむ。
【3】 作文を書くことで諸外国に比べ課題となっている子供たちの思考力・判断力・表現力を養う。
【4】 少子高齢化社会に突入した日本の現状と将来について関心を高める。
【5】 自分や家族の将来の計画・生き方を考えるきっかけとする(キャリアプランニング能力)。

指導計画(3時間)

【1】 生命保険とは(本時)
【2】 日本の社会保障制度
【3】 将来の日本と自己の生き方

本時の展開

  学習の流れ 学習活動と内容 指導上の留意点
導入
  • 生命保険とは何かを考える。
  • 「生命保険」とはどういうものなのかについてグループで話し合う。
  • ある程度自由に発言させるが、話題が広がりすぎないように気をつける。
展開
  • 「保険」という概念を身近な例からとらえる。

  • 生命保険の冊子を配布し、その内容を確認する。
  • 病院に行くときに何を持っていくかを考え、医療保険について確認する。

  • 「生命保険って何だろう?」という冊子を読み、身近な具体例を考える。
  • 日本の医療保険について簡単に解説し、生命保険の内容につなげる。

  • 冊子の中から、共感するものがないかを考えさせる。
まとめ
  • 社会保障制度のしくみを理解する。
  • 社会保障制度のしくみについて確認する。
  • 少子高齢化社会の現状とこれからの社会保障制度のあり方について簡単にふれ、次時につなげる。
「生命保険って何だろう?」は生命保険文化センターが作成した冊子です。
作文を書く際の参考資料として無償で提供しています。
また、WEBで内容をご覧いただけます(生命保険文化センター)。
  ⇒「生命保険って何だろう?」はこちら

3.生徒の変容

事後に簡単なアンケートを実施した。
「あなたはこの作文を書く前と書いた後では学ぶ意欲は変わりましたか」

グラフ

生徒の意見(一部抜粋)は以下の通りである。

  • 「保険に入っていることで、父が少しでも安心して仕事ができると言っていて、生活の支えになっている」
  • 「両親のありがたさ、『幸せ』とはどのようなことかを改めて知ることができた」
  • 「自立した大人になりたい」
  • 「将来の日本が心配」
  • 「父が入院し、身近な問題として捉えるようになった」
  • 「欧米に比べ日本の社会保障制度の不備を感じた」
  • 「日本の将来がどうなっていくのか不安」

4.まとめ

「生徒が山の頂上に着いた時、後ろの山道を振り返り『あー私たちこの道を登ってきたんだ。何だか達成感がある〜!』と言った。」これは、私の尊敬する先生が「キャリア教育」を語る時に必ずお話されることである。

まさに、自分のこれまでの軌跡を振り返り、様々な人と触れあい、色々な経験を積み、さらにこれからの道を歩んで行くことが「キャリア教育」そのものである。

したがって、この生命保険の作文を書くに当たって、家族や身近な人との話し合いの中で、家族の自分への思い、助け合う心、自分の将来設計などについて考え、努力していく姿勢を養いたいと思った。

3年生最後の学年末考査の答案に、「先生は外国と比べた日本の姿、日本の現状、私たちの将来の事などを話してくださり、色々な事を考えさせられました」と書いてくれた生徒がいた。

私は、授業の中で常に日本の社会について語り、「どんなに社会が変化し、価値観が多様化しても、その中で自分の意思を持ち、主体的に生きていくことが大切なんだ」と説いている。

学力低下が叫ばれて久しいが、ただ何となく学校にきて漠然と授業を受けているのでは学力が身につくはずはなく、私たち教師が生徒に「なぜ学ぶのか」を意識して授業実践を行わなければ学力向上には決してつながっていかないのである。

今後も、社会的な自立や考え方を養っていくために、キャリア教育の視点に立った教育活動を行っていきたい。

⇒ 「中学生作文コンクール」について詳しくは、こちら

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