vol.01 ついに相続税が改正、「裕福層の税」とは言えない時代へ 税理士法人TOTAL代表社員 沓掛 伸幸
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ようやく、平成25年度税制改正法案が可決成立しました。前政権時代は、税制改正大綱に基づく法案が成立しないこともありましたが、政権交代後初めての税制改正で、法案が順当に可決成立し、実務家としてはホッとしています。

さて、今回の注目は、何と言っても相続税関連の大幅な改正でしょう。特に基礎控除額の改正は、大きな影響があります。

近年、相続税は、死亡した方の約4%だけが対象となる『富裕層の税』となっていました。これは、90年代半ばに拡大された基礎控除額がそのまま据え置かれ、デフレ進行による不動産価格や株価の下落が考慮されないままだったからです。

今回の改正では、課税対象を1.5倍、すなわち死亡した方の4%から6%に引き上げるべく水準が決められたとのこと。ただし、これは全国平均の話であって首都圏などでは、改正により死亡した方の4人に1人程度は課税対象となるのでは?とも予想されています。

改正後の基礎控除額は、平成27年1月1日以降の相続から適用になりますが、例えば、死亡した方の法定相続人が、配偶者+子2人なら4,800万円。首都圏に持ち家とある程度の金融資産があればゆうに超えてしまう額です。

平成26年12月31日までの相続税の基礎控除額  5,000万円+1,000万円×法定相続人数
平成27年1月1日以降の相続税の基礎控除額   3,000万円+ 600万円×法定相続人数

もちろん、夫婦で居住している住居などには一定の特例が認められるため、今回の改正で納税する方が大幅に増えることはありません。ただし、特例を受ける場合には、相続税の申告が要件となるため手間が増えることは覚悟しなければならないでしょう。

なお、今回、生命保険金の非課税枠改正は見送られました。生命保険金の非課税枠は、相続人が取得した生命保険金について500万円×法定相続人数につき非課税とするものです。

この見送りは大きな意味があります。今回、基礎控除額は改正されています。これに生命保険金の非課税枠縮小も加わったら課税対象となる方は大幅に増加するでしょう。

具体例で見てみます。

●相続人が3人(同居の配偶者と独立している子2人)
相続財産:持ち家評価額3,000万円、預貯金1,500万円、生命保険金1,500万円の例

平成27年以降の制度では
基礎控除額4,800万円
生命保険金は全額非課税財産(500万円×法定相続人数3人=1,500万円)となり、相続財産は持ち家と預貯金を合わせて4,500万円
⇒基礎控除の枠内なので課税対象なし、申告不要。

もし、生命保険金の非課税枠が『500万円×同居相続人』に縮小されたとしたら
基礎控除額4,800万円
生命保険金のうち1,000万円は課税対象となり、相続財産は、4,500万円+1,000万円=5,500万円
⇒基礎控除を超えるので申告が必要、一定の場合は相続税発生

生命保険金の非課税枠は、意外にインパクトが大きいことがわかります。

生命保険金非課税枠の改正議論は、過去にも行われていますが、今回も見送りとなりました。平成23年度税制改正大綱では非課税枠の縮小が明記された一方で、平成25年度改正案検討の過程では、むしろ非課税枠拡大の意見も出されており、検討項目であることは変わらないようです。

そうはいっても、もし、縮小となれば、大衆課税となってしまう恐れもあります。遺族の生活資金という生命保険の趣旨からも、今後とも非課税枠の縮小だけは避けていただきたいものです。

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沓掛 伸幸(くつかけ のぶゆき)

沓掛 伸幸
(くつかけ のぶゆき)


税理士法人TOTAL代表社員(税理士・医業経営コンサルタント・CFP®) 一橋大卒、生命保険会社勤務を経て平成19年税理士法人TOTAL設立、平成24年より代表社員。税理士、司法書士、会計士、社会保険労務士等が属するTOTALにて、相続、医療機関向け、法人向けの三分野で税務、登記、労務等を融合させた総合サービスを展開。

 
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