vol.04 安心を買う、さまざまな『保険』 読売新聞東京本社生活部兼経済部記者 田渕 英治
文字サイズ変更 大 中 小閉じる

お金に関する記事を書くようになって、15年以上たちます。預貯金や投資、年金に税金、ローンだ相続だ……。保険についても、生損保から公的保険まで、原稿の量はかなりのものになると思います。ところで、この「保険」なるもの、他の金融商品やサービスにはない奥深さがあります。

「長期間固定型の住宅ローンの金利は、『保険』みたいなものですよ」。先日取材したファイナンシャルプランナー(FP)から、こんなコメントをもらいました。

家を買う時、よほどの大金持ちでもない限りお世話になるのが住宅ローン。大きく分けて、変動金利型と固定金利型の2種類あります。変動型は固定型より金利が低いのが一般的ですが、一方でその名の通り、市場金利の変化に応じて金利が上下します。その結果、月々の返済額が増えたり減ったりするわけです。

住宅ローンは20〜30年にわたって返していくものなので、返済額が変わると将来の見通しが立てにくい。でも、固定型、特に長期間固定型なら、一度決まった返済額は、市場金利に左右されず、長い間変わりません。

もちろん、金利がこの先どう動くかなんて神のみぞ知る話。金利がほとんど上がらないまま返済が終われば、変動型の方がお得になることも。それでも、返済額が変わらないという「安心」を買う意味が、固定型にはあります。高い金利は、いわばそのための安心料。そこで、先のFPは「保険」という言葉を使ったわけです。

運用の世界でも、「卵は一つのかごに盛るな」という格言があります。一つのかご(=銘柄)にまとめた結果、もしかごを落とす(=運用に失敗する)と、卵(=財産)が割れて全てを失ってしまうリスクがある。それを避けるには、投資先を分散せよ――との教えです。分散投資は手間がかかりますが、失敗を最小限に食い止めるという「安心」を手に入れるためには必要な作業です。この手間もまた「保険」といえるでしょう。

かように、生損保の保険商品以外でも、使い方によっては「保険」になる。他の金融商品にはないこの特徴に奥深さを感じるわけです。

金融商品以外にも、同じような意味で「保険」なる言葉は便利に使えます。例えば、こんな例を知りませんか。本命の彼氏がいるけれど、会えない時のため、食事をおごってほしい時のため、送り迎えをしてほしい時のために、別の男性をキープしている女性のことを。バブルにはこうした男性を「メッシー」「アッシー」なんて呼んでいました。

辞書によると、ある案がうまくいかなかった時のことを考えて、代案を用意するのを「保険をかける」というそうです。まさにこの女性は「保険をかけた」ことになります。男性にしてみれば、かけられたのは「保険」ではなくて「二股」ですが。

閉じる
田渕 英治(たぶち ひではる)

田渕 英治
(たぶち ひではる)


読売新聞東京本社生活部兼経済部記者。
1990年、読売新聞入社。秋田支局、週刊読売(後に読売ウイークリー)編集部、生活情報部、経済部などを経て、2012年11月から現職。主に朝刊「家計の知恵」面にて、金融商品やサービスに関する記事を取材・執筆する。
2003年、ファイナンシャルプランナー(CFP)取得。
著書に「定年@マネー」(生活情報部として)などがある。

 
発行/(公財)生命保険文化センター Web Design/Ideal Design Inc.