vol.05 シニア向け金融商品花盛りの裏事情 読売新聞東京本社生活部兼経済部記者 田渕 英治
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低金利のご時世にも、年1%前後の高金利の定期預金が意外とあるのをご存じでしょうか。知れば誰もが預けたくなるでしょうが、残念ながら、大半は「退職金特別プラン」などと銘打っています。退職金を預ける人、つまり定年を迎えた人に対象を限定しているのです。

家計に関する記事を長年書き続けていますが、こうしたシニア層やシルバー世代向けの金融商品やサービスが最近、目立ってきたと実感しています。

ほかの例では、ポイントカード。60代以降のシニア限定のカードを、大手スーパーが競うように発行しています。一般的なポイントカードよりもポイントを多くもらえたり、割り引きがあったりと、結構お得です。

保険にもシニア向けがあります。保険商品は通常、年を取るほど入りにくくなるものですが、「80歳でも『喜んで』入っていただけます」などとアピールしていたりします。

高齢社会とはいえ、この世代ばかりを優遇しすぎている気もします。でも、これはビジネスの世界であれば当然のことでしょう。彼らは「お金持ち」ですから。

日本の個人金融資産の総額は、ざっと1,500兆円。このうち6割を60代以上が持つとされています。若い世代から小金を集めるのに労力をかけるよりは、高齢者に照準を定める方が効率的といえるでしょう。

国も、高齢者にお金が偏在している状況は理解しており、それを利用するような仕掛けを考えています。その一つが、今年4月から始まった、教育資金の贈与に関する非課税制度。孫に教育資金を贈る場合、最大1,500万円まで贈与税を非課税とするものです。贈与のハードルを下げることで、お金の世代間移転を図るのが狙いです。

当欄の前の担当者、沓掛伸幸さんが以前にこの制度を紹介されていたので、重複は避けますが、先行して商品化した信託銀行の関係者によると、非常に好調だそうです。「近年になく、高齢者からの反響の強い商品。信託銀行の利用経験がない人からの問い合わせも多い」と、手応えにニンマリしていました。

これに味を占めたか、太陽光パネルの設置代金や出産・育児費用などを子や孫に贈与した場合も、贈与税を非課税にしてはどうかという議論が出ているようです。大したアイデアです。

子や孫のため、あるいは高金利に引かれて、思わず手を、いやお金を出す人もいるでしょう。ただ、注意点もあります。例えば高金利預金は、「年1%」とうたっていても、満期は3か月程度のことが多く、それ以降は通常の金利に戻ります。高金利は期間限定なのです。

教育資金も、無理にお金を出したために自分の老後資金が乏しくなっては本末転倒です。子どもの側も、親に過大な期待、無茶な要求はしない方が、円満な親子関係を維持するためにも大事でしょう。

それでも、親のすねをかじれるだけ儲けものです。私なんか、かじるどころか、逆に私の向こうずねを親に蹴飛ばされました。元気で結構なことですが、イテテテテ。

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田渕英治(たぶちひではる)

田渕 英治
(たぶち ひではる)


読売新聞東京本社生活部兼経済部記者。
1990年、読売新聞入社。秋田支局、週刊読売(後に読売ウイークリー)編集部、生活情報部、経済部などを経て、2012年11月から現職。主に朝刊「家計の知恵」面にて、金融商品やサービスに関する記事を取材・執筆する。
2003年、ファイナンシャルプランナー(CFP)取得。
著書に「定年@マネー」(生活情報部として)などがある。

 
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