vol.06 保険商品、新しかろう、良かろう? 読売新聞東京本社生活部兼経済部記者 田渕 英治
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最近、生命保険会社への取材が相次いでいます。医療保険などの新商品が続々発表されたためです。そのいくつかは、従来の商品よりも保障内容を充実させたにもかかわらず、保険料を引き下げるなど、新商品を競争力あるものに仕立てています。

例えば、ある外資系生保の新商品は、1泊2日のような短い入院期間の人でも一律5日分の入院給付金を支払うという、短期入院の人に手厚い保障が売りです。それでいて、保険料は既存商品より全ての年齢で引き下げた、といいます。ある国内生保も、がんや糖尿病などの生活習慣病に対する保障を充実させながら、保険料は従来商品より最大1割程度安くしたとのことです。

利用者には歓迎すべき動きでしょう。「安かろう、悪かろう」ではなく「安かろう、良かろう」という商品が増えてきたわけですから。ただ、「複雑な商品が増えて、比較が難しくなった」(業界関係者)と、気になる声も耳にしました。

ベーシックな医療保険では、入院した場合に1日につきいくら、手術を受けた場合に1回につきいくら、という形で定額の給付金が支払われます。細かい保障内容は各社で異なるのでまったく同一条件で比較するのは無理ですが、シンプルな保障内容であれば、入院給付金が1日いくら、1入院の支払い限度日数が何日か――といった条件で、おおよその保険料比較が可能でした。また、シンプルなだけあって、保障内容もわかりやすいものでした。

こうしたシンプル化がここ数年の保険業界の主流だったと思いますが、先の業界関係者のコメントからすると、この流れが変わりつつあるようです。

他社にない特徴を打ち出して差別化を図るのは、企業戦略として当然でしょう。ただ、商品が複雑化する動きが加速すると、保障内容や給付金の受け取り条件などで契約者が誤解しないか、気になります。

7〜8年前にあった、保険各社の保険金不払い・支払い漏れ問題。その元凶の一つが商品の多様化・複雑化にあったと、当時指摘されていました。複雑すぎるがゆえに、契約者はおろか、保険会社の担当者ですら支払うべきかどうかがわからなくなり、トラブルにつながったケースも見られたとされています。

保険は万一の時に頼りになる、ありがたいものですが、それも保障内容や保険料などが自分のニーズに合ってこそです。新しい商品だからといって、万人に向くわけではないのです。

自分に合うかどうかは、その保険をとことん理解しないといけません。約款などの書類を読み込み、疑問点は担当者にしつこく聞く。それでも理解できないなら、見送りましょう。保険に限らず、金融商品は目に見えず、触ることもできません。だからこそ、「よくわからないものには手を出さない」が鉄則です。

以上のお話、ご理解いただけましたか?わからないからと記者に手を出してはいけません。まして記事にダメを出すのはもってのほかです。何せ、ほめられて伸びるタイプですから。

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田渕英治(たぶちひではる)

田渕英治
(たぶちひではる)


読売新聞東京本社生活部兼経済部記者。
1990年、読売新聞入社。秋田支局、週刊読売(後に読売ウイークリー)編集部、生活情報部、経済部などを経て、2012年11月から現職。主に朝刊「家計の知恵」面にて、金融商品やサービスに関する記事を取材・執筆する。
2003年、ファイナンシャルプランナー(CFP)取得。
著書に「定年@マネー」(生活情報部として)などがある。

 
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