vol.07 ソーシャル・ビジネスとは 東京経済大学経営学部教授 小木紀親
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最近、ようやく時流にも乗れたのか、自身の研究テーマのひとつであるソーシャル・ビジネスに関わる講演をする機会が多くなった。聴衆の中には、ソーシャルメディアやSNS(ソーシャル・ネットワーキング・サービス)などの話だと勘違いして聞きに来る方も多い。

ソーシャル・ビジネスとは、社会的起業家が社会貢献を目指して立ち上げる組織・ビジネスを意味する。

講演後に「ブログ、Twitter、facebookなどの話が聞きたかったのですが・・」などと愚痴をこぼされると申し訳ない気持ちにもなるが、一方で、まだまだソーシャル・ビジネスは認知の途上にあるとも感じる。

しかしながら、具体的にソーシャル・ビジネスの事例をあげれば、すでに見聞きしたことがあったり、知らなかったとしても実状を知れば興味は持ってくれるはずである。なぜならば、われわれの生活や社会に密接に絡んでくるものだからである。

たとえば、ソーシャル・ビジネスを形態別に3つに分類しながら、いくつかの事例を挙げてみれば次のようになる。

(1)活動重複型
・フェアトレードカンパニーやマザーハウスによる途上国支援事業の展開
・かものはしプロジェクトによる児童買春撲滅と現地就労支援事業の展開
・フローレンスによる病児保育サポートシステムの展開
・カタリバによる大学生ボランティアを活用した中・高生の自立支援事業の展開 など

(2)活動分離型
・トヨタ自動車による国内外での植林事業や砂漠化防止事業の展開
・スワン(ヤマト運輸特例子会社)によるハンディキャップ支援事業の展開 など

(3)地域活性化型
・いろどりの高齢者による葉っぱビジネスの展開
・YOSAKOI ソーラン祭りなどの祭り・イベントの開催
・Nipponia Nipponによる地域ブランディング活動の展開
・銀座ミツバチプロジェクト等の都市と自然の共生を目指した事業展開 など

それぞれ興味深いのだが、とりわけ、近年では地域活性化にかかるソーシャル・ビジネスの展開が活発化している。たとえば、ここでは、地域活性化型のソーシャル・ビジネスとして、Nipponia Nipponと東京経済大学・小木ゼミとのコラボ企画であるWebサイト『国分寺物語』(http://kokubunjimonogatari.com/)を紹介してみたい。

『国分寺物語』は、Nipponia Nipponの「地域(故郷)から日本を元気にする」をスローガンに生まれた、地域コミュニティサイトである。その他にも、「鞆(とも)物語」、「会津物語」、「小豆島物語」などの姉妹サイトもある。

『国分寺物語』の良さは、様々な地域情報の紹介などにとどまらず、地域の魅力を当地の人々の暮らしや考え方を綴ることによって地域ブランディングを図るところにある。当然のことながら、地域を人で綴るという試みは、社会、経済、市場、環境など様々な暮らしに関わる「営み」を理解していくということにも繋がろう。

本サイトは、お金を稼ぐことに重きは置かずに、あらゆる手段で地域をいかに活性化させていくかに主眼が置かれており、ソーシャル・ビジネスとして新たな方向性を導き出すモデルとも言える。ちなみに、『国分寺物語』の企画・取材はすべて、東経大・小木ゼミの学生が手掛ける点も業界初の試みだということを付け加えておきたい。

ソーシャル・ビジネスの発展は市場や社会の成熟度を測る物差しのひとつと言えようが、わが国の今日的なソーシャル・ビジネスの成長が、社会全体を包み込む福音とならんことを願うばかりである。

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小木 紀親(おぎ のりちか)

小木 紀親
(おぎ のりちか)


1968年名古屋市生まれ。
慶應義塾大学大学院商学研究科修士課程修了、同博士課程単位取得。1997年松山大学経営学部専任講師・同助教授。2006年日本福祉大学福祉経営学部教授。2008年東京経済大学経営学部教授(現在に至る)。
専門は、マーケティング、医療・福祉・行政のマーケティング、ソーシャル・ビジネス。
現在、慶應義塾大学などでも講師を務める一方で、企業、行政、医療機関に対する研修・講演を行い、各戦略づくりにも参加。
主な著書に、『マーケティング・ストラテジー』(中央経済社、2000年)、『マーケティングEYE[第3版]』(中部経済新聞社、2010年)などがある。

 
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