vol.08 女子力の勢いに隠れたジレンマ 東京経済大学経営学部教授 小木紀親
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どの分野でも全般的に女性の活躍は目覚ましく、その勢いは拡大の一途にある。今年もそんなニュースが多くあったが、なかでも2013年3月卒業の大学生のうち女子学生の就職率が男子学生のそれを上回ったとの大々的なニュース報道は、まだ記憶に新しい。しかしながら、いつも学生と接している身の私にとってみれば、何をいまさらの観がある。

今年度で、大学で教鞭をとってからはや17年、つまりゼミもついに17期生を迎えることになった。毎年多くのゼミ応募者があるが、入ゼミ試験の際、特に意識しているわけではないのだが、蓋をあけてみると、圧倒的に女子学生を採用してしまっている。

女子学生の方が断然しっかりして見えてしまうのだ。それだけ男子学生の元気のなさが目に付いてしまうのだが、他大学に勤める先輩・後輩のマーケティング専攻のゼミでも同じ傾向にあるというのだから、ご時世的に、よほど女子学生のデキが良いのか、それとも男子学生がだらしないのか、なのであろう。

実際、ゼミ内での女子学生の働きはすばらしい。研究力や活動力があり、実に細やかな配慮と明朗さも兼ね備えており、さらには、おしゃれさや料理作りなどの、巷で言う、いわゆる「女子力」も非常に高いのである。

以前、大手銀行や大手生保など幾つかの会社の人事部の方に、採用したい女子学生像をお聞きしたところ、どの企業も「姉御肌の女性」とか「お母さんみたいな女子学生」といったようなコメントが返ってきた。一見、あいまいな答えにも感じるが、女子学生をいつも傍でみている私としては大きくうなずける話なのだ。というのも、就職活動を難なく突破しているのは、そのような女子学生だからである。

ただ問題がないわけでもない。たとえば、私のゼミの女子学生の場合、せっかく希望の職に就いたのに、5年内に結婚・出産でリタイアすることも多く、私からすれば、相方が仕事をやめた方が生活的にも楽なのではないかと思うような家庭もある。

そうした問題の中でも、特に注目したいのは、女性医師の数が増えていることに関わる件である。たまたま私の研究テーマのひとつが「医療機関におけるマーケティング研究」であることもあって、多くの医師や看護師と関わったり、他大学で医学部生を教えることもあるのでよく分かるのだが、ここ数年来、女性医師や女子医学生が急増している。

そのこと自体は全く問題ではないのだが、たとえば、女子医学生の中には「結婚したら正規の仕事をやめて、アルバイト医師で週1回だけ働きます」とか、「専門は○○科か○○科しか考えていません。だって辛い診療科はいやなので」などと簡単に口にする女子医学生が相当数いる(近代日本初の女性医師・荻野吟子がこれを聞いたら、どんな顔をするだろうか)。ここに勤務医不足の要因のひとつが見え隠れする。

講演や企業研修などで優秀な女子社員の役員への登用を声高に叫び、はたまた第一線で働いてきた母親を持つ私としては、「懸命に働いている医師のことを考えてみなさい」などと、女子医学生らに軽く説教をするのだが、今日的な生活・子育て等の支援体制を含めた社会の構図がそう言わしめているのだろうとも、よくよく考えさせられてしまう。

翻って、男子学生をみてみよう。
確かに、いわゆる誠実で頼もしい男子学生は全体的に減ったと思うが、わがゼミに厳選採用された男子学生はなかなかどうしてかなりたくましい。草食系男子ならぬ、肉食系女子なる言葉が出てきて久しいが、そんな言葉を吹き飛ばしてくれる元気さである。

そういえば、社会人になってグッと頼もしくなるのも、ゼミOBOG会を主催してくれるのも、毎年私の誕生日会を開いてくれるのも、卒業したOB(男子)らである。

女子の勢いが増している裏側で、いまだかつて経験したことのない社会的な状況(隠れたジレンマ)が生じているのも事実である。こうした状況を乗り越えていくことが現代社会の課題でもあるが、女子力の勢いに隠れたジレンマがあり、多くの男子に元気がないとすれば、デキる男性にとってはまさにチャンス到来ともいえる。少しばかり頑張れば、光って見えるはずだからである。

今まさに、その底力を見せる時がやってきた!
頑張れ、男性諸君!

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小木 紀親(おぎ のりちか)

小木 紀親
(おぎ のりちか)


1968年名古屋市生まれ。
慶應義塾大学大学院商学研究科修士課程修了、同博士課程単位取得。1997年松山大学経営学部専任講師・同助教授。2006年日本福祉大学福祉経営学部教授。2008年東京経済大学経営学部教授(現在に至る)。
専門は、マーケティング、医療・福祉・行政のマーケティング、ソーシャル・ビジネス。
現在、慶應義塾大学などでも講師を務める一方で、企業、行政、医療機関に対する研修・講演を行い、各戦略づくりにも参加。
主な著書に、『マーケティング・ストラテジー』(中央経済社、2000年)、『マーケティングEYE[第3版]』(中部経済新聞社、2010年)などがある。

 
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