vol.11 自分は本当に騙されない? 〜リスクを察知するには〜 台東区消費者相談コーナー 消費生活相談員 伊藤 伸子
文字サイズ変更 大 中 小閉じる

私の勤務する消費生活センターでは、老人会、福祉施設、学校などに出張して出前講座を開催し、活発なやり取りを行っています。

「事業者は、注文を受けていないのに“これから健康食品を送ります”と電話をかけてきます。注文していないと伝えると“間違えなく注文を受けた”と言い張り、さらには、“録音してある”とか“キャンセルはできない”など、強引な対応で高額な支払いを了解させます。これが手口です。電話があっても、慌てずに“契約はしていません”とだけ伝えましょう」と私。

「断っても送られてきてしまった時はどうしたらよいですか」
「家族が注文したと勘違いして受け取ってしまった場合の対処方法を教えて下さい」と受講者から手が挙がる。

昨年、高齢者をターゲットに、高額な健康食品の送り付け商法が激増し、数社の事業者が行政処分を受けました。上記は出前講座でその注意喚起をした時の様子です。ほとんどの受講者は、「自分は騙されない」「被害に遭わない」と漠然と思っています。

講座では「手口を知れば被害は防げる」をモットーに、できるだけ多くの最新の手口を紹介するよう心がけています。しかし、悪質な業者は社会のトレンドを上手に悪用し、複雑かつスピーディーに手口を変容させています。

ですから、「なんだか、変だ」「あやしい」と危険の匂いをかぎ分ける勘を養い、初めての手口に遭遇しても、悪質さや不自然さを見抜ける力を付けてもらうことが目標になります。

その前提として、まずは契約行為に関する基礎的な知識を身に付けていくことが大切です。正しい判断基準が身に付いていれば、そこから外れている取引に生じる違和感や不自然さを感じ取り、リスクを察知することができるようになります。

各地の消費生活センターはオンラインで結ばれ、蓄積された膨大な相談から、最新の手口を知ることができるトラブル最前線です。これらの情報をフルに活用し、チラシの配布、ホームページ等への掲載を通して地域への周知を行っています。

住民に素早く知らせるためには、前述の2つに軍配が上がりますが、どうしても一方通行のため、消費者の理解度は把握できません。その点、出前講座は双方向の対話が可能であり、受講者が何に不安を感じ、どのような事に困っているのか、ダイレクトに意見交換できるので高い効果が期待できます。同時に受講者の表情や態度から理解度もわかるので、私にとって一番手応えが感じられる啓発活動です。

消費者教育の更なる推進に向け、消費者教育推進法が制定されました。今後は、消費者に対しても、単に商品を「買う・買わない」を決定するだけではなく、自分がこの商品を買うことで、事業者あるいは市場にどのような影響を与えることになるのかを意識して行動することが求められています。

また、消費生活センターは、相談しやすい環境を一段と整え、知識を教える座学だけでなく、社会に役立つ力をも育てる講座を目指していきます。

これからも受講者に「役に立った」「また参加したい」と思ってもらえるような充実した講座の開催を考えていきます。皆様も機会があったら、ぜひ地域の消費者講座に足を運んでみてはいかがでしょうか。

閉じる
伊藤 伸子(いとう のぶこ)

伊藤 伸子
(いとう のぶこ)


消費生活アドバイザー、消費生活専門相談員、消費生活コンサルタント。
生命保険会社に勤務経験あり。
平成19年より台東区消費者相談コーナーに勤務。

 
発行/(公財)生命保険文化センターWeb Design/Ideal Design Inc.