vol.12 相談現場で培う斡旋技術〜納得してもらえる三者面談をめざして〜 台東区消費者相談コーナー 消費生活相談員 伊藤 伸子
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消費生活センターでは、消費者と事業者の間に入って電話による斡旋交渉で解決を図っています。事案によっては、電話交渉が硬直化し、これ以上の進展が望めない場合、相談者と事業者の両者にセンターに足を運んでもらい三者面談を行います。三者面談は、とりわけ、相談員の知識、経験、交渉力をフルに活用し、当事者の言い分を調整しながら粘り強く交渉するものです。

三者面談は、一同に会して契約経緯を確認していく中で、お互いの主張や認識の違いを明確にし、その上でどう和解するのか、歩みよりの余地はあるのか等、着地点をみつけることになります。

面談では、必ずしも全ての事実が判明しませんが、当事者に事実確認していくことで、欠けている事実を類推していきます。それは、まるでジグソーパズルのピースを埋めていく作業に似ています。

欠けた事実の類推から、相談者の主張の裏付けが明確になり、事業者にとっても歩みよりの判断材料の1つになり得ます。また、時には、「言った」「言わない」の言い争いや、双方がお互いの態度に興奮して冷静さを失う場面もしばしばです。できるだけその場で感情的なものは吐き出してもらい、事実を模索して理性的な解決を探ります。

また、ひと口に事業者と言っても、CSR意識の高い事業者ばかりではありません。モラル意識の欠如した事業者には、「御社の当たり前が、消費者の当たり前とは限らない」ことを説明し理解と今後の改善を求めます。中には、法律違反ギリギリで同様の苦情も多く、確信犯ではないかとさえ疑われる事業者もいますが、常識や該当する法律を駆使して説得を続け、落とし所をみつけます。

そして、双方の主張が言い尽くされた頃、タイミングを見計らって、納得のいくような和解案を提案していくことになります。双方に納得してもらえる内容になっているか、面談に満足してもらえたか、非常に神経を使っています。

このように、相談員の力量が問われる三者面談ですが、斡旋技術を向上させる魔法のマニュアルなどはありません。日々経験を積み、先輩から指導を受けつつ、体で覚えていくものだと思っています。

そのため、入所した消費生活センターの方針や考え方が色濃く反映されることになります。しかし、相談した消費生活センター、あるいは担当した相談員によって対応が大きく違うという事態はあってはなりません。

例えば、斡旋が必要とされる事案において、A相談員は斡旋してくれたのに、B相談員は助言だけで終わってしまったなど、解決内容に開きが出ないよう、職場やセンター間で情報や処理の共有が必要です。また、相談員は、公的機関、業界団体等が催す研修や自主勉強会に積極的に参加し、スキルアップの研鑽が欠かせません。

「身近な人のために役に立ちたい」という思いから消費生活相談員を志し、はや7年。「失敗しても強く非難されず、勉強になったね」と言ってくれる職場環境が、日々の自信につながっています。また、相談者から頼りにされ、感謝されるのは、素直に嬉しいことです。

当初の志を忘れずに、相談者には身に付けて欲しいこと、事業者には守って欲しいことを、相談現場から発信し続けていきたいと思います。

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伊藤 伸子(いとう のぶこ)

伊藤 伸子
(いとう のぶこ)


消費生活アドバイザー、消費生活専門相談員、消費生活コンサルタント。
生命保険会社に勤務経験あり。
平成19年より台東区消費者相談コーナーに勤務。

 
発行/(公財)生命保険文化センターWeb Design/Ideal Design Inc.