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ことばと消費者教育  〜清涼飲料水をポップで表現する〜
  web.05
(2013.8)
広島大学附属中・高等学校
日浦 美智代 先生
一ノ瀬 孝恵 先生

はじめに

中学校学習指導要領の改訂にあたり、具体的な改善の一つとして「中学校学習指導要領、技術・家庭」では、配慮する事項に、「各分野の指導に当たっては、衣食住やものづくりなどに関する実習等の結果を整理し考察する学習活動や、自分の生活における課題を解決するために言葉や図表、概念などを使用して考えたり、説明したりするなどの学習活動が充実するよう」求められている。

また、今回の改訂では中学校技術・家庭(家庭分野)「『D身近な消費生活と環境』においては、社会において主体的に生きる消費者としての教育を充実する視点から、消費者としての自覚や環境に配慮した生活の工夫などにかかわる学習について、中学生の消費生活の変化を踏まえた実践的な学習活動を重視して改善を図った。」(中学校学習指導要領解説技術・家庭科編)ことが示されている。

筆者は20年近く続けて清涼飲料水の糖度実験を取り入れた授業を行っている。しかし、理論的には清涼飲料水に含まれている糖分量の多さを理解しているものの、授業後の生徒の消費行動の改善がされていないことから、実践の定着の難しさを感じていた。

そこで、今年度、中学1年生の家庭科において、清涼飲料水のポップを考えさせることで、商品の品質を自ら判断できる能力の育成、消費行動の意識化、言語を豊かにし、論理的思考や生活の課題を解決する能力をはぐくむ視点を充実させる授業を試みた。

1.生徒の実態調査

授業は中学1年生1クラス38名(男子19名、女子19名)を対象とし、授業前にアンケート調査を実施した(アンケート実施日 2012年5月22日)。調査結果は次の図1〜図3に示した。

 

2.指導目標

(1) 清涼飲料水に含まれている糖度を測定し、飲み物に含まれている糖分量を知る。
(2) 自分の消費生活に関心を持ち、商品の適切な選択、購入及び活用ができる。
(3) 実験の結果を考察し、清涼飲料水の特徴をポップで表現する活動を通して、商品の原材料に関心を持ち、消費行動のあり方を考える。

3.指導計画

第1次 清涼飲料水の糖度実験 1時間  
第2次 清涼飲料水の原材料を調べる 1時間  
第3次 清涼飲料水の商品の特徴をポップで表現 1時間  
第4次 清涼飲料水のオリジナルポップを発表 1時間  
合計   4時間  

4.題目について

授業では第3次に清涼飲料水のイメージをポップで表現する活動を取り入れた。清涼飲料水はテレビCMではセールスポイントを巧みに表現することで、見た目で購入意欲をかきたてるものが少なくない。しかし、原材料、内容量についてはCMからは定量的、客観的には理解しにくい。

そこで、第1次として清涼飲料水の糖度実験を行い、第2次にその原材料について調べ学習を行い、原材料はどのような目的で含まれているのか学習した。ポップを作ることを体験することと清涼飲料水の原材料を学習することからイメージやポップに流されない消費行動を意識し、消費行動が簡単に揺れることを自覚させたい。

5.指導過程

学習内容 指導内容 ・ 学習活動 指導上の留意点・◎評価
<第1次>
清涼飲料水の糖度を知る
○清涼飲料水には糖度はどのくらい含まれているか関心を持つ。
○準備された清涼飲料水の糖度を予測する。
○清涼飲料水(ペットボトル1本)に含まれている砂糖の分量を知り、スティック砂糖の本数に換算する。
○同じ糖度の砂糖水を試飲する。
○同じ糖度の砂糖水に香料、酸味料、果汁を加え、果汁10%のオリジナルドリンクをつくる。
○清涼飲料水に含まれている原材料(香料、酸味料)や飲み物の温度、炭酸によって、味覚がごまかされていることを考える。
◎清涼飲料水に含まれている糖度はどのくらいあるか、原材料は何か関心を持つ。
◎清涼飲料水に含まれている糖度を測定し、飲み物に含まれている糖分量を知る。
・清涼飲料水を飲みすぎることの課題を考える。
・原材料に食品添加物が含まれているものがあることを知る。
<第2次>
清涼飲料水の原材料、商品の特徴を知る。
○清涼飲料水に含まれる原材料を詳しく調べる
 ・果糖ぶどう糖液糖、香料、酸味料、酸化防止剤
○清涼飲料水の製造方法、運搬方法、販売までの品質管理を知る。
○栄養表示から清涼飲料水に含まれている成分を知る。
○カロリーゼロ、糖質0gと表示されている清涼飲料水の甘味はどこからきているのか考え、糖質の代わりに食品添加物が含まれていることを知る。
○清涼飲料水の製造業者の環境への取り組みを知る。
・自分の消費生活に関心を持ち、商品の適切な選択にはどのような情報が必要か考える。
◎清涼飲料水の原材料、運搬、販売についての取り組み方法など商品に関する情報について調べることができる。
<第3次>
飲料水のポップを作ろう。
○ポップの表現にはどのようなものがあるだろうか。
○自分の好きな清涼飲料水を1つあげて、商品紹介をポップで表現することを知る。
○飲料水を効果的にPRするためのポップをつくる。
◎実験の結果および、調べて学習したことを考察し、清涼飲料水の特徴をポップで表現することができる。
・活動を通して、商品の原材料、製造工程、流通、消費、廃棄に関心を持ち、消費行動のあり方を考える。
<第4次>
ポップを発表しよう。
○4〜5人で商品ポップの発表を行う。 
 ・ポップにした理由、強調したいことについて話し合う。
○班の代表生徒がクラス全員へ発表する。
○代表者の発表を聴き、最も良いと思った作品を選び、その理由を考える。
○商品ポップと清涼飲料水の中身を検討し、ポップが消費者へ与えるイメージはどのような意味を持つのか考える。

○今後の自分自身の消費行動の在り方について考える。
◎商品ポップの発表を聞き、清涼飲料水のイメージと中身を検討し、イメージと中身が必ずしも一致しないことに気づく。

◎ポップ作り、発表を通してこれから豊かな生活を営むために必要な生活情報を理解している。

◎消費行動の在り方について考え、今後、何ができるか考えることができる。
【準備物】 清涼飲料水 糖度計 香料 着色料 クエン酸 砂糖 水 ペットボトル 色鉛筆 パーソナルコンピュータ 実物投影機

6.生徒が考えた清涼飲料水のポップ(一部抜粋)

炭酸飲料A
(糖度10%以上含まれている)
レモンライムの爽やかさ甘さ控えめ
熱いときにこれ一本
清涼感や爽快感が味わえる
キレがありリフレッシュできるような味
甘すぎず爽やかな味
すっきり爽快な味
すっきりリフレッシュ
あっさりおいしいリンゴの味わい
乳飲料 いちごのかおりとミルクのやわらかコンビ
みずみずしいいちごとミルクのコク
コクがあるのにすっきり
飽きない甘味
爽やかな飲みごこち
体の疲れをやわらげよう
夏にもぴったりピースボトル
からだに心にやさしく環境にもやさしく
ひと口飲めば体も心もサッパリ
あまーい天使のほほえみ
炭酸飲料B
(カロリー0表示)
糖質が0g おいしい
おいしく体にやさしい
すっきり甘さ さわやかな後味
紅茶飲料 とろけるひろがる ゆっくり午後のティータイム
爽やかな甘さ
濃厚でぜいたくなおいしさ
スポーツ飲料 水分補給にはこれだ 甘すぎないすっきりとしたあと味
汗をかいたらお飲みください
休憩にこれ一本

7.生徒の感想

・インターネットで調べるのに慣れていなくてだいぶ手間取ってしまった。ジュースを選ぶときは糖分や添加物に注意したいと思った。いろんな人のポップを聞いて楽しかった。 ・普段飲んでいるものの裏側を知ることができて良かった。 ・様々な飲み物のメリット、デメリットがわかって良かった。飲み過ぎには気をつけたい。 ・ポップのプリントがすごく上手でおいしさがよく伝わってきた。色々な飲み物の悪いところも知ることができて良かった。 ・発表する人の説明が良かった。色々な飲料に含まれている砂糖の量がわかった。 ・ジュースを飲むときには原材料名を確認することが大切であることがわかった。 ・発表した人たちのポスターがとてもきれいに仕上がっていた。何でかよくわからないけど発表を聞いてひかれた。飲んだことのないジュースをぜひ飲みたいなと思った。 ・ポップがとても良かった。おいしそうだった。ジュースにもメリットとデメリットがあることがわかった。糖分には気をつけたい。 ・ジュースはものすごく糖分が多いという危険性を知ることができてよかった!ポップを考えたりするのも楽しかった。

8.授業実践を終えて

糖度実験、調べ学習を通して、生徒は興味・関心をもって清涼飲料水の原材料を客観的に詳しく知ることができた。さらに、ポップを表現した商品PR紙面に企業の環境への取り組みや被災地支援活動の取り組みを表現していることから、調べ学習では清涼飲料水の原材料だけではなく、企業のさまざまな取り組みについて視点を発展させている生徒もいる。

生徒にとって身近な清涼飲料水が製造、流通、消費、廃棄される工程で環境へどのような負荷をかけているか、消費者として自分の生活を振り返り、持続可能な消費生活を自分自身がどのように作り上げていくかといったところまで考えが広げられるようになったと考える。

また、糖度10%を超える炭酸入りの清涼飲料に「サッパリ」「すっきり」「爽やか」ということばを多くの生徒がポップに取り入れた。作る側も選ぶ側もポップのことばとして生徒の関心が高かった。これらは特に炭酸飲料に多く用いられていたことから、ことばの使われ方は炭酸の印象、イメージから表現され、糖分の量に関係がない使われ方をしていることを生徒自身が自覚することができる授業となった。中身とは関係のないイメージであることがあること、甘さが炭酸、温度、レモンなどの酸味にごまかされている可能性があることを理解したようである。

授業の最後に第2次の調べ学習を振り返る中、我々の消費行動がCMで流されるイメージ、ポップで作り上げたイメージに揺さぶられていたことに気づき、ポップと清涼飲料水の中身が必ずしもあてはまらないことに気づき始めた。

ことばの使われ方は消費傾向をつかむものであろう。今回の授業は、「清涼飲料水の糖度実験」の授業を取り入れ、揺さぶりをかけることで、イメージに流されない、生活の多面的な面からのとらえ方を生徒にさせることを意図とした授業だった。自分自身の消費行動をどう考えさせるのか、生徒がどう揺れるのか、その揺れを自覚することが大切であろう。

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