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2013年度 夏季セミナー報告(授業実践報告【家庭科】/東京)
「経済的に自立した人となるために、今意識してほしいこと」
web.08
(2013.11)
東京都立武蔵丘高等学校 渡辺 真理子 先生


渡辺 真理子 先生

当生命保険文化センターと(社)日本損害保険協会の共催で、高等学校の先生や教育関係者の方を対象とした夏季セミナー「くらしとリスク管理」を東京・福岡・大阪の3カ所で行いました。前回から、セミナーの内容(「基調講演」、「授業実践報告(家庭科)」、「グループ形式による意見交換」)をご報告しています。

今回は東京会場の「授業実践報告」と「グループ形式による意見交換会」の内容をご報告します。

INDEX

 

1. 本校の紹介

東京都中野区にある本校は、進学に力を入れているほか、部活動推進、理数教育チャレンジ、スポーツ教育推進など、さまざまな取り組みを行っている中堅進学校です。東京23区ながら、緑豊かな環境にあり、生徒は素直でのんびりとしています。

家政系へは、毎年、保育に20名程度、栄養・調理に10名程度が進学しています。

家庭科で「保険」に時間を確保している数少ない学校の一つだと思いますので、授業のご参考になればと思っています。

 

2. 「家庭経済」を扱う時間

現在の3年生までは旧課程(家庭総合・3単位)、現2年生からは新課程(家庭基礎・2単位)になります。


<旧課程(家庭総合)の家庭経済>

<新課程(家庭基礎)の家庭経済>

旧課程(家庭総合)では、3年生の10時間で家庭経済を扱います。生命保険・損害保険で2時間、公的年金で2時間と、贅沢に使わせていただいています。

新課程(家庭基礎)では、ご存じのように、家庭経済の時間を十分に取ることができなくなりました。生命保険・損害保険で2時間ですが、ここに公的年金も含めて学習します。

今年6月、2年生のクラスで保険の授業を行ってみて感じたのは、3年生との反応の違いでした。社会に出たときのことを意識させやすい3年生と違い、2年生は、社会人としての自分を想像しにくく、保険を自分のこととして考えるのが難しいようです。

 

3. 「保険」授業の流れ

本校では、次のような流れで授業を行います。
(1)社会保険を知る
(2)生命保険を知る
(3)損害保険を知る

まず(1)「社会保険を知る」は、経済的に将来を見通す学習の一つとして、給与明細例を見せながら、差し引かれる税と社会保険の種類を確認します。そして、社会保険の種類と仕組みについて簡単に説明します。

生徒たちは、健康保険があることは知っていますが、負担率は知らないようです。
雇用保険は、まだ社会に出ていないこともあり、知らない生徒が多いようです。
介護保険は、2年生で一度やっているのですが、たいてい忘れているので再度確認します。
厚生年金は、詳しくは公的年金の時間にやりますので簡単に。また、健康保険と厚生年金は世界的にも素晴らしい保険であるというような話もします。

この他、住民税の話、各種手当は会社によって大きく異なるなどの話もします。

(2)「生命保険を知る」は、外部講師の方にお願いしています。

私は武蔵丘に赴任して7年目になりますが、外部講師依頼は前任の先生から引き継ぎました。最初は、経験したことのないフレッシュな授業に驚きました。

いつもの同じ先生ではなく、外から先生が来られること。詳しくわかりやすい資料がたくさんあること。生徒たちは、真剣に聴き入っていました。授業後の生徒アンケートからも、「保険の大事さがわかった」など、生徒たちがきちんと意識して学習できていることがわかりました。

(3)「損害保険を知る」は、日本損害保険協会のガイドとワークシートを利用して授業を行います。

次に、それぞれの授業について詳しくご紹介していきます。

 

4. 生命保険を知る(1時間)

生命保険文化センターの方に講師をお願いしています。 教材として、テキスト「生活とリスク管理」のほか、本校用に作成していただいたワークシートを使用し、次のような内容で進めています。

1. 保険の役割(テキストp.1〜4)
2. 保険の仕組み(テキストp.9〜10)
3. 保険と貯金の違い(テキストp.12)
4. ライフステージと保険(テキストp.15〜16)
テキスト「生活とリスク管理」(PDF)

せっかく専門機関の方に話していただくのですから、できるだけ具体例を多く盛り込んでもらうようにしています。
例えば、「ある家庭で45歳のお父さんが死亡し、45歳の専業主婦のお母さんと子ども2人(10歳と8歳)が残された場合、お母さんが80歳まで生きるとして、生涯かかるお金はいくらで、遺族年金がいくらだから、生命保険ではこれくらいの保障が必要」という事例。

また、「日本人は約90%が生命保険に入っていて、世帯の保険料は1年間で41.6万円、30年間では1,248万円も払っている。住宅の次に高い買い物だよね」という話題など。私も楽しく聞かせていただいています。 生徒たちは、新鮮な雰囲気の中、授業を真剣に聴いています。

けっこう難しい内容ながら、「わかりやすかった」という感想も多かったですし、何よりも、将来を考える時間ができたことが一番の収穫ではないかと考えています。

今は「保険なんて関係ない」という子もいますが、社会に出て保険に入ることを考えたときに思い出してもらえることが大切ではないかと思います。

また、テキストを配ると生徒は勝手に読んでくれます。読むだけでも保険の仕組みが一通り理解できるようになっているので、授業時間内にできないことがあったとしても、テキストで補うことができます。

外部講師をお願いする際のポイント

1年目は、講師の方によって講義内容が違うことに戸惑いました。そこで、こちらから「これだけは伝えたい」という内容を絞って依頼するようにしました。将来、保険について学習したことを思い出してもらうことを重視し、具体例を多くして印象的な授業になるようお願いしています。

保険は種類が多く、すべてを学習するのは無理です。それに、保険というのは人によって違うもの。自分に合った保険、その時々で必要な保険を選べることが大切であり、「これがいい」という正解はありません。

毎回、講師の方自身がどんな保険に加入されているかを尋ねるのですが、プロの方でも、入っている保険はいろいろです。「答え」は1つではなく、思い出してもらうことが大事。そう考えると、気が楽にもなります。

 

5. 損害保険を知る(1時間)

ガイド「そんぽのホント」とワークシートを使って、各ライフステージで必要な保険について公的保障も意識しながら学習します。

まず、私が作成したプリントを使い、「生命保険を知る」の授業を思い出しながら、(1)一人暮らしになったとき入りたい保険、(2)結婚または子どもを持つなど将来設計に合わせて入りたい保険にマルをつけさせます。

どんな保険に入りたいかを生徒に答えさせ、生徒が答えた保険を優先的に「そんぽのホント」を見ながら解説します。

生徒が答えなくても、一人暮らしでよく使う保険(海外旅行保険と火災保険)については必ず解説し、時間があれば地震保険や、3年生では生命保険ですが学資・子ども保険も取り上げます。

公的保障を振り返りながら考えさせるのがポイントです。多くの生徒は医療保険に入りたいと言いますが、国の健康保険でまかなえたり、高額療養費制度があることを知ると「そうか」となります。

また、「人は人、自分は自分」で、自分に合った保険に加入する大切さを伝えています。

自動車・自転車事故への備えについては必ず解説します。ただしタイミングは臨機応変に。最近の生徒は自動車を持つ感覚が薄れているのか、自動車保険に対する反応は鈍いようです。

ガイド「そんぽのホント」は、これまで何度かお願いし内容を更新していただいたもので、教員が使いやすい内容になっています。かわいいイラストも好評で、わかりやすく、生徒は気軽に各自で読み進めています。また、ワークシートは、クイズに答えながら損害保険のまとめができるものです。時間があるときはゆっくり取り組み、ないときは答えを掲示しておくなど、時間調整もできます。

生徒が考える保険

・将来の収入を考えず、たくさんの保険に入りたいと答える傾向があります。
・公的保障を考えていません。
・貯金をリスク回避手段として意識していません。
こうした傾向を意識しながら話を進めることがポイントとなります。

 

6. 新課程(家庭基礎)・家庭経済領域の授業を終えて

最後に、新課程になって変わったこと、感じたことについてお話しします。

新課程では時間が十分に取れず、社会保険については公的年金のみ取り上げ、公的年金を生命保険・損害保険に組み込んでいます。このため1時間に盛り込む内容が増え、講師の方に具体例を話していただく時間が少なくなりました。

公的年金の仕組みについては、『生活とリスク管理』の8ページに詳しく解説されています。障害年金・遺族年金についても載っているので、意識していない生徒にも気づかせることができます。

「私たちの将来は年金なんてもらえないんだから、二十歳になっても加入しない」と思っている子も多いので、年金は必ずもらえること、世の中には公的年金で生活している人がたくさんいることを確認し、手続きの大切さを改めて認識させています。

保険の授業は、社会に出たときに考える力を習得するためにあります。絶対的な時間の少なさに加え、学校により学習状況の違いや生徒の理解度の差など、悩みは尽きないと思いますが、私はやってきて良かったと感じています。全部やろうとしなくていいと思いますし、たとえ短時間でもいいので、保険を取り入れられてはいかがでしょうか。

 

「グループ形式による意見交換」の発表から【東京会場】

授業実践報告後、夏季セミナーにご参加いただいた先生方には、数グループに分かれていただき、授業での取り組み方法や課題などについて、自由に意見交換をしていただきました。

最後に渡辺先生からコメントをいただきました。

家庭科の授業に保険をどのように取り入れていくか?

・家庭科は個人の衣・食・住だけでなく「社会」を扱う教科の一つ。リスクに対しては、自分の生活を守ると同時に社会のみんなとリスクをシェアし合う、社会保障で補いきれない部分のために私的な保険があるというとらえ方をすると、生活設計の授業の中で保険を扱いやすくなるのではないか。 ・「備える」という考え方は大切だが、家庭科の範囲は広いのでそれに特化して時間を取ることができない場合は、たとえば高齢化・社会保障と絡めるなど、何かと絡めながら扱っていくのがよいのではないか。 ・契約、高齢化、生活設計、住居など、あらゆる分野で常に「保険や年金」の視点を取り入れることで、リスク管理が総合的に学べるのではないか。 ・いかに経済の分野を取り入れていくかが課題だが、経済の分野をうまく評価できるような教材やテストをどのように作るかがポイント。 ・低所得などにより親が年金や保険の発想を持っていない家庭の生徒には、まず生徒に保険のことを教え、子どもを通して家庭へリスク管理や保険について伝えていけたらと思う。

家庭科の授業に保険をどのように取り入れていくか?

・生活設計に対する生徒の考えにはリアリティーがないので、どのように実感させるかが課題。 ・商業科など就職がメインの学校では、「求人票」を使った授業が効果的。身近な現実の話は生徒もよく聴くし、身につきやすい。 ・「すごろくゲーム」を実践すると、人生において予期せぬ出来事やリスクが起こったときどうするのかを考えるのも面白いし、わかりやすい。 ・高校3年間にかかる授業料を計算。生徒から「親への感謝の気持ちが生まれた」「心に響いた」という感想があった。 ・生徒はお金に対し実感が乏しかったり軽く考えていたりする。自立に向けてという観点で取り組むと生徒の食いつきがよい。

渡辺先生のコメント

授業時間の少ないなか、すべての先生が生活設計を扱われていることに驚きました。保険を単独で扱うのは難しいこともあるでしょうから、何かと絡めるのは大賛成です。私は前任校が商業高校でしたので、よく求人票を使いました。生徒は熱心に聴きますし、そこに保険をうまく取り入れることができればすばらしいと思います。専門機関が作った教材など、詳しく解説された資料を上手に使うことも、効果的に伝えるための方法の一つです。

また、調べ学習や発表は、たとえ拙い内容であってもとても身になる学習方法だと思います。保険は種類も多く難しいので、私たち教員も、わからないことは生徒と一緒に調べてみようという目線でやってみてはと思います。

いろいろな状況があると思いますが、めげずにやることだと思います。このような機会から力をもらって、いい授業づくりに取り組んでいきたいと思います。

 

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