vol.02 「我が家の介護経験を通じて 〜介護保障について思うこと〜」生命保険文化センター・編集子(J)
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「家に帰ったら真っ暗で留守かと思ったら、お父さんが椅子に座ってじっとしていて…電気をつけたら血だらけでびっくり。転んだのを隠したかったのかな?」
これは、先に仕事を終えて帰宅していた妻から聞いた、ある夜の出来事です。

83歳になる同居の義父は、軽い認知症を患って3年が経ちます。
住み慣れた自宅から徒歩10分弱の飲食店へ1人で向かったまま迷子になる、といったこともありました。自宅の階段の昇降も一苦労で、足腰もだいぶ弱っています。

公的介護保険の利用を嫌がった義父は、見学して回ったデイサービス事業所のうちからお気に入りをやっと見つけ、今では週3回の通所を楽しみにしています。共働きのため義父を日中1人にしておくことに心が痛むのが和らぎ、家族としても嬉しく思っています。本人も以前より元気を取り戻したようで、通所はずっと続けたいと考えています。

この平成26年4月からは、介護サービスの公定価格(介護報酬)が小幅ですが改定、つまり値上げされました。
東京23区内・要介護1でデイサービスを利用する義父の場合、1か月(12回)当たりの介護報酬は、入浴介助の加算などを含めて約10万円です。1割負担なので自己負担額は1万円で、全額自己負担の昼食代と合わせて1.4万円が支払額です。年間17万円近くの負担がずっと続くことになります。

「要介護度がもっと重く、より多くの介護サービスを利用する家庭では、家計が大変だろう」、「年金暮らしの高齢者世帯の場合、負担感はどうだろう…」などと考えてしまうのは、私の職業病なのかもしれません。

ちなみに公的介護保険では、どれだけ在宅サービスを利用しても、介護報酬の1割負担で済むわけではありません。1か月あたりの支給限度額があり、その範囲内であれば保険運営元の市区町村が介護報酬の9割を負担する仕組みです。支給限度額を超えて利用した在宅サービスは、全額自己負担になります。

要介護度別の在宅サービス支給限度額 4月からは、介護報酬の改定にともない、支給限度額も見直されました。公的介護保険制度が始まった平成12年度以来、初のことです(右表)。

義父の場合、認知症の引き金になったのは脳梗塞です。脳梗塞の前には、50歳代から心筋梗塞や心不全などで何度か救急搬送され、毎回医師に「生きているのが不思議なくらいですよ」と言われる義父は、今でも定期的に2つの病院に通っています。心臓病関連や認知症の進行を和らげる薬、糖尿病薬などの服用も毎日欠かせません。

体力が衰えており、少々風邪を引いても「入院かな?」などと冷や冷やします。
そうした状況なので、医療費も今後かかり続けるだろうと覚悟しています。

我が家のことを通じて思うのは、介護の支出が生じるとき、医療費の支出も重なるケースが多分にあるだろう、ということです。保障の準備を考えるとき、介護保障だけ、医療保障だけというより、両方への経済的な備えができれば良いな、と思います。

公的介護保険による要介護・要支援の認定を受けた人は平成12年度に256万人で、平成26年1月時点では2.3倍の580万人ほどに増えています。1か月分約2,900円でスタートした公的介護保険の保険料(65歳以上の人の負担分、各市町村の基準額の平均)は現在5,000円ほどで、平成37年度には8,200円程度に上昇するという厚生労働省の試算もあります。それだけ介護の必要性が今後高まっていくといえます。

「原則、特別養護老人ホームに入所できるのは要介護3以上の人に限定」、「高所得者の自己負担割合を2割へ」など公的介護保険制度の改正案が議論されています。制度改正の行方もみながら、介護保障についてこれからも考えていきたいところです。

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