vol.08 相続税改正 増税に備える(2) 相続の現場から『最も重要な相続税対策』 税理士法人TOTAL代表社員 沓掛 伸幸
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改正された相続税のスタートが迫ってきました。増税に備えた節税手法の紹介も盛んです。ただ、それなりに資金の必要な手法も多く、すぐには取り組めないとお悩みの方々も多いと思います。

そんな中、今回は、相続の現場で痛感している最も重要な相続税対策をご紹介いたします。

相続税対策で最も重要なこと、それは、相続に際し、遺族(相続人)の間で争いが起きないようにすることです。遺族間での相続争いは、「かわいさ余って憎さ百倍」といった心情面でのデメリットが強調されることが多いですが、実は金銭面でも大きなデメリットがあります。

相続税の申告の期限は、故人が亡くなった日から10カ月です。それまでに、遺産を遺族がどう分割するかが決まっていないと、相続税を申告するうえでの様々な特典が利用できなくなってしまいます。

たとえば、配偶者控除。配偶者が相続した遺産が、遺産の2分の1か1億6千万円のどちらか多い金額以下なら配偶者は相続税がかからないという制度ですが、これが使えなくなります。
また、小規模宅地等の特例も使えません。小規模宅地等の特例は、自宅など一定の要件を満たす不動産について最大8割の評価減額を認め、相続税が軽減される制度です。

この2つは、相続税の申告でも、大半の方が利用する制度で、税額軽減の効果が大きいです。特に今回の改正で新たに相続税がかかるようになる方々のうちのほとんどは、この2つの制度を利用することにより、相続税額がゼロとなると思われるので、これが使えないのはとても厳しいです。

もちろん、救済措置もあります。3年以内に分割できれば、あらためて、配偶者控除や小規模宅地等の特例を適用して、相続税を再計算し、納めすぎの部分を返してもらうことができます(更正の請求)。
また、3年を経過しそうな場合でも、裁判の判決が出ていない等やむを得ない理由があるときは、さらにその期限を延長してもらうことができます。ただし、この延長の手続き期間はたった2カ月しかありません。

3年以内に何とか分割できればよいのですが、3年以内では話がまとまらず、期限延長のための書類の提出も失念すると、もはや相続税を返してもらうことはできません。書類の提出期限に遅れたら、それだけで税金を返してもらえないというリスクを負うことになるのです。

また、税金は、いったん全額を現金で納めなればならないので、そのお金も準備しなければなりません。納付の期限は、相続税の申告期限と同じく、故人がなくなった日から10カ月です。分割払いなどの制度もありますが、利子税と呼ばれる利息が年3%半ば〜6%程度かかりますので、負担は大きいです。

金銭的なデメリットも意外に大きい相続争い。危ないのは、自宅ぐらいしか遺産がない場合とか、親の面倒を見た子とノータッチの子がいる場合、生前の贈与で兄弟姉妹や孫の間でアンバランスがある場合などです。

『うちの家族は仲が良いから相続争いなんて心配ない』と高をくくるではなく、念を押すくらいがちょうどよいです。
まずは、親族間で相続について話し合ってみてはいかがでしょうか?

プロフィール
沓掛 伸幸(くつかけ のぶゆき)

沓掛 伸幸 (くつかけ のぶゆき)

税理士法人TOTAL代表社員(税理士・医業経営コンサルタント・CFP®) 一橋大卒、生命保険会社勤務を経て平成19年税理士法人TOTAL設立、平成24年より代表社員。税理士、司法書士、会計士、社会保険労務士等が属するTOTALにて、相続、医療機関向け、法人向けの三分野で税務、登記、労務等を融合させた総合サービスを展開。

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