vol.11 公的年金の受給額、新時代へ 〜年金の価値が目減りする新時代の幕開け〜 生命保険文化センター 編集子(J)
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老齢年金を受給している父は、公的年金について「金額が少ない」というのが口癖です。

自営業時代に営む小さな商店の切り盛りに奔走した時期があり、受給中の国民年金の老齢基礎年金は保険料を40年間支払った人の満額を下回ります。
そんな父が、上機嫌で「4月から年金額が増えるらしい」と喜んでいます。1月30日、厚生労働省は平成27年度の年金額の改定率を発表しました。父は、国民年金からの老齢基礎年金が、今年度よりも0.9%増えるというニュースに接したようです。

公的年金の年金額は、毎年度見直されます。年金収入で暮らす人の生活を守るために、年金の価値を維持する大切なルールです。
平成26年の物価は2.7%のアップです。老齢基礎年金が増えるのは平成11年度以来16年ぶりのことですが、伸び率0.9%は物価上昇率に届きません。
父に話すと、「年金が増えるとはいえ、物価ほどには上がらないなんて…」と落胆の様子です。


国民年金の年金種類


同時に父は、「なぜだろう?」と疑問を抱きました。
平成27年4月からは、物価や賃金の上昇率よりも年金額の伸びが抑えられる新たな調整のしくみが始まります。マクロ経済スライドという調整です。

平成27年度の年金額は、物価上昇率2.7%、賃金上昇率2.3%のうち低い方の2.3%をもとに、過去の物価下落時に年金額を据え置いたことで本来の年金水準よりも高くなっている分の調整、さらにこの新たな調整をした結果です。
老齢基礎年金でいえば、40年間国民年金保険料を納付した人の満額は平成26年度に772,800円(月額64,400円)、平成27年度は780,100円(月額65,008円)です。

本来の年金水準よりも高い分の調整(=特例水準の解消) ・これまで物価の下落時に年金額を下げずに据え置くことによって生じた特例水準と本来の年金水準との差が2.5%分あり、国民年金では段階的な減額調整の結果、残りはあと0.5%分です(平成25・26年度に各1%調整ずみです)。平成27年度の0.5%分の調整(抑制)により、本来の年金水準と、特例水準との差が解消されます。 ・厚生年金の場合、昭和11年度以前生まれでは国民年金と同様に特例水準と本来水準の差は0.5%(年金の伸び率は「0.9%」)で、同12年度生まれの本来水準との差は残り0.1%(年金の伸び率は「1.3%」)、同13年度以降生まれでは特例水準は解消ずみです(年金の伸び率は「1.4%」)。

この新たな調整はどのようなしくみなのでしょうか?
公的年金の加入者数の減少(保険料収入が減る原因)と平均余命の伸び(年金支給額の増加の原因)をもとにした調整率を設け、いうなれば年金制度の運営に影響する少子高齢化の進行を年金額に反映させるしくみです。年金財政の安定が見込めるまで、この調整がされることになっています。

実は、この調整は平成16年の年金制度改正によって導入が決まっていました。ただし、開始時期は過去の物価下落時に年金額を据え置いたことで本来の年金水準よりも高くなっている分の調整後(特例水準の解消後)とされていました。
11年間の時を経て特例水準が解消され、ついに平成27年度からスタートとなります。物価や賃金の上昇率ほどには年金額が上がらない時代の幕開けです。

「何か難しいなぁ。でも、年金が今後増えにくくなるのは確かだね」と話す父。
年金を受給中の人はもちろん、将来の年金受給者にとっても、年金は老後生活資金の大きな柱であることには変わりありません。生活設計上、物価や賃金より年金額の伸びが鈍ることも頭の片隅に置いた方がよさそうです。
「金額が少ない」という父の口癖も、パワーアップしそうな今日この頃です。

< マクロ経済スライドによる年金額の調整 > ・物価や賃金の変動率がマイナスのときは、マクロ経済スライドによる調整はされません(物価・賃金の変動率だけが年金額に反映されて減ります)。 ・物価や賃金の伸び率が低い年度もマクロ経済スライドを行いますが、前年度の年金額と同水準になるまでの調整(物価・賃金の変動率の範囲内)にとどめ、年金額が前年度よりもマイナスとなる調整はされません。 ・以上の調整のしくみは平成27年2月現在の制度によるものです。現在、物価や賃金が下がるなどした場合の調整のしくみを変更する議論がされています。

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