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チャレンジスクールでの消費者教育の実践について
web.05
(2014.8)
東京都立桐ヶ丘高等学校 原 久美子 先生
 

1. はじめに

本校は、東京都で初めて作られたチャレンジスクールである。チャレンジスクールとは、小・中学校での不登校や高校での中途退学を経験した生徒など、これまで能力や適性を十分に生かしきれなかった生徒が、自分の目標を見つけ、それに向かってチャレンジする学校である。

必修の家庭基礎が2年次で設定されているが、単位を修得できない生徒は次の年以降にも履修・修得しなければ卒業できない。授業は体験重視の内容が多く、家庭科の授業でも手や体を動かして実際に体験する学習を多く取り入れている。

小中学校に不登校を経験している者もいるため、小中学校の家庭科を学習していない生徒もおり、その経験や勉強の不足を補うために、授業内容は基礎・基本を重視した学習を行うとともに、優しい言葉を選びながら行うことを日々心がけている。

生徒によって能力に大きく差があるため、公益財団法人消費者教育支援センター(NICE)発行の「悪質商法対策ゲーム」を本校生徒向けに「悪質商法ゲーム」とし、興味を引く話題やわかりやすい言葉にして作り変えた。

ライフステージを反映した悪質商法対策ゲームを用いて、消費者、特に若者が巻き込まれやすい悪質商法・契約トラブルを知り、その特徴や問題点に気づくことや、悪質商法に対する消費者の基本的な対処・対策である未成年契約、クーリング・オフ制度、消費生活センターの役割を知り、今後の契約やトラブル防止に役立てることを目的とした。

グループで活動をし、発言したり他人の意見を聞いたりすることで、互いに学びあう姿勢を育てる。グループで協力することにより、自分の考えをまとめるなど、プリントの記入が苦手な生徒が、他人の意見を聞いてまとめ、グループ内での言語活動を活発にすることが本授業のねらいである。

 

2. 授業の位置づけ

◇対象学年 2〜4年
◇対象科目 家庭基礎(2単位)
◇使用教科書 東京書籍「家庭基礎 自立・共生・創造」
 

3. 事前アンケートの結果

事前のアンケートでは、生徒のほとんどはお小遣いをもらっている生徒で、その半分は必要な時に必要なお金をもらって生活しているという生徒だった。

アルバイトをしている生徒は、30人中5人だったが、中には月5万円以上収入がある生徒もいた。しかしそのアルバイト代の使い道については、生活費として家に入れている生徒もおり、アルバイトの収入があるから裕福な生活を送っているというわけではない。

生活に困窮している生徒や、そうではない生徒までおり、金銭感覚がだいぶ違うことがアンケートから読み取れた。
今まで特に騙されたことがなく、たぶんこれからも騙されないだろうという考えの生徒が大多数だったことに一番驚いた。そして、悪質商法をよく知らなくても、「自分は大丈夫」と安易に考えている生徒が多いことが気がかりだった。

ひょっとすると今までもどこかで騙されているのに、気づいていない生徒もいるのでは?とアンケートの結果を見てとても不安になった。アンケートでは、自分の行動パターンを「人の話をすぐ信じる」という項目に○をつけている生徒が多く、人とかかわることの経験不足から、将来、簡単に嘘の情報を信じてしまうことになるのではないかということを危惧した。

 

4. 授業展開例

本校では2コマ連続の授業のため、2コマ分の指導案を作成した。
悪質商法ゲーム・ワークシート(PDF)
悪質商法ゲーム・ワークシート・模範解答(PDF)

  学習の内容 指導上の留意点 準備物等
導入
10分
・本時の学習課題を確認する。
・消費者、特に若者が契約・金銭に関してトラブル・被害に遭っている現状を把握する。
・本時の学習課題を端的につかませるため、リーフレットを配布し、被害事例を提示する。
・リーフレットの配布
 
展開
30分
・悪質商法ゲームを使って、悪質商法の事例と消費者の対処・対策について学習をする。
<グループ活動>
・ゲーム教材の趣旨とルールを簡単に説明する。クイズを実施した場合は、ポイントを加算するように告げる。ゲームは机上に準備しておく。
・ゲーム開始後はグループをまわり、生徒の質問に応える。
・ゲームのポイントに関心を奪われないように、事例に着目させる。
 
休憩
5分
 
展開
35分
・ゲームを振り返って気づいたことや意見・感想などをグループで討議し、ワークシートにまとめる。
・意見の発表
・ワークシートにまとめることで、悪質商法の特徴や問題点を把握させる。
・ワークシートの配布
・ゲームから学んだこと、生徒の気づきや振り返りを積極的に取り上げる。
プリント記入
まとめ
10分
・ゲーム教材を通して知った様々な商法の特徴や消費者の基本的な対策・対処(権利)について確認する。
・次回について
・ゲームではわからなかったこと、悪質商法の補足説明や消費者としての基本的な対策・対処について生徒と確認しあう。 プリントのまとめ・反省
 

5. 生徒からの感想(一部)

●先生が言っていた「自分だけは大丈夫と思ったら騙されるよ」っていうのが、印象に残った。だからオレオレ詐欺が減らないの? ●騙されないようにしようと考えてばかりいたが、普通に生きていても家や車や入院費や、いろいろお金がかかってしまう。保険に入っておくのはいざというときのために必要だと思った。 ●生きていくのはお金がかかる。今から節約と貯金をする習慣を身に着ける。 ●将来自立して一人暮らしをしたいと思っていたので、この勉強はとても役立った。 ●お金に関する話は難しいと思って全部親にやってもらっているけど、いつかは自分でもできるようにならないといけないのだなあと思いました。 ●字がいっぱいで難しい字が読めないけど、契約書は大事だなって思う。 ●携帯に届く迷惑メールは読まずに削除する。無視する。 ●口約束でも契約になることがわかった。軽い気持ちで契約しない。

 

6. まとめ(終わりに)

ほとんどの生徒は、ゲームを中心とした授業に真剣に取り組んだ。基本的にコミュニケーションを苦手とする生徒が多い学校ではあるが、この授業を実践したクラスの時間はいつもと比べると会話も盛り上がっていた。

生徒は授業の振り返りの中で、「困ったら相談する」ということを書いている生徒が多かった。契約に慣れていないからこそ困ったらすぐに誰かに相談したり、自分だけで抱え込まないという手段があることに気付けたりしたようである。

この学習を通して、困ったときには相談して誰かと繋がるという方法を身に着け、社会から孤立することが無いように生きて欲しいと思う。

生徒の中には、最後まで「お金の話は難しい」「自分には関係ない」と考えている生徒がいた。また、ゲームは楽しむことができたが授業の本質を掴めない生徒も数名いた。点数の簡単な計算が苦手で、友達に協力してもらいながらゲームをする生徒もいた。

基礎学力や考える力をつけ、卒業までの様々な学習活動の中で契約や悪質商法だけでなく、年金や税金、卒業後の進路や将来についても関心を持って考えさせていきたい。

 

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