vol.06 2015.09 一般家庭でも起こり得る相続争い〜円満相続に向けて、生命保険の活用を考える〜 保険・福祉介護ジャーナリスト 鬼塚 眞子
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2015年1月1日から相続税の基礎控除額が引き下げられた。これにより、財務省(平成22年12月7日税制調査会報告資料より抜粋)は、実際に課税される件数が改正前の4.2%から6%程度に増えると予想している。ところで、相続対策の有効な手段の一つに生命保険の活用がある。以下に活用例や注意点を紹介していこう。

40%減額となった基礎控除額
相続税の基礎控除額の引き下げにより、例えば、法定相続人が妻と子供2人の場合、2014年12月までは基礎控除額8,000万円(定額控除額5,000万円+比例控除額[1,000万円×法定相続人の数])であったが、2015年1月以降は4,800万円(定額控除額3,000万円+比例控除額[600万円×法定相続人の数])で、40%減額となった。

改正前と改正後の基礎控除額

「我が家には関係ない」と思う人も多いようだが、見過ごすことのできない世の中の動きがある。『土地価格の上昇』だ。

国土交通省が3月に公表した公示地価をみると、東京・名古屋・大阪の三大都市圏平均は、住宅地・商業地ともに2年連続で上昇した。特に東京23区の住宅地は全区で2年連続上昇している。三大都市圏でみても住宅地の半数程度の地点が上昇している。2020年の東京オリンピック開催を控え、都内や大都市圏の不動産価格は微増ながらも上昇するという報道もよく目にする。
ちなみに、最も上昇率が高かった商業地は北陸新幹線で注目された金沢駅周辺であった。広島駅前も土地区画整理により住宅地、商業地ともに上昇率が高くなっている。

仮に大都市圏の不動産価格が今後も上昇曲線を描くとすれば、基礎控除額の引き下げと相まって、これまで相続税の対象外だった人も相続税が課税されるようになるかもしれない。

相続税の申告手続きは、相続の開始があったことを知った日の翌日から10カ月以内と明確に期限が定められている。相続開始後に相続税が課税されることを知り、慌てることのないよう、事前に専門家に土地の評価額や相続税が課税されるかどうか相談することをお勧めしたい。

また、「以前、確認したから」と安心する人もいるが、意外と忘れがちなのがライフプランの見直しだ。「e−ライフプランニング()」のようなシミュレーションツールを活用して、定期的にチェックすることが重要だ。
相続は誰の身にも降りかかる。個人だけでなく、自社株の評価が変動しがちな経営者も含め、ライフプランを定期的に見直すことが、不可欠と言えるかもしれない。

相続が“争族”にならないために
相続税に関するトラブルは資産家だけとは限らない。
裁判所へ実際に調停・審判が持ち込まれた「遺産分割事件の総件数」を見ると、平成25年度は1万2,263件と1万件を超えた。遺産価額別の件数では、5,000万円以下の事件件数は全体の約75%を占めている(最高裁判所:平成25年度 司法統計年報)。
つまり、一般の家庭でも裁判・調停に発展してしまう可能性があることを示唆している。
私見だが、一般の家庭は「主な財産は自宅だけだし、家族の仲はいいから」と思い込み、事前に何の対策も取らなかったことに原因があるのかもしれない。

特に複数の子供がいた場合、実家を子供の1人が相続したのはいいが、他の子供に相続させる財産や現預金がなく、「“遺留分”(民法で定められている一定の相続 人が最低限相続できる財産のこと)を侵害された」とトラブルに発展する例は、よく耳にする。

保険の活用は、相続税の納税資金の確保だけではなく、こうしたケースのように特定の相続人が実家を相続した“代償”として、他の相続人に相続分に見合う“代償金”を支払うための“代償分割資金の確保”という目的で活用できることはご存じだろうか?

さらに、生前、親(被相続人)が相続人である子供や孫に生命保険料相当額を贈与し、親を被保険者とする保険に加入するなど、保険を有効に活用することができる。相続より贈与の方が財産を活かせる場合もある。
ただし、生命保険は契約形態によって税金が異なるため、いずれのケースであっても税金の確認は必要である。

また、法的に有効な遺言であっても、税理士に相談していなかったために、納税資金が確保できていなかった等のケースも起こっている。

保険加入を検討する場合でも、弁護士、税理士といった専門家との相談を忘れないことが、“円満相続”を迎えるコツかもしれない。

「e−ライフプランニング」は生命保険文化センターが作成した生活設計シミュレーションツールです。 あなた自身のライフプランを考えるために、 ぜひお役立てください(公益財団法人 生命保険文化センター)。

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プロフィール鬼塚 眞子(おにつか しんこ)

鬼塚 眞子 (おにつか しんこ)

大手生保の営業、業界紙の記者を経て、07年に保険・福祉介護ジャーナリストとして独立。シングルマザーとして二人の子供を育てるほか、認知症の両親の遠距離介護を続けている。近著に「保険選びは本当にカン違いだらけ」(SB新書)。

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