vol.09 2015.12 “将来への思い”が培う、“現在”の生活を見る視点 大東文化大学 非常勤講師 藤田 由紀子
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1. 今のつらい努力を意味づけてくれる、将来への思い

サッカーが、スキーが、料理が上手になりたい、もっといい俳句をよんでみたい等々。そのような思いは、間違いなく“将来への思い”である。その思いがあるからこそ、実現できないときには悔しく、歯がゆい思いもする。いや、むしろその方が多いのかもしれない。しかし、その思いは確かに努力や練習といったつらい事柄の必要性を感じさせ、その意味づけをしてくれる。

さて、前回は2012年の生命保険文化センター「生活設計に関する調査」から、結婚や出産、子供の教育や独立等のライフイベントが将来イメージをもつきっかけとなっている一方、未達成のライフイベントが多い若い世代ほど将来をイメージする期間が短いこと、また、2〜3割の人が「全く将来のイメージをもっていない」と回答していることをみた。

もちろん、将来イメージは、あくまでも“イメージ”である。それがないからといって目標や夢がないとは言えないし、そのイメージがむしろネガティブで八方塞がりで不安に満ちたもの、という場合もあるだろう。しかし、それでもやはり、将来イメージを持つことによって、何がしかの道標や、今の生活にフィードバックする何かを見いだすことがあるのではなかろうか。そのような思いで、改めてこの「生活設計に関する調査」をみてみよう。

将来イメージの有無・長さ×家計把握および資産形成行動

2. 将来イメージと、現在の生活を把握し、コントロールしていく姿勢の関係

上の図は、将来をイメージしている期間ごとに、家計状況の把握や資産形成を行っている割合を示したものである。これを眺めてみると、興味深いことに、イメージする将来の期間が長くなるほど、「自分の預貯金を把握している」「目標を持って資産形成をしている」などの割合は増えていく。

そして「将来をまったくイメージしていない」人は、わずか1年、あるいは2〜3年でも将来イメージをもっている人に比べて、これらの他の「カードの使用額をチェックしている」「毎月だいたいの予算をたてている」など、家計破綻を防ぐ項目でも回答割合が低いのである。つまり、将来イメージは、資産形成や貯蓄などの“将来”に向けての準備ばかりでなく、“現在”の家計の状況の把握や、破綻しないようにコントロールする行動にも関係しているようなのだ。

“将来への思いが、つらい練習に意味づけしてくれる”と前述したが、すなわち、将来へのイメージをもつことは、現在の生活を、たとえ部分的にでも把握し、コントロールしていくような視点や姿勢、あるいは、イメージする将来につながる行動を選択し意味づける視点・姿勢を培う、という面があるのではなかろうか。

であるならば、ふとした折ごとに、漠然とでも「将来のなりたい自分/なりたくない自分」を思い描いてみるのも一計ではなかろうか。たとえそれが実現できなくても、それは大した問題ではない。将来を思い描く、そのことだけで十分に意義深いことだと思うのである。

あなた自身のライフプランを考えるために、生命保険文化センターが作成した生活設計シミュレーションツール「e−ライフプランニング」を、 ぜひご活用ください(公益財団法人 生命保険文化センター)。

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プロフィール藤田 由紀子(ふじた ゆきこ)

藤田 由紀子 (ふじた ゆきこ)

1989年3月奈良女子大学修士課程修了。1989年から2002年まで生命保険文化センタ-研究室に研究員、後に主任研究員として勤務。様々な調査や共同研究のうち、主に家計の分析や、女性のライフスタイルとともに変化した家族の分析、生活設計論の再構築を担当した。現在は、大東文化大学で、非常勤講師として、結婚と家族、家族の視点からみた社会保障制度についての講義を担当している。娘が一人。夫と、やんちゃなポメラニアンとスピッツのミックス犬と同居。

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