vol.11 2016.02 支出リスクにも収入リスクにもなる「自分や家族の病気」 大東文化大学 非常勤講師 藤田 由紀子
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主要な支出リスク要因としての「自分や家族の病気」

言うまでもないが、お金は大切な生活資源である。日々の生活を充実させ、将来の目標を実現するために、できるだけ自分や家族の望むもの、為になることに使いたいと思うのだが、なかなかそうはいかない。しかも時折、思いもかけなかった出来事に多額の支出を余儀なくされ、生活を見直す必要に迫られることがある。それを「支出リスク」と呼ぼう。

生命保険文化センターの「生活設計に関する調査」でも、「生活に大きな影響を与えるほどの多額の支出をいちどきにしなくてはならなかった経験」、すなわち支出リスクの経験は、全体で約3割の人が「あり」と回答している。 その内訳を図1に示したが、その事由として最も多いものが「自分や家族の病気」であり、それは最も深刻な出来事としても一番多かった。

【図1】生活に影響があった多額の支出経験のできごと(多額の支出経験あり、と回答した人のうち)

そして、「自分や家族の病気」で多額の支出を要した人は、それによって「日常生活費に支障がでた」「ローンの返済が滞った」と回答した割合が、他の「予期しない家の修理・補修」や「家族の死亡」などのケースに比べて高かった。特に「ローンの返済が滞った」ということは、家計に対する影響が長期間に及ぶケースがあることを想像させる。

支出リスクと収入リスク、いずれにも関係する「自分や家族の病気」

【図2】「自分や家族の病気」で多額の支出を要した経験のある人のうち、「収入リスク」を経験した人の割合

それを裏付けるものが、図2である。これは、「自分や家族の病気」を理由として「生活に大きな影響を与えるほどの多額の支出」を経験した人97人をピックアップして、その人たちのこれまでの収入リスク、すなわち「自分や家族の収入が途絶えたり、大幅に減少して生活に影響が出た」経験の有無をみたものである。

図2の結果は、全体サンプルの結果である「収入途絶経験あり: 6.1%」「大幅減少経験あり: 14.3%」に比べてかなり高い数字を示している。そして、収入の途絶経験も大幅減少経験も、いずれもその約半分は「働き手の病気」を事由とした収入リスクであった。

つまり、「自分や家族の病気」によって多額の支出を余儀なくされる一方で、同時に、同じ理由により収入が途絶えたり、大きく減少している家計が少なくないことを示しているのである。自分や家族の病気は、家計にとって身体的、精神的ダメージはいうに及ばず、収入と支出に同時にダメージを与える可能性のあるリスクであり、対処の難しいリスクであることをうかがわせる。

リスクマネジメントとしての相談できる専門家、知識のある知人とのネットワークの確認

公的医療保険制度には、支出面では高額療養費制度、雇用者であれば収入面では健康保険制度による傷病手当金がある。それらでカバーされる部分も大きいが、先進医療などの自費診療を選択せざるを得ない場合もある。また、自営業者など国民健康保険の加入者は傷病手当金の対象外となる。

昨今は生命保険でも医療保障への関心が高まっているが、治療も制度も変更が相次ぎ、常に知識を蓄え、更新しておくこともなかなか難しい。ではどうすればよいのか。

「家族の病気、ケガ」の支出リスク、収入リスク、それぞれの側面に対する公的・私的保険制度、サポート制度について、相談できる専門家、詳しい知識を持っている知人などのネットワークを確認・確保しておくことも、重要なリスクマネジメントのひとつではなかろうか。もちろんそのネットワークの構築は、生活資源の構築でもある。

あなた自身のライフプランを考えるために、生命保険文化センターが作成した生活設計シミュレーションツール「e−ライフプランニング」を、 ぜひご活用ください(公益財団法人 生命保険文化センター)。

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プロフィール藤田 由紀子(ふじた ゆきこ)

藤田 由紀子 (ふじた ゆきこ)

1989年3月奈良女子大学修士課程修了。1989年から2002年まで生命保険文化センタ-研究室に研究員、後に主任研究員として勤務。様々な調査や共同研究のうち、主に家計の分析や、女性のライフスタイルとともに変化した家族の分析、生活設計論の再構築を担当した。現在は、大東文化大学で、非常勤講師として、結婚と家族、家族の視点からみた社会保障制度についての講義を担当している。娘が一人。夫と、やんちゃなポメラニアンとスピッツのミックス犬と同居。

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