vol.12 2016.03 “今”を大切にする思考のスキルとしての生活設計 大東文化大学 非常勤講師 藤田 由紀子
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“将来”の視点を“今”に入れる思考

よく知られているダイエットの手法のひとつに、毎回の食事を記録するというものがある。何を食べたのかを振り返って記録するだけだが効果があるらしい。記録が習慣になることで、次第に食べた“後”ではなく、食べている“その時”、あるいは“その前”に、自分の食事を客観視し、ダイエットという目標を呼び起こして食欲をコントロールすることができるようになるという。これは一種の思考のスキルを利用したものといえる。

これと全く同じとは言えないが、生活設計も思考のスキルのひとつであると思っている。“将来”を意識することによって、“現在”の生活の中に“将来”へつながる意識を潜りこませる。それによって、何も意識していない時に比べて僅かずつでも望む将来につながる行動をおこさせる。もちろん、意識したからといって、必ず夢が叶うわけではないし、日々の努力を吹き飛ばしてしまうような環境変化やリスクに直面するかもしれない。しかしそれでも、日々の行動の積み重ねの先にある将来は変わってくるはずである。

第3回で紹介した、“将来”を意識している人は、意識していない人に比べて“現在”の家計状況を把握したり、資産形成を行っている割合が高いという生命保険文化センターの調査結果も、将来への視座が現在の生活に影響を与える例といえる。もちろん影響は経済的な行動だけではない。着々と自分の夢を広げてそれを実現している人、健康でいたいという思いから食生活や運動に気を配っている人等もその例といえる。

“今”の選択を考える勇気ときっかけ

ただ、将来への視座をもつことは、“優しい”ことばかりではなく、簡単でもない。目指したい夢や目標がみえない時期もあるし、考えたくないこともある。考えたとしても、“やりたいこと”と多くの“やらなくてはならないこと”の狭間で、人生の残された時間や日々の時間、限られたお金、能力などの様々な制約や種々のリスクを直視せざるをえず、自分が望ましいと思う選択ができない場合もある。

しかし、たとえ意識していなくても、そのような種々の制約のなかで、様々な選択肢を取捨選択している結果が“今”であり、ひいてはその先に“将来”がある。であるなら、少しでも制約条件の中での最適な“今”の選択を増やしたいものだ。そのような“今”を大切にする日々の選択の先に、ひょっこりと見えてくる夢や目標もある。

“今”と“将来”を考える思考はまさに生活設計のエッセンスといえるが、問題はそのようなことを考えるきっかけや、それらを考える僅かな勇気かもしれない。

繰り返すが、生活設計は思考のスキルである。スキルであるからには訓練によって上達するものであり、一度ではなく、何回も繰り返し行う機会とちょっとしたガイドが助けになる(その機会やガイドを洗練させていくのも生活設計に関わる者の役割であろう)。

第1回で述べたが、生活設計には3つの領域があると考えている。
(1) 自分や家族の大切にしたいこと、望む将来や生活課題等について考える領域
(2) 時間やお金、人間関係や能力などの生活資源を考える領域
(3) 種々のリスクとその対処を考える領域
これらは常に同時に、しかも詳細に考えるべきというものではない。その時々にフォーカスする事柄があってよいし、まずは自分の考えやすい事柄から始めればよいのである。

将来は“今”の積み重ねの先にしかやってこないのであるから、いかに大切に“今”を生きていくか、それを考えるための思考の枠組みとしての意義が生活設計にはあると思う。

あなた自身のライフプランを考えるために、生命保険文化センターが作成した生活設計シミュレーションツール「e−ライフプランニング」を、 ぜひご活用ください(公益財団法人 生命保険文化センター)。

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プロフィール藤田 由紀子(ふじた ゆきこ)

藤田 由紀子 (ふじた ゆきこ)

1989年3月奈良女子大学修士課程修了。1989年から2002年まで生命保険文化センタ-研究室に研究員、後に主任研究員として勤務。様々な調査や共同研究のうち、主に家計の分析や、女性のライフスタイルとともに変化した家族の分析、生活設計論の再構築を担当した。現在は、大東文化大学で、非常勤講師として、結婚と家族、家族の視点からみた社会保障制度についての講義を担当している。娘が一人。夫と、やんちゃなポメラニアンとスピッツのミックス犬と同居。

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