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「平等」と「公平」の違いから法の下の平等を考える
web.01
(2015.4)
東京都立府中東高等学校 社会科(公民科) 塙 枝里子 先生
 

1.はじめに

基本的人権は生徒が社会生活を営む上で大変身近な存在であるが、その権利については言葉のままに捉えていると本質が見えづらい。本実践は、このような問題意識から、「平等」と「公平」の違いを知り、法の下の平等(憲法第14条)を考察することを目的としている。

「なぜ、累進課税制度があるのか?」、「なぜ、大人の運賃と子どもの運賃は違うのか?」、「なぜ、生活保護は存在するのか?」など身近な例を取り上げ、実は形式的な平等が必ずしも公平とはいえないばかりか、形式的に平等として扱うことが、かえって不合理な差別を生み出してしまうことがある。

平等権の知識・理解だけでなく、政治・経済の諸課題や時事問題(本稿では「マタハラ訴訟」)をフレキシブルに取り入れ、自らが主体的に思考・判断・表現することを目指した授業を、ここに報告させていただきたい。
※なお、本実践は経済分野を学んだ後に政治分野を学習する際に取り組んだものである。

 

2.授業の位置づけとねらい

◇対象学年: 高校3年生
◇対象科目: 政治・経済
◇授業のねらい: ・ホールケーキのワークから平等と公平の違いを知り、既習事項である経済分野と関連させながら、日本国憲法第14条の「法の下の平等」について考察する。 ・日本における性別差別撤廃の背景や経緯を理解する。 ・「マタハラ訴訟」に興味・関心を持ち、社会の構成員が多様であればあるほど、法の下の平等を真に実現するのが困難であることを理解する。
 

3.授業展開

時間 具体的な学習活動 指導上の留意点・配慮事項
導入   ○本時は「法の下の平等」を考えることを知る ○パワーポイントに提示された図の意味を考える ○あいさつ、出席確認 ○プリントを配布 ●図(平等と公平の違いを表したもの)を提示し、生徒の興味・関心を引く。ここでは、すぐに答えを示さず、授業に戻る
【ワーク1】「あなたはどのようなときに人間が不平等であると思いますか」に回答する
  ●日常の不平等を考察させる
展開1 ○日本国憲法第14条に「平等権」が規定されていることを確認する  
【ワーク2】ホールケーキを3人平等になるように分配する方法とその理由を考える
●ここでは、ケーキを単純に三等分することが予想される。しかし、以降の展開を考慮し、授業者が「柔軟に頭を使ってみよう」、「A、Bくんはゲストであるので優遇されるべきか」などと発言し、多様な意見が出るよう配慮する
○平等には形式的平等と実質的平等の2種類があり、実質的平等が公平の概念に近いことを理解する。そのうえで、形式的な平等が必ずしも公平とはいえないことに気付く ●この際、税制度、社会保障などすでに学習した経済分野の話と関連付けさせる
展開2 ○性別の差別に着目し、法の下の平等を考察する  
【ワーク4】現在、性別差別はあると思いますか?
  ●数名を指名する。ここでは、女性、男性それぞれの差別の例がでるようにする
・性別差別撤廃の動きについて、概要を理解する ○2014年10月23日に最高裁判決がでた「マタハラ訴訟」について、経緯と判決内容、それに対する世論を知る   ●世論では、「マタハラ」訴訟の判決に対する賛成、反対意見を提示し、思考が偏らないよう配慮する ●「マタハラ訴訟」以外にも、【ワーク4】での生徒の考察や、授業者の具体的な体験談などを交え、生徒の興味・関心を促す
まとめ ○最初の絵は、平等と公平を表していたことを知る ○最後に今日の授業の感想をまとめる ●社会の構成員が多様であればあるほど、真の平等、公平が難しいことに気付かせる
 

4.おわりに

「真に平等を実現することって実は難しい」、「公平かどうかは立場によって変わる」、「一人の幸せだけ考えていたら社会は幸せになれない」、「初めて平等と公平の違いを知った」など生徒からはさまざまな反応がみられた。

確かに、構成員が多様な社会において、すべての人が公平である社会の実現は難しい。しかし、だからこそ、これから社会に旅立つ生徒一人ひとりが当事者意識を持ってこの課題に立ち向かう必要がある。

生徒はこのような「正解がない」問いに対して、自らの考えを持って「思考する」力は極めて低く、明確な正解を求めてしまう傾向がある。しかし、社会科は「正解がない」問いに対して主体的に問題意識、当事者意識を持ち、自らの思考プロセスを育む教科でもある。社会参画の意識をさらに高め、多面的・多角的なものの見方ができるような授業を今後も続けていきたい。

 

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