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社会保障制度の充実 〜「社会保障」と私たちの人生〜
web.06
(2015.9)
東京都立蒲田高等学校 浅川 貴広 先生
 

1.はじめに

人生は“順風満帆”とは限らず、けがをしたり失業をしたり等の様々なリスクがある。

人生におけるリスクを考えさせながら、社会保障制度を学習していく。卒業後に就職をする生徒が多いために、困難な事態が起こった際にはどのような制度があり、どのように助けてくれるのかを理解させるかが重要である。

また、日本は現在、少子高齢化が進んでおり、社会保障費の増大が問題となっている。このように日本社会が変わる中で、社会保障制度はどのような在り方が望ましいのか、“私たち自身の課題”として考えていくように意識づけを行いたい。

そして、社会保障制度の授業の最後は「年金」について学習する。年金に関して、生徒からよく聞かれる質問は、「将来、年金ってもらえるの?」ということである。世間では年金に対するネガティブなイメージが広がっているが、生徒には「年金」に関する正しい知識を身につけてもらいたい。

 

2.授業の位置づけと学習のねらい

◇対象学年 高校3年生
◇対象科目 公民科政治経済
◇使用教材 厚生労働省作成副教材
・DVD「社会保障って、なに?」 ・ ワークシート「身近な社会保障を学んでいく」(PDF) ・ワークシート「社会保障の理念やあり方を考える」(PDF) ・「10個の「10分間講座」」(PDF) オリジナル教材
・「映像教材用ワークシート」 ・「年金人生ゲーム」
◇授業のねらい (1)「社会保障」とは何かというテーマをもとに、社会保障の理念を学び、社会保障制度に対する意欲・関心を高める。 (2)社会保障制度と私たちの人生の結びつきを学ばせた上で、社会保障制度の概要、財源や仕組み、日本の現状を学ばせる。 (3)日本の年金制度の概要について学ぶとともに、その利点と今後の課題について学び、社会保障制度の学習のまとめを行う。
 

3.授業展開(3時間)

【1限目】

時間 学習活動 指導上の留意点・配慮事項
導入
(15分)
「社会保障」を学ぶ上での導入を行う。
・人生には病気になることや、将来介護が必要となる可能性があるなど、リスクがあり、いつまでも順風満帆ではないことを生徒に説明する。 ・ワークシート「身近な社会保障を学んでいく」に記入をしながら学習させる。その際に、実際の求人票を見ながら記入させる。 ・家計の基本的なやりくりを考えさせたうえで、想定外のリスクに遭遇した場合にどうするかを考えさせ、発表させる。
「社会保障」の学習を開始するに際しての意識づけを行う。
本論
(35分)
映像教材を視聴させる。
・映像教材を基に作成した、ワークシートを記入しながら、生徒に興味を持たせ、問題喚起を行う。映像も途中で一時停止して、解説を入れる。 また、ワークシートの最後には、「映像教材」を視聴した後の「社会保障」に対する意識をまとめさせる。
今回の3時間の授業の最初と最後での、社会保障に対する意識の変化を見るため、ワークシートでまとめさせる。

【2限目】

時間 学習活動 指導上の留意点・配慮事項
導入
(3分)
前回の復習
・社会保障に関するクイズを出題して、前回の授業で視聴したDVDのおさらいを行う。
 
本論
(10分)
私たちの人生と、社会保障がどのように関係しているのかを学習させる。
・ワークシート「身近な社会保障を学んでいく」を用いて、私たちの人生と社会保障がどのように関わっているのかをまとめさせる。 ・【こども期】【青年後(労働期間)】【老年期(退職後)】それぞれの段階でどのようなリスクがあるのかを考えていく。 ・そのリスクに対して社会保障によりどのような備えが用意されているのかをワークシートに記入して学習させる。それにより、一生涯にわたって社会保障が関わっていることを理解させる。
人生における様々なリスクを認識させることで、社会保障が生まれた背景を理解させる。
本論
(12分)
社会保障制度の在り方や、その財源などについて学習させる。
・ワークシート「社会保障の理念やあり方を考える」を記入しながら社会保障について学習させる。 ・「市場」「家庭」「政府」の3つの関わりあいから、市場経済と社会保障制度の所得の再分配機能を学習させる。 ・ワークシート「社会保障の理念やあり方を考える」を使い、望ましいと考える社会保障制度について考えさせる。その後、黒板に貼った座標にシールを張らせ、何故そう考えたのかを発表させる。
 
本論
(23分)
社会保障制度の概要をまとめ、その仕組みや財源などについて学ぶ。
・ワークシート「社会保障の理念やあり方を考える」を使い、国によって社会保障制度の在り方に違いがあることを学習させる。 その際、以下のことを重点的に理解させる。 ・日本は高齢化が世界でも最高水準となっている一方で、低負担ながら、様々な社会保障制度が整っている。 ・スウェーデンとアメリカの対比から、社会の仕組みが社会保障制度にも影響を及ぼしていることを考えさせる。 ・上記を学習した上で、どの国の形が良いのかをグループで話し合い発表させる。
社会保障全体の枠組みを意識できるように指導する。
本論
(10分)
本時の授業を振り返る。  

【3限目】

時間 学習活動 指導上の留意点・配慮事項
導入
(5分)
前2回の授業の復習
・社会保障制度は人生のリスクを補うもの ・所得の再分配機能 ・社会保障制度はだれが担うかによって異なり、長所と短所があること。
 
本論
(35分)
年金制度の仕組みと、日本の年金制度の現状、課題を学習させる。 ・「10個の「10分間講座」」 を使い、年金に対する理解を深めさせる。 ・ワークシート「身近な社会保障を学んでいく」を使い、年金にはどのような種類があるのかを学習させる。 ・年金人生ゲームを通して、貯蓄と年金の違いについて理解させる。 その際、以下のことを重点的に理解させる。 ・日本の年金制度は、物価の変動や老後の生活などの点から、個人の貯蓄よりも優れている。 ・日本の年金制度の維持には、少子高齢化など様々な課題があり、現在、そのための対策が進められている。 ・年金人生ゲームでは、社会保障制度があるグループとないグループに分け、社会保障制度によるリスクの回避を実感して学習させる。 ・ワークシート「身近な社会保障を学んでいく」を使い、貯蓄にはない年金保険の安心感を学習させる。 日本の年金制度について、メリット(利点)と課題の両面を理解させる。
本論
(10分)
社会保障制度のまとめ
・社会保障制度に対する考えが、学習活動を通じてどのように変化したかまとめさせる。
1時間目との変化を読み取らせる。
本論
(10分)
本時の授業を振り返る。  
 

4.本指導案実践の結果

生徒の取り組みの様子や、本指導案による授業を経ての様子は以下の通りである。

(1)映像視聴、ワークシートやそれに対するグループワークにより、生徒は集中力を切らさずに学習していた。「ゲーム、クイズを交えた授業がとてもよかったです」「動くものや、実際にやってみたりするので楽しかった」という意見が見られ、興味を持ち続けて学習を行えたことが伺える。 (2)オリジナル教材「年金人生ゲーム」を通して、年金のメリットをゲーム感覚で楽しく学習できた。学習後に、「将来は年金がもらえなくなる」「未納者が多いから、自分も払わない」などの世の中に流れている噂についてもその実態を学習させた。
それにより、「年金の事を聞いて、将来もらえないかと不安だったけど、ちょっと安心した」「年金の大切さを知った」「社会保険料、年金をしっかり払おうと思った」という意見が多く見られ、理解の向上が見られた。
(3)3回の授業のまとめとして、生徒に「授業の感想や、授業を受ける前と後で変化したこと、今後に生かしていきたい事」を書かせたところ、生徒も自分の考え方をしっかりと記述しており、関心度や理解度の高さが伺えた。  

5.まとめ

今回の授業では、社会保障とは、人生の様々なリスクに対応するための制度であること、「共助」の考え方が生かされていることを学習した。視聴覚教材やグループワーク、考えを発表させる等の言語活動の導入を行ったことで、生徒が集中力を保ちながら学習できたことが効果的であったと思われる。

年金や社会保障に関しては、少子高齢化などの将来へのネガティブなイメージが先行し、時に根拠に乏しい悲観論が広がる傾向にあるが、生徒たちはあくまでも冷静に現状を見つめる必要があり、「情報」だけに惑わされることなく、「真実」を見る目を養うことが大切である。

その点、授業後に「年金の事を聞いて、将来もらえないかと不安だったけど、ちょっと安心した」「年金の大切さを知った」「社会保険料、年金をしっかり払おうと思った」という意見が多く出た。このことから生徒が一定の理解をしたことが伺える。

高齢化が進むことによる社会保障関係費の増加は、日本の未来にとって大きな課題である。日本には、どのような社会保障制度の在り方が良いのか、そのためには今後何が必要なのか、これから社会に出ていく生徒にも関わる重要な課題である。他人事ではなく自分の課題として、考えてさせていきたい。

しかし、難しい社会保障の内容を、生徒が自発的に学習していくことは困難である。老後の事もまだイメージを持ちづらいことが現実である。
いかに生徒に分かりやすく、自身にとって必要な制度であることを学ばせていくかが重要であると考える。

 

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