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家庭科授業実践 金融教育を取り入れる試み
web.07
(2015.10)
東京都立農業高等学校 三野 直子 先生
 

1.はじめに

家庭科が平成6年度から男女必履修になり、今年は平成27年度、すでに20年が経過しました。
それでも、未だに家庭科は調理・被服という方が多いのは事実です。当初は4単位実施校が多かったですが、今は2単位の家庭基礎が多いです。昨年から家庭基礎で授業を展開していますが、とにかく何を押さえるか内容の取捨選択が強いられるという感があります。

そんな中、金融教育は必要であるということが教育現場で多々聞こえてきます。お金を語ることは卑しいというのが昔はあったようなと、思うことがありますが、お金を知ることは重要だと思っています。

ただし、「楽をしてお金を儲ける」ことを推奨する訳ではないというところに線引きは必要と考えています。職業に貴賤なし、自分で汗を流し、稼いだお金こそ価値があるお金(PCに向かい巨額の富を得ている人がいてもごく一部で全体から見たら亜流ではないでしょうか、また宝くじ高額当選者に破産者が多いという事実!お金を持ちすぎるとお金に支配される、人ではなくお金に人が集まる等々いろいろお金にまつわる話は事欠きません)。だからこそ、価値のあるお金の使い方を学んでほしいと思っています。食生活なら、「お茶を買うより牛乳や100%果汁ジュース」とか。

現行の学習指導要領、第9節家庭、第2家庭総合、2内容、(5)生涯の生活設計、ア生活資源とその活用「生活の営みに必要な金銭、生活時間などの生活資源についての理解を深め、有効に活用することの重要性について認識させる」とあります。

お金はないよりあった方が良い、誰でも分かること、そのお金で家計を運営することには工夫が必要・お金に流通貨幣ではない付加価値をもたらすにはどうすればいいか。家庭科は特に教える人の実体験が授業に反映されやすいので自分の意見は意見として、正解がないのが家庭科のよさでもあるので自分はどうしたいのか、何ができるのかを学んでほしいと常々思っています。

 

2.金銭教育を取り入れる分野

「家庭基礎」では、2単位という制約からこの金銭教育をどこで取り入れるかは重要なポイントになります。最近、老後破産が話題になっていますが、その背景に少し触れたいと思います。

最近の調査では家計簿をつけている層は半分以下です。親が家計簿をつけていなければ、その子どもが小遣い帳をつけることは望めません。大多数の家庭では、家計簿をつけなくとも家計が回っているからその必要性がないと思われます。しかし、老後破産が起きる要因に日本人の貯蓄率低下や現役時代と同じ金銭の使い方などが破産につながるのではと考えています(貯蓄率低下は高齢者が貯金の切崩しをしているのも要因ですが)。

家計を家族の変容(成長)と同時に診断する必要性をどこかで教える(知っている)必要を感じます。
今の高校生はアルバイトで社会人より多くの小遣いを得て、使っています。欲しいものを買いたいときに買う。お金の使い方は知っていてもその運用は知らないし、親がアルバイト代を管理している生徒は皆無だと思います。貯金を貯めるには、給料から初めに一定の金額を貯金に回さない限り、余った分を貯金にでは貯まらないことは常識です。貯金も借金も給料の1割が原則です。

教科書では、「家計を管理する」の「2 家計の仕組みと管理」の中で発展課題「あなたは何にお金をかける?」に金銭教育があります。しかしながら、家計の仕組みは家計簿の書き方的な内容のため、生徒に自分のこととして金銭教育を投影出来ません。

そこで、自分のこととして考えさせるために生命保険文化センターが作成した家庭科教材キットにあるワークシート「あなたの身のまわりにかかっている金額を計算してみよう」で家庭科のオリエンテーション(導入)に使う指導案を示します。

 

◇指導案1
⇒ 生命保険文化センター ワークシート「あなたの身のまわりにかかっている金額を計算してみよう」(PDF)

生徒の学習活動 教師の指導・工夫 備考
・高校入学に際し、かかったお金を知る。 ・高校の学費を知らせ、それ以外に揃えた物品を聞きながら、自分にかかっている費用を書き出し、計算させる。 ワークシート配布
・家計の仕組みを知る。 ・家計を支えている人は誰で、お金を管理するのは、なぜ必要なのかを考えさせる。 ・自分自身にかかる教育費を幼稚園から高校まで、更に上級学校への進学にはどの位必要かを知らせる。 ・金銭教育の面では、上級学校進学は人生の中での初めての高額購入になることに気付かせる。だからこそ、慎重に考慮し、実行する必要性を知らせる。  
展開事例…「あなたの身のまわりにかかっている金額を計算してみよう」のワークシートからの発展
「家計」から家庭経済と国民経済分野へ
「ひとり暮らしの生活費」から住居費を取り出し、住生活分野へ
「家計運営は誰がする」から家族分野へ
 

概略は、高校入学の学費はどの位だったかを質問し、そのお金を工面した人は誰で、どのように支払ったかに気付かせます。更に、このワークシートに記入させ、自分にかかっている費用計算へと発展させます。

この先からは先生方の授業計画へと進めば良いと思いますが、消費経済の場合は「家計の仕組み」を学び、「ひとり暮らし」がキーワードであれば、ひとり暮らしの生活費から、住居費を取り出し、住生活分野へと入ることが出来ます。

学費では、公立でも私学でも税金が使われていることも合わせて教えたい内容です。お金の話には税金も同様に扱う必要があります。得てして税金は取られるという意識がありますが、自分たちの納税したお金がどのように使われているのかに関心を持つことに意義はあります。

そこで、指導案2は、社会保障の学習から≪「社会の一員として生きていくこと」とは≫という厚生労働省の作成したワークシートを使用しながら、給料での生活費割り振りと税金について同時に考えさせる内容になっています。この内容は平成24年7月に発表した内容ですが、どのように展開していくかを示してみたいと思います。

キーワードは「自立に向けて・・お金編」から卒業後のお金の経済についての学習です。
社会保障制度を税金(社会保険料)の側から見つめ、国の制度が私たちの生活をどのような形で支えているかを考えながら、理解を深める授業展開で、日頃、健康で何不自由なく過ごしていることが当たり前だと思いがちですが、ひとたび何か起これば、それを解決する手立てを知っていて、実行できる知識と行動力が求められるものです。

社会保障の年金制度はどうなるのかの議論が多いですが、国の政策であり、「財源無くして社会保障なし」。年金を掛けた分だけ貰うのではなく、安心と保障を得るという相互扶助の発想も大事と考えます。長生きをすれば、貯金は尽く。年金は死ぬまで続くと。

◇指導案2
⇒ 厚生労働省 ワークシート「社会の一員として生きていくこと」(PDF)

生徒の学習活動 教師の指導・工夫 備考
・家庭経営での社会保障について確認する。 ・自立をテーマに人生における社会保障について考える。 ・今の社会保障が出来た経緯を考える。
・社会保障が人生において私たちのリスク回避をしていることを知らせる。
1900年代の会話から社会保障の役割を確認する。
ワークシート配布
・社会人になったら得る給料から家計を考える。 ・家計費の中で何を優先させるかを記入しながら考える。 ・同時に生活者の立場で生活するにはいろいろ考えて生きることの必要性を知らせる。 ・社会保障に支払う金額を知る。 ・人の一生における社会保障。 ・赤字にならないよう大雑把に計算をしながら合計金額を出すようにする。 ・記入が終わったら、結果のまとめをさせる。 ・可処分所得・税金・社会保険料を確認させる。

・社会保障の理念:相互の支え合いで成立する年金について考えさせる。
 
展開事例…「社会の一員として生きていくこととは」のワークシートからの発展
「給料」から家庭経済と国民経済分野へ
「給料」から社会保障の分野へ(更に介護など高齢者福祉へ)
「自立」から働くことにつなげ、家事労働と職業労働へ
 

3.まとめ

家庭科は「生きる力」と言われていますが、これから社会に出て生きる知恵を身につけることが出来る教科だと思います。家庭での生活に必要な学びや体験が少ない現状からも家庭科の中で生徒に教えたいことは一杯あります。

しかしながら、最初に書いたように内容が多いのに時間が少ない現状から分野を横断しながら、時には重複する場合があっても、振り返りながら、時間経過とともに考えに深みが出る場合も考えられます。公民での学びと同じであっても、家庭科は自分のこととして見まわし、見つめることが出来る、そして行動出来る学びです。総合の時間で家庭科の内容を発展させて進路で使うなど、2単位を補う方法を活用してほしいです。

参考文献:最新家庭基礎(教育図書)

※ 【高等学校家庭科教材キット -新しい「家庭経済」授業プラン-】は生命保険文化センターが作成したパワーポイント教材です。
当サイトから自由にダウンロードできますので、ぜひご活用ください(生命保険文化センター)。
パワーポイント教材【高等学校家庭科教材キット】はこちらから
教師用手引書、ワークシートはこちらから

 

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