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企業・NPOと連携したアクティブラーニング型キャリア教育
web.09
(2015.12)
東京都立高島高等学校 公民科 大畑 方人 先生
 

1.はじめに

東京都教育委員会は、2012年に策定した「都立高校改革推進計画・第一次実施計画」に基づいて、企業・NPOとの連携によって都立高校におけるキャリア教育の取り組みを支援する「都立高校生の社会的・職業的自立支援教育プログラム事業」を実施している。

筆者の勤務校である都立高島高校においても、生徒たちに社会や職業について実感をもって理解させ、社会の中で生きること・働くことに対する意欲やモチベーションを向上させることを目的として、複数のプログラムを導入している。

以下では、本校で実施したプログラムのうち、生徒の反応が特によかったものを、いくつか紹介することにしたい。

 

2.授業の位置づけ

◇学年 高校1年生〜3年生
◇科目 現代社会、政治・経済、総合的な学習の時間
◇ねらい 生徒に社会や職業について実感をもって理解させ、社会人・職業人として生活していくために必要な知識や能力を身に付けさせる。

3.プログラムの実践事例

(1)職業人へのインタビュー(NPO法人 16歳の仕事塾)

■プログラムのねらい

・職業人に、高校時代から今に至るまでの経歴や仕事を選んだきっかけを聞くことで、将来設計のヒントをつかむ。 ・インタビューの仕方や言葉のキャッチボールの方法を学ぶことで、見知らぬ他人や異なる世代との話し方を学ぶ。

■プログラムの概要

職業人による講話 高校生の頃の生活や取り組んでいたこと、今の仕事を選択した理由などについて話を聞く。
インタビューの見本 ファシリテーターが職業人へインタビューする。生徒はその様子をみて、インタビューの方法を学ぶ。
生徒によるインタビュー 生徒個人でインタビューしたいことを付箋に書く。グループ単位で生徒が職業人にインタビューする。

(2)未来トーク(NPO法人 アスデッサン)

■プログラムのねらい

・大人の“生”の声を聞くことで、自らの将来を身近なものとして捉え、「自分らしい生き方」を志すキッカケを得る。 ・多様な大人の存在を知ることで、自分自身にも様々な可能性があることを知り、自ら主体的に判断してキャリアを形成していく「キャリアプランニング能力」や、自分自身の可能性を肯定的に受け止め主体的に行動する「自己理解・管理能力」を身に付ける。

■プログラムの概要

団体紹介・メンバー紹介 複数の職業人による自己紹介を聞く。
グループワーク グループ内で生徒が自己紹介をし、職業人との座談会を行う。
振り返り 各自振り返りシートを記入し、お互いに感想を発表する。

(3)金銭基礎教育「MoneyConnection®」(NPO法人 育て上げネット)

■プログラムのねらい

・生きていく上で必要な「お金」と「働くこと」の基本的な知識を、シミュレーションで学習する。 ・一人暮らしのための生活コストを理解し、働き方により生活スタイルが変わることを実感する。 ・長期的な視点に立って、働き方を慎重に選択することの大切さを理解する。

■プログラムの概要

個人ワーク 一人暮らしに必要な金額を知ることで、お金について関心を持ち、生きていくためにはお金が必要であることを理解する。
グループワーク カードを使ったシミュレーション形式でのワークで、10年後のそれぞれの働き方(フリーター・派遣社員・正社員)や生活スタイルをイメージする。また、働き方別の特徴を知ることで、働き方に関心を持つきっかけを得る。
グループワーク・意見交換 生活スタイルの変化とともに、それぞれの働き方、稼ぎ方を長期的な視点で捉える。
まとめ 働き方、稼ぎ方について知るとともに、それを選択し、未来を創るのは自身だということを実感する。また、将来を見据えて進路選択することの大切さを確認する。

(4)基礎から学ぶローン・クレジット(SMBCコンシューマーファイナンス株式会社)

■プログラムのねらい

・私たちの日常生活に身近となったローンやクレジットの正しい知識を学ぶ。 ・多重債務の危険性について理解する。 ・社会に出る前に必要なお金の知識を身に付けることで、お金の大切さを知り、健全で正しい選択ができる消費者を目指す。

■プログラムの概要

契約と消費者信用の仕組みについての講義 「契約」や「信用」の意味、消費者信用の種類や市場規模について学ぶ。
ローン・クレジットの特徴についての講義 「ローン」や「クレジット」とはそもそもどのようなものなのか。仕組みや種類、メリット・デメリットを学ぶ。
金利と利息についての講義 ローンやクレジットを利用する際に重要なポイントである金利と利息を、計算方法を踏まえて学ぶ。
返済の仕組みについての講義 契約内容に応じた様々な返済方法のメリット・デメリットを理解し、計画的な返済方法について学ぶ。
貸金業法・割賦販売法についての講義 ローンやクレジットに関係する様々な法律のうち、貸金業法と割賦販売法について学ぶ。
多重債務についての講義 多重債務の原因、陥らないための対策、万が一の時の相談先などを学ぶ。

(5)知っておきたい労働法規(NPO法人 若者就職支援協会)

■プログラムのねらい

・社会人として必要になる労働法規に関する基礎知識を学ぶとともに、働く意識や自立心を身に付ける。 ・働く上で、身の危険が迫ったり、悩みを抱えたりした時の相談場所を知り、自己防衛手段を身に付ける。

■プログラムの概要

労働法規についての講義 給料と税金の仕組み、源泉徴収、有給休暇、社会保険について学ぶ。
ハローワークについての講義 雇用保険(失業給付)、職業訓練、求人票について学ぶ。
ブラック企業についての講義 ブラック企業の定義と見分け方、相談する公的機関、相談場所の紹介。
グループワーク 自分がバイトで困ったこと、働く上で分からない法律のことなどについてファシリテーターとともに話し合う。

4.おわりに 〜成果と課題〜

これらのプログラムを実施したところ、生徒たちの反応はおおむね良好であった。アンケートで得られた生徒の声には次のようなものがある。

・「社会人の方々とのグループワークを行ったことで、自分の将来について具体的に考えることができた」 ・「将来やりたいことを考えて進路を決める必要があると感じた」 ・「お金に関する知識がないと、将来、損をするということが分かった」 ・「ローンやクレジットを利用する際は、利息などについてしっかり調べておく必要がある」 ・「アルバイトをする時にも、法律についての知識が必要だということが分かった」
このように、企業やNPOとの連携によるキャリア教育・金融教育を実施することは、生徒にとって極めて学習効果が高いといえる。

しかし、その一方で、これらのプログラムを導入する上では課題もある。その一つは、単発的にプログラムを導入すると、学習効果が限定的になってしまうという点である。

企業やNPOと連携した授業を行う際には、各学校・各授業で系統的なキャリア教育計画を作成するとともに、教員による普段の授業と連動させながら実施することが重要である。そうすることで、より効果的に学習意欲やコミュニケーション力を向上させ、働くことについて主体的に学ばせることができるはずである。

 

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