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自分たちでシナリオをつくる家庭科「悪質商法」の学習
web.11
(2016.2)
大阪府立貝塚高等学校 谷 昌之 先生
 

1.はじめに

本校は普通科、園芸科、定時制や隔週定時制の家政科といった多様な学科を改編して設置された総合学科である。そこでの実践や設備を活かし、多様な授業科目を展開している。同時に、進路も就職、専門学校・短大・四年制大学への進学と多岐にわたる。

総合学科の1年次生が履修する学校設定科目「産業社会と人間」や「総合的な学習の時間」などで“働く”ことを意識したプログラムを展開し、いわゆる“卒業後すぐの進路”だけでなく、自身の人生を長い目で見ることができるよう、広義のキャリア教育を実践している。

働くということを意識すると同時に、金銭管理に関する意識も高めることも重要であり、“稼ぐ”と“消費する”の両観点について、先述の「産業社会と人間」や「総合的な学習の時間」と合わせて家庭科の必修科目である「家庭基礎」の経済生活の分野において授業を展開している。生徒は、職業労働によって収入を得ることや消費活動については興味を持って学習してくれる一方、消費者問題については実感が持てず、十分に興味を持てていないようであった。そこで、悪質商法を学習する単元において、生徒が受け身になるのではなく主体的に授業に参加し実感を伴って学ぶことができるよう、ロールプレイのシナリオ作成を取り入れた授業を行った。

 

2.授業について

授業は、1年次7クラスの「家庭基礎」(2単位・必修)で行った。経済生活の分野の指導計画は以下の通りである。本記事では第4時と第5時について紹介する。

単元 概要
1 収入と支出 <給与明細のワーク>
給与明細と1か月の支出のモデルを示し、収入と支出の構成について学習する。
あえて収入よりも支出が超過する設定にして、赤字解消にむけて改善策をグループで討議する。その過程で収入と支出の構成のうち、個人の努力で工夫できる部分とできない部分について実感を伴って理解する。
2 グループで討議した内容を発表して全体で共有する。 まとめとして、収入と支出の構成について整理して学習する。
3 契約について 契約について学習し、一度結んだ契約は守らなければならないこと、消費者保護の制度によって解約や取り消しができる規定があるが安易に無理な契約を行わないように注意する必要があることを確認する。
4 悪質商法 9種類の悪質商法について概説し、それぞれをグループに割り振り、ロールプレイのシナリオを作成する。
5 ロールプレイの発表会を行い、悪質商法の特徴と対処法などを理解する。

<第4時の指導案>

学習内容 指導上の注意点
導入 ・授業者の身近に起こった悪質商法による被害の実例を紹介。 年齢の近い卒業生の実話を中心に、悪質商法の被害にあう可能性が身近にあることを感じさせる。
展開1 ・9種類の悪質商法について簡単に解説する。 <取り上げる悪質商法>
(1)アポイントメントセールス (2)キャッチセールス (3)マルチ商法 (4)デート商法 (5)資格商法(就職商法) (6)不当請求(架空請求) (7)開運商法(霊感商法) (8)催眠(SF)商法 (9)ネガティブ・オプション
取り上げる悪質商法について、関連する資料(消費生活センターのパンフレットなど)を配布する。シナリオに幅をもたせるために、各悪質商法の資料は複数になるように用意する。
展開2 ・4〜5名のグループをつくり、9種類の悪質商法を1つずつ割り当てる。 ・グループで相談しながらロールプレイのシナリオを作成する。 <シナリオ作成の条件>
(1)だます側がどのような言葉をかけたり、状況をつくり出したりするか、だます側のポイントが伝わるようにシナリオを作成すること。
(2)だまされる側にどのような「心の動き」が起こってだまされるかが伝わるようにシナリオを作成すること。
グループ全員に出番があるようにするよう指示する。登場人物が増えることでシナリオが充実する。
まとめ ・さらに調べたいグループは、他の資料やwebページなどを参考にしてシナリオを完成させておくことを宿題とした。  

<第5時の指導案>

学習内容 指導上の注意点
導入 ・発表会の流れと諸注意を行う。 ・発表順を決める。  
展開1 ・順番にロールプレイを実演。 必要に応じてコメントを加える。発表内容で誤っている場合もあるので、指摘して訂正を行う。
展開2 ・だます側の仕掛けとだまされる側の心理状況の特徴を整理する。 ・被害に遭ってしまった時の相談窓口として新設された消費者ホットライン「188」を紹介する。 「自分はだまされないので大丈夫、関係ない」と思いがちだが、だます側に立って悪質商法を見てみると、巧妙な手口が仕組まれており、気づかぬうちに被害にあってしまうことを改めて実感させる。
まとめ 今回の学習で学んだことをふりかえりシートにまとめ、個人での思考により定着させる。 グループでの活動が多かったので、個人の時間を確保して学んだことを定着できるようにする。
 

3.まとめ

悪質商法の被害は、卒業後に本格的に収入を得るようになってからだけではなく、高校生にも起こっており、自分の大切な財産を守るためにもしっかりと学んでおく必要がある。しかし、これまでワークシートやビデオ教材など工夫しながら悪質商法についての学習に取り組んできたが、生徒に実感を持たせることが難しかった。今回、「シナリオを考える」という能動的な手法を取り入れることによって、だます側やだまされる側の視点に立って想像力を働かせながら学習することができた。

 シナリオをつくるという動作はグループ内で少人数だけの活動に陥るのではないかという心配もあったが、発表会を設定し「自分にも出番がある」という意識を持たせることによって、グループで熱心に相談しながらシナリオを作成する姿を見ることができた。また、他のグループの発表も興味を持って見ており、自分のグループ以外が取り上げた悪質商法についてもその特徴を理解していた。

 生徒のふりかえりシートには「最初は面倒に感じたけれど、やっていくうちに楽しくなってきた」「だます側の手口を考えるのが楽しかった。逆に、だまされないように気をつけないといけないと思った」「友達がだまされる役を演じていてリアルに感じた」などの記述があった。

 家庭科ではこの単元以外にも生活や社会とつながりの深いテーマを扱っている。いかに生徒が実感を持って学習し、実生活に活かすことができるかを引き続き追求していきたい。

 

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