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社会人になる前に…実学として「住宅購入」の授業実践
web.12
(2016.3)
東京都立小平西高等学校 家庭科 渡辺 真理子 先生
 

1.はじめに

家庭科の授業・住居領域において、生徒が1人暮らしをしていく時のシミュレーション授業を実践されている学校は多いと思います。本校でも取り組んでいます。賃貸住宅を借りる時の注意点を学習した後、どんな部屋を借りて住むか選択し、その部屋に住むとしたらどんなものを購入していくのかを生徒自身が考え調べ学習していくことは学ぶべき内容も多岐に渡ります。また、自分が住む空間を考えることは生徒にとって夢のある楽しい時間にもなっているのではないでしょうか。

今回は、借りるのではなく「住宅購入」の授業実践を紹介したいと思います。「高校生の授業でそこまではやらなくてもよいのではないか。」「一生賃貸住宅にのみ住む生徒もいるのではないか。」と考える方もいるかもしれません。しかし、授業で扱ってみると将来住む家族のことや大きなお金のことを想像しながらになるので、これから長い人生のライフプランを立てる時、生徒にとって参考になることが多くあると実感しています。

 

2.授業実践

機ゼ業の位置づけ

◇対象学年 高校3年生
◇対象科目 家庭総合(4単位)・2年生2単位+3年生2単位
◇教科書 「家庭総合・ともに生きる 明日をつくる」教育図書
◇授業時間 3時間 (2週に分けて学習する。)
◇領域 住居領域の最後の課題として学習する。住居領域は十分時間をかけられないことが多いが、この課題を取り組ませることで住居の総合的な学習ができると考える。カリキュラム上住居領域で学習できない時は、経済領域の授業に取り入れることもある。

供ゼ業の目標

1.賃貸と持家のメリット・デメリットを整理し理解する。 2.マンションなど集合住宅と戸建のメリット・デメリットを整理し理解する。 3.よい住宅を選ぶには、そこに住む家族の年齢・人数や職業などその家族のライフスタイルを十分考える必要があることを認識する。 4.建物を建てるにはいろいろな決まりがあり、購入する際にはその土地のことをよく調べなくてはならないことを理解する。 5.住宅ローンや住宅を購入するのにかかる諸経費などを学習することにより、家計を計画的に管理することの重要性を理解する。

掘ゼ業展開例

《1限目》

学習活動 指導上の注意点 備考
・これから「住宅購入」について学習することを確認する。 ・将来の自分を想像しながら住宅購入のシミュレーションを行っていくことを認識させる。 ・ワークプリント配布
・賃貸と持家についてメリット・デメリットを整理して意見交換する。
・年収から購入可能な住宅の価格や住宅購入にかかる諸経費について学習する。 ・購入する土地について学ぶ。




・実際に住宅広告を見て振り返る。
生徒に意見を発表させた後、住宅を購入することのデメリットをきちんと説明する。
・住宅購入には住宅そのものの他に多くのお金がかかることを認識させる。
・土地計画法の土地の用途や建ぺい率・容積率またセットバックなど専門用語を確認させる。 ・道路と土地の状況によって日当たりに違いがあり価格に反映することを知らせる。 ・住宅広告で実際の表記を確認させ課題に繋げる。






・都市計画図などがあれば見せる。



・住宅広告を例として配布

《2限目》

学習活動 指導上の注意点 備考
・1限目学んだ事がらを確認し、実際に自分の住みたい家を選んでいく。 ・住宅広告を見てわかりにくい点を中心に質問があれば答える。  
・家族の設定条件を決める。
・マンションなど集合住宅と一戸建てどちらを選ぶのか決める。 ・希望条件(4つ以上)をいくつか挙げる。
【購入住宅選択】
・将来どんな家族と住むのか考えさせる。(1人暮らしは不可) ・集合住宅と戸建どちらを選んでも理由を記入させる。 ・参考平均年収を知らせて選ぶ住宅の価格帯を決めさせる。 ・家族に合わせた希望条件を考えてから選ぶよう指示する。 ・選択に際し、スマートフォンなど利用してもよいことにする。 ・課題プリント配布 ・PCルームが使えると作業がスムーズとなる。 ・マンションの無料広告冊子があれば用意しておく。
・本時を振り返る。 ・次回の授業を確認する。 ・購入住宅が選択できていない生徒は次回までの課題とする。 ・次回の授業では、ローンについてと世界の住宅事情について学習することを伝える。  

《3限目》次週

学習活動 指導上の注意点 備考
・前回の授業内容を振り返る。 ・前回までの課題ができているか確認する。 ・できていないところや不十分なところをやり切るよう促す。 ・前回の課題プリントを用意させる。
・選んだ住宅のローン計画について学習する。 【ローン計画】 ・この課題をやっての感想を記入する。 ・住宅情報誌などの資料を利用して借入可能額や毎月の返済額をざっくりと出してみるよう伝える。 ・返済額は設定年収の25%以内とした。
・世界の住宅事情について学ぶ。 ・教科書の資料を利用して各国の住宅の価格や床面積また持ち家率などを確認させ日本の住宅事情と比較させる。  
・本時を振り返る。 ・住宅購入のシミュレーション授業を通して、ライフプランを立てる重要性を認識してほしいことを伝える。  

◇住宅購入時にかかる諸経費については、登記料・税金・保険・引っ越し代・仲介手数料など購入価格の5〜10%必要であると伝えている。 ◇土地の用途については、一戸建ての場合第1種(第2種)低層住宅専用地域が環境のよいことが多いなど(建ぺい率などと共に)を伝える。 ◇建ぺい率や容積率は、時間にもよるが例を出して簡単に計算させると理解しやすい。 ◇他の住宅より安い物件は、再建築不可・セットバックの面積が広い・借地権の土地などの場合があると説明しておく。ただ専門用語をあまり深く説明すると課題を難しく考えてしまうので注意する。 ◇接する道路との関係が日当たりに大きく左右することを伝える。 ◇時間があれば、例となる住宅広告の間取り図(一戸建て・マンション)を見せてどんな住宅なのか分析させ解説しておくと作業がスムーズに進む。
⇒【課題プリント】「家を買ってみよう!」(PDF)
◇将来どんな家族と住むか想像させて、その家族に合わせて住宅を選ぶよう指示する。住宅は高額なものなので若い時は購入が簡単ではないことも伝えておく。 ◇生涯1人暮らしの人が増えているが、この課題では家族がある想定とする。 ◇購入したい住宅の希望条件を最低4つは考えさせるようにした。しかし、たくさん設定した方が家族の満足度が高いと伝える。 ◇年収の参考例から設定した家族の年収を想定させる。 ◇住宅購入のサイトなどからスマートフォンなど利用して実際に住宅を選ばせる。その住宅を授業で印刷できない時は家庭でしてきてもらうか、簡単な間取り図を記入させる。一戸建てを選ぶ場合は間取り図があるものから選ばせる。 ◇住宅情報誌からマンションを選んだ時は、情報となるページを全て切り取りホッチキス止めで提出させている。マンションは小さな文字の情報の中に大事なことが書かれていることも多いと認識させる。 ◇選んだ住宅の長所と短所をまとめさせる。短所がないと言う生徒もいるが、短所がない住宅はないことと短所がわかって選ぶと実際には住んだ時満足度が高いことを伝える。 ◇簡単にローン計画を立てさせる。実際には1ヵ所から借りることは少ないかもしれないが、住宅情報誌などに載っている資料(借入限度額と毎月の返済額)を利用して大まかに出すように指示する。 ◇全体を振り返って感想を書かせる。

 

3.まとめ

生徒に感想を書かせると「住宅を買うにはかなり大きなお金が必要になる。広い住宅に住みたいから高収入の職業に就きたいと思った。」「ローンを組むと大変だから、引っ越しも気軽にできるし一生賃貸でよいと思った。」「日本は住宅が高すぎる。住宅の安い国がうらやましい。」「住宅は高い買い物だからよく調べて、将来は満足できる住宅に住みたい。」などが出てきます。

シミュレーションの住宅購入にはなりますが、この授業を取り組んだ後にはライフプラン・資金計画をしっかり立てることは、充実した人生を送る上で大切なことなのだと生徒は感じてくれます。その時の社会状況や自分の職業・家族構成などみつめ、よく調べ、よく考えて自分の住む家を選べる社会人になってほしいと思います。今後も工夫を重ねながらこの授業を続けていきたいと考えています。

 

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