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2016.04 Essay vol.01

社会保険未加入者は要注意

マイナンバーで年金が減るかも!?

Written by 社会保険労務士小野事務所 小野 純 Written by 社会保険労務士小野事務所 小野 純

マイナンバー制度が開始して数か月が経ちました。制度運用に関する変更点は多々ありますが、会社担当者以外の方については特に差し迫った問題もなく「マイナンバーは紛失さえしなければ大丈夫」というお気持ちの方も多いことと思います。しかし、マイナンバー制度は、みなさんの大切な年金に大きな影響が出かねないということと、注意点について今回は触れていきたいと思います。

マイナンバーで何が把握されるのか

マイナンバー制度の開始によって、会社員やその被扶養者家族の方は雇用されている会社が、個人事業主などの方は自分自身で、税務署やハローワークに提出する書類にマイナンバーを記載することになりました。これによってその方の収入額や収入元、それに雇用保険の加入や給付の状況がわかるようになります。収入額が正確に把握されれば、その分、税金もきっちりと徴収されるようになるでしょうし、雇用保険の失業等給付を受けながら隠れて働いていれば、不正受給だということが今よりも格段にわかるようになるでしょう。しかし、問題はそれだけにとどまりません。来年(平成29年)1月からは社会保険の情報も、マイナンバー利用が予定されているからです。

社会保険の未加入状況が…

社会保険(健康保険、厚生年金保険)は、自分が勤めている会社が社会保険の適用事業所であれば、短時間パート等の非常勤あるいは高齢者【厚生年金は70歳、健康保険は75歳まで】でなければ加入する義務があります。しかし、実際は「本人が入りたくない」「会社側が社会保険料を減らしたい」等の理由で故意に加入していないケースもあるようです。それがマイナンバーによって収入と年齢、それに社会保険の加入状況が結び付けられれば、「この人は○○という会社から月額○○万円という給与収入がありながら、社会保険には入っていない」ということがわかってしまい、調査対象となる可能性があります。

社会保険加入の有無は年金額に影響するという事実

上記のように今まで社会保険に加入すべきはずの人が指導を受けて社会保険に加入した場合、すでに60歳以降で年金(老齢年金)を受けていた人は、社会保険料が新たにかかるようになるだけでなく、自分がもらっている年金額の一部または全部が支給停止となる場合があります。これは働きながら年金をもらう(在職老齢年金)場合、給与等の収入額によって受け取れる年金額にも影響を受けるからです。この場合の収入額の基礎とされているのが社会保険加入者の総報酬月額相当額(毎月の給与【標準報酬月額】+1年の賞与【標準賞与額】を12で割った額)というもので、社会保険未加入の時には収入としてカウントされていなかったものが、社会保険加入によってカウントされるようになり、年金額が減らされてしまうからです。60歳定年後に再就職し、その後は社会保険に加入していないという方も同様です。

社会保険料は1か所からだけとは限らない

今の時代、収入が1か所からだけではない方もいると思います。例えばAという会社で正社員として働き、Bという会社で副業的に働くといった場合、Bの会社での勤務時間が他のBの一般社員のおおむね4分の3未満の労働時間であれば、Bの会社での勤務が非常勤扱いとなり社会保険料はAの会社での収入にしかかかりません。 しかし、対象となる方が会社を経営する代表者となると話は変わります。役員に対する非常勤の考えは、その会社での労働時間ではなく、「その会社の経営に重要な影響を与えているか否か」で判断されるからです。よって、代表取締役の方は非常勤とは認められませんので、その会社に月に1日しか出社してなかったとしてもその会社が社会保険の適用事業所であれば、社会保険の加入対象者となります。会社を複数経営されている方で「健康保険証は1枚あればいいのだから社会保険は1つの会社でしか入ってないよ」という方がいらっしゃるかもしれませんが、それは誤った考えです。

二以上事業所勤務届

上記のように2つの会社で社会保険の加入対象者となった場合、それぞれの会社で「健康保険・厚生年金保険 被保険者資格取得届」の提出をするとともに、「健康保険・厚生年金保険 所属選択・二以上事業所勤務届」という用紙を年金事務所に提出し、選択事業所と非選択事業所を選択します。選択事業所とはどちらの会社から健康保険証を発行してもらうかの選択です。この届出をすることで保険料の算定基礎となる標準報酬月額は両方の会社からの給与が合算されて決定し、給与額の割合に応じた保険料がそれぞれの会社に請求されます。こわいのは、マイナンバーで年金をもらいながら二か所以上で勤務し、一か所しか社会保険の届出をしていなかったことが調査で判明した場合、さかのぼって年金額の返納ということが考えられることです。

社会保険(公的年金)と個人年金保険の違い

今まで述べてきたように、年金(公的年金)は現に社会保険に加入して一定額以上の収入がある場合、一部または全部が支給停止となってしまう仕組みです。年金制度(公的年金)は、歳を取って働けなくなった際の生活の保障で「相互扶助(助け合い)」という位置づけだからです。一方、生命保険会社で任意で加入する個人年金保険の場合、もらう時の収入額(給与額)は関係ありません。個人年金保険は、自分で保険料を積み立て、自分自身で年金を受け取るという「積立式」の性格だからです。歳をとったら収入額に関係なく確実に年金をもらいたいという人にとっては、生命保険会社の個人年金保険は向いているといえます。

プロフィール

小野 純

小野 純(おの じゅん)

2003年社会保険労務士小野事務所を開業。2007年に上位資格である特定社会保険労務士の資格を取得し、個別労働紛争解決業務対応事務所となる。
企業顧問として「労働・社会保険手続」「就業規則」「労務相談」「個別労働紛争あっせん代理」等の業務に従事。上記実務の他、社労士関連の講演、各企業の労務管理研修等の講師活動も展開。
【主な著書「従業員100人以下の中小規模事業者のためのマイナンバー対応(共著)」(税務研究会出版局)】

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