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2016.06 Essay vol.03

マイナンバーのここに注意!

Written by 社会保険労務士小野事務所 小野 純 Written by 社会保険労務士小野事務所 小野 純

マイナンバーに関する連載も今回でひとまず最終回となりました。今回はマイナンバーの利用拡大に伴い注意が必要な点について触れていきたいと思います。

マイナンバーで誰を扶養しているかわかるようになる

マイナンバー制度によって、勤めている方は会社経由、個人事業主などの方は自分自身で税務署やハローワークなどの行政機関に提出する書類にマイナンバーを記載しなければならなくなりました。これにより今までは問題とならなかったことが、今後は問題となるであろうといわれていることがいくつかあります。そのうちの一つがマイナンバーで誰を扶養しているかわかるようになる(扶養されている方の特定)ことです。

源泉徴収票とマイナンバー

制度開始によって行政機関に提出する多くの書類に該当者のマイナンバーを記載するようになりますが、該当者本人だけではなく、配偶者や子などの扶養している家族(被扶養者)についてもマイナンバーを記載するようになります。その代表的なものが税務署に提出する「給与所得者の源泉徴収票」です。この源泉徴収票の書式には被扶養者(扶養親族)に関する欄があり、被扶養者の氏名とマイナンバーを記載することになっています(本人交付用にはマイナンバーの記載なし。基本的には平成28年分給与所得の源泉徴収票、平成29年1月31日までに提出する分より)。

なぜそれが問題になるのか

上記のように給与所得者の源泉徴収票に被扶養者の氏名とマイナンバーが記載されることにより、「誰が誰を扶養している(養っている)のか」ということが明確になります。被扶養者の数が多ければ多いほど給料から控除される源泉所得税の額は安くなりますので、この明確化は対象者の特定を行う上で重要な意味を持ちます。

例えば高齢の両親に長男と長女がいたとしましょう。両親は高齢で収入が被扶養者の範囲内、一方、長男と長女はそれぞれ別の場所で働いて給与を得ています。このケースで長男が両親を扶養しているのであれば、被扶養者としての扱い(届出)は長男のみが可能であり、長女は原則として両親を被扶養者とする扱い(届出)はできません。しかしながら、これまでは長男と長女が別の税務署管轄の会社で勤務していた場合、この二重届出の照合ができず、長男長女の両方が両親の扶養者として安い源泉所得税となっているケースがあったようです(ダブル控除)。ですが今後はマイナンバーで被扶養者家族の管理もなされますので、このダブル控除は不可能となると考えられています。

住民票にもマイナンバーが載るようになる

マイナンバーは全員に送られた「通知カード」または希望者のみに発行される「個人番号カード」に記載されていますが、記載されているものはそれだけではありません。役所が発行する住民票にもマイナンバーが記載されている場合があります。これは請求者の希望によってマイナンバーの記載の有無が選択される仕組みになったからで、役所で住民票を発行してもらう際、「担当者にマイナンバー記載の有無について正しく伝える」「自動交付機の操作を正しく行う」ということに注意しておかないと、自分の意思に反してマイナンバーが記載された住民票が発行され、気づかなければそのまま他に提出して次のような失敗をしてしまうことも考えられます。

例えば遺族年金の請求に関しては、年金手帳や戸籍謄本の他に「世帯全員の住民票の写し」が要求されます。この時にマイナンバーが記載されたもの添付してしまうと提出先の年金事務所では受理してもらえません。年金事務所(日本年金機構)では平成29年1月まで(予定)は、マイナンバーは扱えないきまりになっているからです。年金事務所ならお役所ですので間違いを指摘してくれると思いますが、民間でのやり取りで気づかずにそのまま提出してしまい、結果としてマイナンバーが漏えいしてしまうことがあるかもしれません。

マイナンバーを提出しないとどうなるか

今まで見てきたようにマイナンバーの利用が拡大するにつれ、隠れていた危険性が顕在化するようになってきました。公平公正な社会の実現という点においてマイナンバーは大きな役割を果たすものと思われますが、危険性(番号流失や犯罪への利用)や不利な面(年金未加入や所得の露呈)を考えると「マイナンバーなんてない方がいい」と思うかもしれません。現実問題としてマイナンバーの提出を拒むという方も中には出てきているようです。

しかし、マイナンバーを故意に提出しなかった場合、余計な問い合わせや担当者とのやり取り、それによる手続きの処理遅れが予想されます。そして将来的には預金口座との紐づけや各種の証明などへの利用も検討されていますので、今後一生「マイナンバーは使わない」という選択肢はあり得ないでしょう。スムーズな事務手続きの実現のためにも、銀行や生命保険会社などからマイナンバーの提出依頼があった場合には、協力するようにしましょう。

プロフィール

小野 純

小野 純(おの じゅん)

2003年社会保険労務士小野事務所を開業。2007年に上位資格である特定社会保険労務士の資格を取得し、個別労働紛争解決業務対応事務所となる。
企業顧問として「労働・社会保険手続」「就業規則」「労務相談」「個別労働紛争あっせん代理」等の業務に従事。上記実務の他、社労士関連の講演、各企業の労務管理研修等の講師活動も展開。
【主な著書「従業員100人以下の中小規模事業者のためのマイナンバー対応(共著)」(税務研究会出版局)】

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