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2016.07 Essay vol.01

“高齢社会”を生きる
〜長期入院と介護〜

Written by 川端薫社会保険労務士事務所 川端 薫 Written by 川端薫社会保険労務士事務所 川端 薫

父が亡くなり、もうすぐ6年。早いもので来年7回忌を迎えます。死亡診断書上、死因は「老衰」となっていましたが、元々の原因は大腿部を骨折したことによるものでした。手術後、リハビリのかいもなく、高齢のために足の筋肉が衰え、寝たきりになってしまいました。 骨折のきっかけは自宅の廊下にあるわずか1cmの段差でつまずき、転んだことによるものでした。『高齢になるとわずかな段差でも転ぶ』ということは聞いていましたが、まさか自分の身近で起きるとは思っていませんでした。この時から“父の長期入院と介護生活”、そして家族の“父に対する介護問題”がはじまりました。

入院は1度転院をして、通算で約4ヵ月でした。最初の病院で毎日リハビリを行っていましたが、効果がなく、2ヵ月ほど経ったころ「症状が固定しているため、治療はほぼ終了となります」と退院するようにいわれました。しかし、このまま自宅での生活に戻った場合、主に母が父の世話をすることになります。“老々介護”による母の精神的負担の増大は明らかでした。

そこで、病院側に入院期間の延長をお願いし、その間に病院のソーシャルワーカーの助言を受けながら、介護施設を探すことにしました。実家に近く、リハビリを主に行う施設という条件で、介護老人保健施設(以下、老健)を訪ねました。施設に空きがないことはある程度想定していましたが、入所できそうな施設がみつかっても、父が投与されている肝臓の薬により入所を断られることがありました。病院から投与されて服用している薬の種類によっては、老健で使用できないものがあります。思いもかけない問題が生じ、介護施設探しは難航しました。父の介護問題に直面することで、あらためて高齢者の長期入院や介護の問題の深さについて考えることとなりました。

高額療養費制度について詳しくはこちら

さて、質問ですが高齢者が長期入院をした際の入院費はどのくらいになると思いますか? 父の4ヵ月間の入院時に支払った医療費について明細を基に計算してみたいと思います。まず、知っておいてほしいのは、公的医療保険制度の対象となる医療費は自己負担分が大きくなった場合、高額療養費制度が適用され、一定額以上かからなくなる、ということです。父の場合、毎月の支出は4万4千円(自己負担限度額)でした。実際にかかっていた医療費は毎月平均して約80万円でしたので、公的医療保険制度がなければ大変な負担になっていたところです。この時ばかりは本当に公的医療保険制度のありがたみを感じました。

毎月4万4千円でも小さな負担とはいえませんが、これ以外に入院時の食事にかかる費用があります。当時の入院時食事代の一部負担額は1食につき260円で、1ヵ月で約2万3千円となりました。一部負担額は平成28年4月より1食につき360円となり、平成30年4月からは同460円と段階的に引き上げられる予定です。 さらに保険外費用として父の場合「紙おむつ代」がかかりました。これが意外に高く、1日につき1,500円かかりました。1ヵ月では4万5千円となり、紙おむつ代は公的医療保険制度の対象とならないため、自己負担額は病院によって異なります。退院後は老健に入所したため、紙おむつ代は公的介護保険制度の対象となり、自己負担はなくなりました。

父の例から考えると、寝たきりに近い高齢者の入院費は、本人や家族の負担も考えて個室等が必要になる場合があります。差額ベッド代やおむつ代、食事代や雑費等も入れて父の場合は平均して月に約16万円かかることになりました。高齢者が入院する場合は公的医療保険制度の対象となる医療費よりも、実は保険外費用の方がかかることがあり、見舞いに伴う交通費なども家計を圧迫します。 その場合でも父は1日につき5千円の入院給付金が支払われる生命保険会社の医療保険に加入していましたので、持ち出しは月に1〜2万円ほどですみました。

誰でも高齢者になります。父の入院から “高齢者の入院”は長期化する傾向にあることを実感しました。長期入院に備え、『心の準備』『知識の準備』『お金の準備』を日頃から心がけておきたいものです。

次回は「介護施設での生活と費用」についてふれていきたいと思います。

プロフィール

川端 薫

川端 薫 (かわばた かおる)

社会保険労務士(東京都社会保険労務士会足立荒川支部所属)、ファイナンシャル・プランナー(CFP/1級ファイナンシャルプランニング技能士)、NPO法人アクティブ・シニア・クラブ理事 
青山学院大学卒業。大手生命保険会社にて、個人・法人向け生命保険募集、営業職員・新入社員教育に従事、社内外向け各種セミナーにおける講師として活動。2009年「川端薫社会保険労務士事務所」を開業。現在、社会保険労務士・ファイナンシャル・プランナーとして、相談業務・コンサルティング業務・講演業務・執筆業務に従事。
<著書(共著)等>
「セカンドライフ検定」(オルツ)、「税務・経理・人事ハンドブック」(C&R研究所)
「労働法例違反で罰せられる前に読む本」(TAC出版)

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