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2016.08 Essay vol.02

“高齢社会”を生きる
〜介護施設を探す〜

Written by 川端薫社会保険労務士事務所 川端 薫 Written by 川端薫社会保険労務士事務所 川端 薫

前回、私の父が骨折を原因として介護が必要な状態になった経緯をご紹介しました。今回は介護施設探しについてご紹介したいと思います。

介護が必要となった父の入院先のソーシャルワーカーから「退院後にお母様1人でお父様の介護をしながら生活していくことは難しいと思います。要介護状態のお父様が入れる介護施設のうち、軽費で入れる特養(特別養護老人ホーム)を退院前に探しましょう」とアドバイスを受けました。さらには「特養といっても小規模な施設から大規模な施設まであり、施設の雰囲気も様々です。ご自身の目で確かめながらお父様に合う施設を探してあげてください」と言われ、入院中の父の世話と並行して施設探しをはじめることになりました。正直、それまでは介護施設はどこも変わらないだろうと思っていましたので、このアドバイスは『この忙しい最中に…』と戸惑う気持ちもありました。

早速、実家のある横浜市の区役所で「高齢者施設の住所・連絡先一覧」を受け取り、施設を探しはじめました。母が訪ねて行きやすいように実家に近い施設を10ヵ所ほどピックアップし、まずは、施設見学を行いました。私は社会保険労務士として自営で仕事をしていましたので、時間は割と自由にありました。自営業ではなく、会社員等の方でしたら自由になる時間が少ないので、施設探しも大変だったと思います。法律では「介護休業」を取得することは可能になっていますが、実際は介護に入る前から多くの時間を必要とします。「介護休暇(原則5日を限度とする)」もありますので、勤務先と調整をしながら行うことになります。『仕事のことも気になる、家庭のことも気になる』そういう忙しい世代にふりかかってくるのが介護問題なのだと思います。“働きながら介護をする”“働きながら介護の準備をする”ことは今後ますます重要な問題になっていくでしょう。

さて、介護施設を探しはじめてからソーシャルワーカーのアドバイスが腑に落ちてきました。「特養」といってもそれぞれの施設で雰囲気は全く違うものでした。雰囲気だけではなく備え付けの家具、食事の内容、費用等施設ごとに個性があり一律ではありません。『ここは父には合わないかもしれない』といった想いは訪問したからこそ肌で感じることができ、資料やデータではわからないということを実感しました。中には「アニマルセラピー」を実施している施設や「お風呂が温泉」の施設もあり、個人的には費用はやや高めでしたが、「アニマルセラピー」を取り入れている施設が気に入りました。施設の特徴は様々でしたが、“介護に携わる方々の目は優しい”ということと、どこの施設も“入所を待っている人が100人以上いる”ということは共通していました。

結局10ヵ所以上の施設をまわって、“ここなら”と思える特養5ヵ所に申し込みましたが、入所待ちの人が大勢いるので、すぐに特養に入れるものではありません。特養に入れるまでの繋ぎとして病院の紹介で老健(介護老人保健施設)に入ることにしました。この入所も大変で、持病がある父が服用していた薬が使えない施設もあり、4件目の紹介でやっと入ることができました。なぜなら老健は、「介護を必要とする高齢者の自立を支援し、家庭への復帰を目指すリハビリ中心の施設」で、医療的なケアに制限があるからです。慢性的な症状があり療養を行うための施設は介護療養型医療施設になります。

入れる施設がなかなかみつからないまま退院の日が近づいてきて、母の不安が募っていくので、老健に入れるまでの一時的な措置として費用は高くなりますが有料老人ホームも考えました。結局、間際で老健に入れることになり、退院後老健に直行しました。

特養には、申し込んだものの、父が亡くなるまでの2年間どこの施設も空くことがなく、入所できませんでした。機能訓練が充実していてレクリエーションもある特養に本当は入れてあげたかったので、『いつ入れるのだろう?』『まだ?』と待っている間疲れてしまうこともありましたが、父が入院していた病院のソーシャルワーカーに相談することでガス抜きをしてもらいました。父の介護という理由で知り合いましたが、とても良い方に巡り合ったと感謝しています。

この老健の支払いは月に10万円ほどでした。施設に慣れるまでは1人部屋でしたのでそれにプラスして6万円ほどかかりました。これまで公的介護保険制度を利用する際の自己負担額は1割でしたが、昨年8月から一定以上の所得(合計所得金額が160万円以上)がある場合、自己負担額は2割になりました。父が今も生きていれば、介護にかかる費用はこうした制度の改正により確実に増えていたと思います。介護リスクは誰にでもふりかかるものです。「貯蓄」あるいは「保険」での備えを考えておく必要があるでしょう。

この、何とか入ることができた老健で父は最期を迎えました。老健でも施設長である医師や職員の方々に大変お世話になりました。感謝しても感謝しきれません。「介護問題」は自分一人で抱え込んでしまうと、そこには悲劇が生じることもあります。上手に社会保険制度や周りの人の手を借りて「介護問題」と向き合いましょう。私も、ソーシャルワーカーや老健の方のお力を借りて、乗り越えることができました。最後に少しは父に親孝行ができたかな、と思っています。

プロフィール

川端 薫

川端 薫 (かわばた かおる)

社会保険労務士(東京都社会保険労務士会足立荒川支部所属)、ファイナンシャル・プランナー(CFP/1級ファイナンシャルプランニング技能士)、NPO法人アクティブ・シニア・クラブ理事 
青山学院大学卒業。大手生命保険会社にて、個人・法人向け生命保険募集、営業職員・新入社員教育に従事、社内外向け各種セミナーにおける講師として活動。2009年「川端薫社会保険労務士事務所」を開業。現在、社会保険労務士・ファイナンシャル・プランナーとして、相談業務・コンサルティング業務・講演業務・執筆業務に従事。
<著書(共著)等>
「セカンドライフ検定」(オルツ)、「税務・経理・人事ハンドブック」(C&R研究所)
「労働法例違反で罰せられる前に読む本」(TAC出版)

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