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2016.08 Essay vol.03

“高齢社会”を生きる
〜「生きる」ということ〜

Written by 川端薫社会保険労務士事務所 川端 薫 Written by 川端薫社会保険労務士事務所 川端 薫

3回にわたって綴ってきた私の父の長期入院と介護生活。父の最期は老健(介護老人保健施設)で看取ってもらいました。父が他界する1ヶ月ほど前に「一度、ご家族全員で一緒に来所して欲しい」という連絡が入りました。良い話ではないということは想像でき、私と母そして妹の3人で父が利用している老健を訪ねました。老健の医師から「お父様は衰弱が激しくこのままでは年内いっぱいだと思います。今後延命治療を行うことができますが、延命治療を始めるか、それとも延命治療を受けないかをご家族で話し合って決めてください」と言われ、「遂に来るべき時がきた」と思いました。その場で判断することはできなかったため、1週間ほど時間をもらうことにしました。

家族3人で時間をかけて話し合い、結論として「延命治療を受けない」ことにしました。基本的に「延命治療を受けない」方向で話が進みましたが、それでも心のどこかに引っかかるものがあり、なかなか結論は出せませんでした。最終的に長女である私が決断のうえ、母・妹が合意をして家族全員の意思としました。

その旨を老健に伝え、その後はそれまでよりも頻繁に誰かが父に会いに行くようにしました。父が亡くなる5日前の日曜日も、甥や姪(父からみれば孫)を含め、家族全員で会いに行きました。その頃は衰弱が激しく1日中ほとんどウツラウツラしている状態でしたが、この日は珍しく起きていて、嬉しそうな顔をしていました。その時の父の顔が今でも目に浮かびます。

「思ったより元気だったね」などと話しながら帰りましたが、その後に様態が急変し他界してしまいました。皆に会って安心したのかもしれません。

延命治療をしていれば、もう少し長く生きることができたかもしれませんが、延命治療を断ったことに後悔はありません。ただ、一つだけ悔やむことといえば、父が元気なうちに「延命治療」について話し合っていなかったことです。老健の医師から相談をされた時は既に父自身に判断力はありませんでした。もしかしたらあったかもしれませんが、私を含め周りの者は判断力がないと考えていました。元気なうちに話し合っておけば、悩んだり後悔したりすることは少なくてすんだのではないでしょうか。

最近は、人生の終え方の準備として「終活」を考えたり、自分の意思を元気なうちに伝えたりする方が増えています。正直、父の延命治療に直面して、「終末期の医療や自分の思い」を元気なうちになんらかの形で残しておく必要性を感じました。「エンディングノート」を利用すれば、自分の思いだけではなく「財産」や「加入している保険」についても整理ができます。

書店では、それこそ自分史のような物からシンプルな物まで様々なエンディングノートが売られています。また、シニア向けサービスにかかわる企業が無料で提供している物もたくさんあります。その中から自分に合ったエンディングノートを選び、利用してはどうでしょうか。エンディングノートは自分のこれからのことを考えるためだけではなく、遺された家族が困らないためのものでもあるのです。

ノートを利用するだけでなく、終末期の迎え方については家族での話し合いが大切です。元気なうちに父と話し合っていれば、悩むこともありませんでした。実は今でも法事の度に「あの時の判断は良かったのかな?」という話題が出ます。話し合っていればこのようなこともなかったと思います。

そういえば、父の葬儀の際に叔父から「戒名を新しく付けたの?お父さんは生前に戒名をもらっていたはずだよ」と言われ、驚きました。そんなことは家族の誰も知らなかったからです。エンディングノートを利用、あるいは「戒名をどうするか?」と、話し合っていればこのようなことは起きなかったかもしれません。

高齢化が急速に進み、人生ゆうに80年を超える時代です。高齢な家族が見送る側になることも少なくありません。こんな時代だからこそ家族で思いを一緒にしておくことが大切になってくるのではないでしょうか。

プロフィール

川端 薫

川端 薫 (かわばた かおる)

社会保険労務士(東京都社会保険労務士会足立荒川支部所属)、ファイナンシャル・プランナー(CFP/1級ファイナンシャルプランニング技能士)、NPO法人アクティブ・シニア・クラブ理事 
青山学院大学卒業。大手生命保険会社にて、個人・法人向け生命保険募集、営業職員・新入社員教育に従事、社内外向け各種セミナーにおける講師として活動。2009年「川端薫社会保険労務士事務所」を開業。現在、社会保険労務士・ファイナンシャル・プランナーとして、相談業務・コンサルティング業務・講演業務・執筆業務に従事。
<著書(共著)等>
「セカンドライフ検定」(オルツ)、「税務・経理・人事ハンドブック」(C&R研究所)
「労働法例違反で罰せられる前に読む本」(TAC出版)

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