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2017.02 Essay vol.02

老後にかかるお金、自分でつくる将来の安心

Written by 社会保険労務士法人ガルベラ・パートナーズ 原 祐美子 Written by 社会保険労務士法人ガルベラ・パートナーズ 原 祐美子

〜年金保険料は10年間だけ納付すればいいの?〜

前回は、年金の受給資格期間が10年に短縮されるというお話をしました。

では、今後は、10年だけ納付すればよいのでしょうか。いいえ。そんなことはありません。10年で受給資格が得られるとはいえ、10年の保険料納付で得られる国民年金の給付は1か月あたりたったの16,252円です。10年の保険料納付で年金が受給できるとは言っても、1か月あたり約16,000円しか受け取れないのであれば、仕事をしていたり、預貯金や別の収入があったりするのでなければ、暮らしていくことは到底難しいでしょう。

〜厳しくなる未納の年金保険料の取り立て〜

他方で、今回の改正によって10年だけ保険料を納付して、あとは払わない人が出てきてしまうのでは、という危惧もあります。しかし、いまは国民年金の納付も厳しくなっており、滞納処分の実績もあります。納付できる資力があるのに滞納している人は財産差し押さえの対象にもなりえるのです。未納、未加入による不公平感を減らすべく、国民年金、厚生年金とも納付や加入について行政が厳しく対応しています。国民年金保険料の未納者への財産差し押さえの実績は平成24年で6,208件、25年で10,476件に及びます。
10年だけの納付では受給できる額がわずかであること、受給資格期間を満たした後も納付をやめることはできないことから、いま年金保険料を納付している人、これから納付をする人などの現役世代については、10年への期間短縮はあまり大きな意味は持たなさそうです。

〜老後の生活に必要な金額はいくら?〜

平成28年の生命保険文化センターの「生活保障に関する調査」によれば、夫婦2人で老後生活を送る上で必要と考える最低日常生活費は月額で平均22.0万円となっています。さらにゆとりある老後を送るための上乗せ額の平均12.8万円を足すと、生活費は平均34.9万円となります。

〇「老後の生活費はいくらくらい必要と考える?」(生命保険文化センター)
http://www.jili.or.jp/lifeplan/lifesecurity/oldage/7.html

       

これら22万円や35万円の毎月の支出を、国民年金と厚生年金のみで賄うことは可能でしょうか?厚生労働省の発表によると、平成28年度の厚生年金の標準的な年金額は、夫婦2人分の老齢基礎年金を含めて221,504円です。

〇「平成 28 年度の年金額改定についてお知らせします」(厚生労働省)
http://www.mhlw.go.jp/file/04-Houdouhappyou-12502000-Nenkinkyoku-Nenkinka/0000110901.pdf

厚生労働省のモデルどおりの年金が受給できれば、最低の日常生活費は年金のみで賄うことができますが、病気になったり、介護が必要となったりした場合には、支出が年金収入を上回ってしまうこともあります。

〜自分自身で備えることを考えよう〜

長い期間、高い給与をもらっていたり、大企業に勤めているなどで、上乗せの基金が充実していたり、たくさんの退職金をもらえるということであれば、ゆとりある生活を送り、いざというときにも心配のない額を老後に確保することも可能かもしれません。とはいえ、未来のことはなかなか予測がつきにくいもの。自分が転職しないとしても、会社の制度が変わったり、他の会社と合併したりして、期待していた退職金がなくなってしまうということもあるのです。会社勤めをしている人も、自営業をしている人も、自分で将来の生活資金をつくるという意識を持っておきましょう。

〜平成29年1月から個人型確定拠出年金の新しい制度がスタート〜

個人が自分の責任で、将来の年金保険料を運用する制度として確定拠出年金があります。

〇「確定拠出年金制度」(厚生労働省ホームページ)
http://www.mhlw.go.jp/stf/seisakunitsuite/bunya/nenkin/nenkin/kyoshutsu/

確定拠出年金とは、その名のとおり、拠出が確定しているということ。給付額は確定していません。毎月決まった額を将来の年金のための掛金として拠出し、どのように資産運用するかは自分で決めます。将来受給する年金額は資産運用の成果によって決まります。

確定拠出年金は平成13年にできた制度ですが、この平成29年1月に制度が変わり、加入できる方の範囲が広がりました。今回新しく加入できるようになったのは、専業主婦(夫)(国民年金第3号被保険者)、企業年金の加入者、公務員の方たちです。

〜他の備え方とはどう違うの?〜

確定拠出年金は他の備え方とはどう違うのでしょうか。どのような特徴があるのかを見ていきましょう。

■特徴1 … 税制上の優遇措置がある

ゝ鮟仍、運用時、受け取り時の3つの場面で、税の優遇措置を受けることができます。

拠出時
確定拠出年金の掛金は全額所得控除の対象となります。確定申告や年末調整を行い、課税所得が減ることで税金が安くなります。
運用時
確定拠出年金の運用で得た利益は課税されません。
受け取り時
一時金で受け取る場合は退職所得控除、年金で受け取る場合は公的年金等控除の対象となり、一定の非課税枠があります。

■特徴2 … 60歳になるまで受給できない

老後への備えは、預貯金や生命保険を活用するのもよいでしょう。預貯金はいつでも引き出すことができます。生命保険も満期を待たずに途中解約して解約返戻金を受け取ることも可能です。保険商品によっては一時的にお金が必要な場合、積み立てた保険料の一部を借りることができるものもあります。
一方、確定拠出年金は、原則60歳になるまで引き出すことはできませんし、途中解約もできません。いったん拠出した掛金はまとまったお金が必要なときであっても、引き出すことができないのです。しかし、確定拠出年金の不自由さはメリットとも言えます。途中で簡単に引き出したり、解約したりすることができないため、うっかり使ってしまうこともなく、きちんと将来に備えることができるからです。

〜確定拠出年金への加入を検討してみました〜

実は、私も今回の改正を機に、確定拠出年金への加入を検討しています。私は個人事業主であった期間が約10年あるため、ずっと会社に勤めている人よりもその分、厚生年金への加入期間が短いためです。

次回は、確定拠出年金への加入にあたり、何について検討し、どんなことに注意する必要があるのか、さらに具体的な制度の内容とあわせてみていきます。

プロフィール

原 祐美子

原 祐美子(はら ゆみこ)

特定社会保険労務士、社会保険労務士法人ガルベラ・パートナーズ東京事務所長
日本女子大学文学部卒業。外資系計測器メーカー勤務、国会議員公設秘書、個人事業主として10年の社会保険労務士事務所の経営を経て、平成28年から現職。
数十社の企業に顧問として携わり、労務相談・トラブル対応、社会保険手続、給与計算、助成金申請等に関する支援を行うほか、商工会議所でも窓口相談を行っている。
産業カウンセラーの資格も持ち「話を聞いてもらえてよかった、いてくれてよかった」と思われる関わり方をモットーにしている。

<著書>
「グチの教科書」(マイナビ出版)

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