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【基調講演】金融教育から人間発達を促す
〜情報活動に基づいた人間発達を目的とした金融教育の実践〜
web.03
(2016.08)
岐阜大学教育学部教授 大藪 千穂 先生

大藪 千穂 先生
岐阜大学教育学部教授 大藪 千穂 先生

私は岐阜大学の教育学部で家庭経済学・家庭経営学を教えています。今日は、これまでやってきた金融教育のバックグラウンドと内容について、高校の先生方にご紹介したいと思います。

全体構成

Ⅰ 金融教育の背景とその内容
(1)金融教育の背景〜海外〜
(2)金融教育の背景〜日本〜
(3)金融経済教育の現状(米国・英国)
(4)日本の状況
(5)学校教育現場での金融経済教育
(6)今後の金融経済教育のあり方
Ⅱ 情報活動を基盤とした金融経済教育の実践
(1)「人生設計ゲーム」の開発
(2)「人生設計ゲーム」の実践結果
Ⅲ 今後の金融教育の方向性
(1)高校では
(2)「人生設計ゲーム」の意義

Ⅰ 金融教育の背景とその内容

(1)金融教育の背景〜海外〜

最近、金融教育が脚光を浴びています。昔から携わってきた人間にとっては「こんなに取り上げられていいの?」と思うことでしょう。

そのバックグラウンドとしては、まず海外ではオイルショック以降の、金融を目的に金融で稼ぐ「金融資本主義」の台頭があります。2000年代以降は複雑な金融商品がたくさん出て、それに伴って消費者が大きな損やローンを抱えるようになり、2008年にリーマン・ショックが起こったことが非常に大きいと思います。リーマン・ショック後の対応策としては、ゞ睛撒ヾ悗悗竜制を行い、⊂暖饉塋欷鄒策は強化し、さらに金融教育をしていこうという方向になりました。

(2)金融教育の背景〜日本〜

◆少子高齢化社会

日本では、今まで私たちが習ってきたことが当てはまらない状況になったことが挙げられると思います。
少子高齢化の日本では、2060年には75歳以上が27%、65歳以上が40%と、非常に多くの人が高齢になります。

私たちの世代では「核家族化」がよく言われていましたが、近年それはどうなのかと言われていることは皆さんもご存じだと思います。ここで核家族とは、”徂悗里漾↓夫婦と子どもから成る世帯、0貎与討隼劼匹發ら成る世帯の3つを指しますが、一般的に核家族と聞いてイメージするのは夫婦と子どもから成る世帯だと思います。その割合が非常に下がってきていて、今や日本で一番多いのは単独世帯です。したがって、核家族化を取り上げるよりは、1人になったときどうするかを考えるライフプランが必要になってくると思います。また、1人親世帯も年々増えてきています。

◆ライフサイクルの変化

ライフサイクルの変化 日本人のライフサイクルも変化しました。
1920(大正9)年は、夫25歳・妻21歳で結婚し、夫は55歳で定年を迎え、61歳で死亡しています。今から考えると早いですよね。そして妻の死亡も61.5歳と早く、ほぼ60年間で人生が終わっていました。

1961(昭和36)年になると、夫が60歳で引退してから死亡するまでの時間は長くなりましたが、妻の死亡もその1年後くらいなので、1人の時間は短かったといえます。

それが2009(平成21)年になると、晩婚化が進んで結婚は夫30歳・妻28歳。夫が65歳で引退してから死亡するまでが非常に長くなり、そこから妻が死亡するまでの期間がさらに延びています。つまり、夫婦2人や単独でいる老後期間が長くなってきたということです。

このような変化から考えなければいけないことは、親世代が子ども世代に「(自分たちがこうだったから)こうしなさい」と言える状況ではなくなったということです。

ここで一番大きな問題は、引退する年齢はあまり変わらないので、結婚が遅くなったことで、子を産み、家を建て、教育費を払って老後の準備をする、それをとても短い期間でやらなければいけないということです。これがライフプランニングの最も大きな変化だと思います。

この変化で大変なのは、一番お金がかかる住宅費や教育費が一気にやってくることです。しかも老後の生活が長く、20年分くらいの準備が必要になります。こうした変化を生徒たちも知らなくてはなりません。

未婚率も上がっています。39歳くらいまでの男性の35%、女性の23%が未婚です。ここからも晩婚化が進んでいることがわかります。また、50歳時の未婚率(生涯未婚率)は、男性の20%、女性の10%です。90年以降、急激に未婚率は上昇しますが、これは次の「経済の悪化」が影響しています。

◆経済の悪化

経済の悪化 金融資産ゼロ世帯は、20歳代で40%。高齢になっても30%くらいの世帯が金融資産ゼロです。金融資産ゼロ世帯が増えてきていることは、結婚できない人が増えてきているということです。

また、家計貯蓄率はどんどん下がっていて、家計の状況は非常に悪くなっているということがわかります。

世帯別では、一般世帯と、高齢者世帯・母子世帯では、大きな差があります。

したがって生活設計では、世帯の類型によってかなり所得が変わってくることを考慮して、どんな世帯になったとき、どのようにプランニングするかを考える必要があります。

正社員か非正規かによっても収入はかなり違ってきます。

正社員も50代をピークに年収がどんどん下がりますが、非正規とはかなり距離感があります。いったん非正規になると、正社員になるのはとても難しく、ずっと非正規でいると平均年収が290万円とかなり低所得になってしまいます。

生涯賃金では、正社員が2億5000万円くらいなのに対し、非正規は1億1000万円と半分以下で、さらに退職金、年金も大きく差が出てきます。

就職・結婚しても、非正規になる可能性があるため、そうなったときにどうなってしまうのかまでを考えないといけない時代になってきたということがバックグラウンドにあります。

(3)金融経済教育の現状(米国・英国)

そうならないために金融教育をしていきましょうという動きが海外では進んでいます。

アメリカには日本のような全国統一的な教育カリキュラムはありませんが、州ごとにさまざまな取り組みが行われています。リーマン・ショックでは、低所得者が、知識がないために多額のローンを抱えてしまったため、子どもたちへの金融教育が特に強められたといわれています。

イギリスは、サッチャー政権による証券制度改革「金融ビッグバン」以降、90年代以降に金融教育が学校教育に組み込まれました。

(4)日本の状況

日本の金融教育はリーマン・ショックのようなきっかけから始まったのではなく、いろいろな主体が独自に行ってきました。日本ではお金に関する教育に統一した定義がまだないため、経済教育、金融教育、投資教育、消費者教育など非常に多くの分類があります。

◆経済教育

経済教育とは、大学の経済学部などで行われている経済学の基本理念、経済や経済制度の理解、政策を議論するなどの枠組みをいいます。

◆金融教育

金融教育とは、金融庁と金融広報中央委員会がやっているものです。始まりは1946年、戦後のお金のない時期に貯蓄を増進するための「救国貯蓄運動」でした。私が学生のとき知っていたのは「貯蓄広報中央委員会」でしたが、それからは貯蓄というよりは、経済・金融・通貨についての知識や情報を提供する方向に変わって「金融広報中央委員会」となり、金融教育の支援と金融知識の普及に努めています。

金融広報中央委員会では、健全な金銭感覚を身につけて自立できる人間形成を目指し、「金銭教育」と「金融教育」を行っています。

金融庁では、金融リテラシーを身につける「金融経済教育」のため2012年に金融経済教育研究会を立ち上げ、2014年に「金融リテラシー・マップ」を公表しました。これは金融経済教育に関する統一的なマップで、金融リテラシー概念を4分野・15項目に分類し、学校段階や社会人、高齢者など、どの段階で何を学ぶかを示したものです。インターネットでも公開されています。

◆投資教育

実はそれより早く行われていたのが投資教育なのですが、学校教育では、金融教育の応用編・実践編ととらえたほうがよいかと思います。米国・英国では投資教育という表現はあまりなく、金融リテラシーの一分野として扱われています。

◆消費者教育

消費者教育家庭科でよく取り上げられる分野で、金融経済教育を消費者教育の中に位置づけています。

2013年に消費者庁は、消費者教育の4つの領域と、消費者のライフステージごとに消費者教育の目標をまとめた「消費者教育体系イメージマップ」を公開しました。金融経済教育は、この4領域のうち「消費者市民社会の構築」と「生活の管理と契約」に位置づけられます。

(5)学校教育現場での金融経済教育

では学校では金融経済教育がどのように取り上げられているかですが、現場の先生方もどのように扱うか、お悩みのところだと思います。学校教育現場では、主に家庭科と社会科で取り扱います。

◆家庭科

小学校:「身近な消費生活と環境」
モノや金銭の活用の視点から生活を見つめ、限りある物や金銭の大切さに気づき、自分の生活が身近な環境に与える影響を知り、主体的に生活を工夫できる消費者としての素地を育成

中学校:「身近な消費生活と環境」
消費や環境に関する実践的・体験的な学習活動を通して、消費生活と環境についての基礎的・基本的な知識及び技術を習得し、消費者としての自覚を高め、身近な消費生活の視点から持続可能な社会を展望し、環境に配慮した生活を主体的に営む能力と態度を育成

高校:生涯の生活設計
生活と経済のつながりや主体的な資金管理の在り方、リスク管理など不測の事態への対応などにかかわる内容を重視

リスクや保険については高校の家庭科で取り上げられることが多く、高校でやることの意味や重要性がおわかりいただけるかと思います。

◆社会科

小学校:3・4年生
児童が住む地域を取り上げて、地域産業や販売の仕事に携わっている人の工夫を調べる学習と関連づけて消費者側の工夫を学習

中学校:公民分野
消費生活を中心に学び、経済活動の意義について考え、個人と社会を結びつけて学習

高校:公民
個の視点で消費を把握し、現代の社会の中の金融・消費の現状を考えさせ、個を取りまく全体としての社会の問題として、経済に関して考察する態度や解決していこうとする姿勢を形成

社会保障としての保険は、この高校の公民で学習していくことになります。

◆学校教育における金融経済教育の方向性

学習指導要領では、主に家庭科と社会科で関係する内容が独自に扱われており、統一した金融経済教育の主体や内容、指導方法はまだ確立されていません。今、問題とされているのは、主体が文部科学省、消費者庁、金融庁などに分かれていて、なかなか統一的に進めることができないことです。私個人の意見としては、この分野は知識が必要でありながらも、学校教育で行うためには、教育が本来持っている「人間発達を促す」という目的が必要だと考えます。

ライフスタイルや経済状況がどんどん変わっていく中で、今の子どもたちが大人になったとき、「習ったことがそのまま活かせる」という場面は少ないでしょう。そこをどうカバーするか。そのためには、子どもたち自身の人間発達を促すことを目的として知識を教え、あとは自分でできるようにすることが重要ではないかと思います。

その時点での問題の解決のみを目的とする、いわば対症療法的な知識提供ではなく、時代の変化によって発生する新しい金融トラブルにも対応できる「+α」が必要ではないかと考えます。

(6)今後の金融経済教育のあり方

◆主体

多くの機関が金融経済教育に携わるようになり、資料も増えていい環境になってきました。一方、資料が多すぎて、どこに何があるのかがわかりにくく、使おうと思ってもなかなか使えないといった混乱も生じています。それを整理するためにも、主体の体系化が必要であると思います。

◆内容

金融庁、消費者庁の各マップで示されている内容と学習指導要領との調整ができていません。このままでは学校では使ってもらえないので、文部科学省とのすり合わせが必要になってくるかと思います。

◆方法

時間がないことも大きな問題です。学校教育では金融経済教育の時間を十分に取ることは難しいのが現状です。人権教育、情報教育、環境教育もある中で、「大事なのはわかっているけれど、とにかく時間がない。どれが大事とは言えない」という現場の声をよく聞きます。家庭科・社会科だけでなく、算数や国語などのさまざまな既存教科の中に組み込んでいく必要があります。

◆意味の再考

消費者教育や金融教育を何のためにやるのかというと、子どもたちの人間発達を促すのが目的です。人間発達を促す視点を加えて、教材や授業を工夫することが重要です。
次に、その一環として開発しました「人生設計ゲーム」についてご紹介したいと思います。

講演風景

Ⅱ 情報活動を基盤とした金融経済教育の実践

(1)「人生設計ゲーム」の開発

◆「人生設計ゲーム」分析のコンセプト

このゲームは、‐霾鶻萋亜↓⊃祐嵌達、8充打聴力の3つを促す視点で作られています。

‐霾鶻萋阿了訶
新しい情報があふれる中、子どもたちが卒業後、情報の波に溺れてしまわないようにするためには、やはり情報力が重要なのではないかと考えて研究を続けてきました。そのなかで、情報の収集力が高い生徒は人間発達が進むということがわかってきたので、ゲームにも情報活動の視点を入れました。

⊃祐嵌達の視点
授業を通してどのように人間発達が進んだかということですが、人間発達というのは、まず現状がわかる「現状把握」、次に自分のこととして考える「価値の内面化」、そして、自分はこうしようという「自己創造」の3段階を踏むと考えられます。そこで、ゲームをやった後の感想から、生徒をこの3段階に分けていくことにしました。

●「現状把握」:生徒の感想で「面白かった」「お金がかかることがわかった」など、単に現状に関して感想を述べているもの ●「価値の内面化」:「こんなにお金がかかるのに両親はどうやっているんだろう」「子どもにお金がかかることが少子化の原因なのでは」など、物事を掘り下げて考え、悩んだり葛藤したりしているもの ●「自己創造」:教育費は思ったよりかかるが、自分はどうするべきかを考え、「保険に入ることが大切だ」「どのような保険が必要か調べたい」など、現状を知ってわかったことから自分なりの工夫を加えているもの

8充打聴力の視点
ゲームを通じてさらにわかったことは、物事の把握のしかたが生徒によってずいぶん違うということです。生徒の現実把握力は、大きく次の3つに分かれます。

●「漠然としている」:楽しい、幸せな人生、など内容が漠然としたもの ●「少し現実味がある」: お金をためてから結婚して子どもは2人欲しい、など少し現実味があるが、かといってかなり現実的な内容でもない夢物語的なもの ●「かなり現実的である」: 「大学卒業後、教員の資格を生かして小学校で教え、同級生と結婚して、27歳には第一子を産み、育児休暇を利用して3人まで出産する。その後、また小学校の教諭に戻り、退職まで共働きをする。その間に家を購入する」など、かなり具体的で現実的な内容のもの

◆ゲームの内容

ゲームの内容 .曠錺ぅ肇棔璽鼻20歳〜寿命)1枚 ※紙でもよい ◆崛択不可能なライフイベント」パネル20枚 「選択可能なライフイベント金額表」・「年収表」・「生活費表」・「保険表」各1枚 ぁ嵜誉言澤廛押璽燹徂床蘇 ァ嵜誉言澤廛押璽燹徂床蘇修良床繊紛技嬪僉 Α嵜誉言澤廛押璽燹廛襦璽襯屮奪(本体)

◆ゲームのルール

(1)1人でゲームをする。
※これが一番の特徴です。発表することや、話しながら行うのはいいですが、自分の人生ですから、基本は1人で行うということです。また、現代は老後が長くなっていることから、寿命まで行うことも重要です。
(2)10年ずつ、自分の人生設計を考えながら、ホワイトボードに記入していく。
☆ただし小・中学生は、マニュアルに示してある3つの人生タイプから1つ選んで、そこに書かれてある金額を記入する。10年後に人生タイプを変更してよい。 ☆高校・大学生は、マニュアルを参考に計算する。 ’収→「年収表」を参考に、10年分を計算して記入する。
∪験菷顴「生活費表」を参考に、10年分を計算して記入する。
A択可能なライフイベント→選択して金額を記入する。何個選択してもよい。
せ劼匹發龍軌虍顴子どもが生まれたら子どもの年齢を年代ごとに書き(例0才→9才)、「選択可能なライフイベント金額表」を参考にその間にかかる教育費を年齢の下に記入する。
ナ欷陰「保険表」を参考に、10年分を計算して記入する。
☆保険は各年代で加入するかどうかを選択する。 ☆保険に入っていない場合、「選択不可能なライフイベント」を引いた時に、保険に入っている場合よりも、支払う金額が多くなることがある。 借金→借金がある場合はその年の借金残高を記入する。
☆家を購入した場合、購入金額の払える分を一括して払うが、残りは返済できる時にする。 (3)各年代の終わりに「選択不可能なライフイベント」のパネルを見ずに1つ引く。
☆その年代で保険に入っていた場合、書かれている金額から200万円を引いた金額を支払えばよい。 ☆保険に入っていない場合は、書かれている金額を差し引く。 (4)寿命まで終了したら、最終所持金額を貯蓄額(残高)の欄に記入する。
(5)ゲームが終了したら、「人生設計ゲーム」チェック表で自分のタイプを確認する。
(6)評価表に記入する。

選択可能なライフイベント
選択可能なライフイベント 選択可能なライフイベントは次の中から選択します。

例えば結婚では、お金がなければ150万円の方を選びます。車は、どちらかを選んで10年に1度買い換えます。

保険はとても便利にできていて、何事があっても200万円までサポートされます。まずは保険というものを知ってもらうために設定しました。

選択不可能なライフイベント
選択不可能なライフイベント このゲームは10年単位で進みます。10年ごとに1枚のパネルを引くと、この中のどれかを引き当てることになります。内容はかなり現実に沿っていて、地震や泥棒などマイナスイベントもあれば、株で利益を得るなどのプラスイベントもあります。

年収表
年収表 年収は公務員をベースにしているため少し高めになっています。最終的に残るお金が何億という生徒もいれば、赤字になる生徒もいます。

チェック表
チェック表 最後に人生をチェックしてもらうためのものです。

◆「人生設計ゲーム」を用いた授業案とマニュアル

「人生設計ゲーム」を用いた授業案とマニュアル 「人生設計ゲーム」を用いた授業案とマニュアル 授業は、最初にアンケートに答えてもらい、ルールを説明し、ゲームを開始します。ルールは一見難しいかもしれませんが、子どもたちは“ゲーム慣れ”していて、説明の途中から「わかった」とやり出す生徒もいたくらいです。小学生から大学生まで実施しましたが、小学生でも5年生からは十分可能です。ゲームの途中も席を回りながら説明をしていきます。
最後に評価表と感想を書いて終わります。

収入や生活費の計算をしていると50分では時間が足りない場合もあるため、「簡単バージョン」も作成しました。
簡単バージョンでは、年収と生活費があらかじめ記入されている3つの人生タイプから人生を選びます。
人生タイプは。運佑琶襪蕕后↓結婚して1人が働く、7觝Г靴藤何佑働く、の3タイプで、10年ごとに変更できます。小・中学生の場合は結婚・出産のイメージが難しいと考えて、結婚は26歳、出産は27歳に設定されています。

◆授業の効果をみるための資料

授業の効果をみるための資料としては、授業前のアンケートと、授業後の評価表を使っています。

情報活動に関するアンケート (1)情報活動に関するアンケート(情報活動グループに分類するため実施)
 情報活動を、収集、蓄積、活用、発信の4つに分け、情報活動グループに分類します。

(2)授業前の考え方に関するアンケート(現実把握力をみる)
 ライフイベントに対する考え方と、どのような人生を送りたいかを聞き、現実把握力をみています。

(3)授業後の評価表(現実把握力と人間発達をみる)
振り返りで「現状把握」「価値の内面化」「自己創造」の3段階に対応した問いを9つ用意し、最後にどのような人生にしたいかをもう一度書いてもらって、その変化をみています。

授業前のアンケート授業後の評価表

(2)「人生設計ゲーム」の実践結果

◆実践した学校

小学校 2校 3クラス 92人
中学校 5校 17クラス 510人
高校 4校 6クラス 252人
大学 5校 8クラス 125人
合計 16校 34クラス 979人
分析に用いた人数 737人

◆分析対象者の属性

分析対象者の属性高校生の属性

※高校は、女子校があったため女子の割合が大きくなりました。

◆情報に関するアンケート

情報に関するアンケート 情報活動については、収集と活用が非常によくできる生徒たちでした。蓄積と発信に関してはあまりないようです。

◆授業前のライフイベントの考え方

授業前のライフイベントの考え方 結婚・就職、働き方、貯蓄について考えたことがある生徒が6割以上あり、かなり考えているなという印象です。保険については4割ですが、これも多い方だと思います。ただ、家や教育費についてはほとんど知らないのが現状です。働き方について、3割がわからないと言っていますが、フルタイム・パートを含め「共働き」と答えた生徒が多く、専業主婦は少ないことがわかりました。

◆授業前後の自由記述による「現実把握力」の変化 〜どのような人生を送りたい?〜

授業前後の自由記述による「現実把握力」の変化授業前後の自由記述から「現実把握力」をみると、キーワードが増えています(授業前は17項目、授業後は19項目)。お金に関するコメントが授業後は非常に多くなりました。

右側のグラフは現実把握力をみたもので、事前は漠然としたことを書いている生徒が多かったのに対し、事後は激減し、「少し現実味がある」+「かなり現実的である」が8割を占めました。

個々の自由記述の変化をみると、例えば、事前は「お金に困らない人生」としか書いていなかった生徒が、事後は「共働きだとお金に余裕ができることが分かった。想定しないことも起こり得るので、お金を貯めておくことは大切だと思った」と、言葉が増えているだけでなく、現実的な内容に変わっています。

◆授業後の評価表と自由記述による「人間発達」

授業後の評価表と自由記述による「人間発達」評価表でも自由記述でも、「自己創造」が多くなっています。

◆授業前後の「現実把握力」と「人間発達」

授業前後の「現実把握力」と「人間発達」事前で漠然としたことを書いている生徒は「現状把握」段階であることが多く、事前でかなり現実的なことを書いている生徒は数少ないですが「自己創造」が割合としては高くなっています。

事後は、漠然としたことを書く生徒は数が減り、かなり現実的なことを書いている生徒は「自己創造」が57%と高くなりました。

この結果から、「人間発達」と「現実把握力」には関係があることがわかります。現実把握ができる生徒は人間発達が進みやすいということです。

「情報活動グループ」による分析

「情報に関するアンケート」に基づいて、生徒を「数量化稽燹廚函屮ラスター分析」によって3つのグループに分類しました。

3つの「情報活動グループ」 。海弔痢崗霾鶻萋哀哀襦璽廖
○○は収集もできて活用もできたグループ、××はどちらもダメだったグループ、○×は収集ができて活用はできないグループです。

「情報活動グループ」の属性 ◆崗霾鶻萋哀哀襦璽廖廚梁粟
男女別の数では、圧倒的に男性が××グループに多いという結果になりました。○○グループには一般的に女性が多いですね。高校生では××が17.5%、○○が約40%の結果です。

授業前後の自由記述による「現実把握力」の変化 授業前後の自由記述による「現実把握力」の変化
事前は、どのグループも漠然としたものが多いのですが、特に多いのが××グループでした。

事後は、○○グループの「現実的」が48.5%と一番高くなりました。また××グループでも、漠然としたことを書く生徒は少なくなって、現実的なことを書くようになってきたので、差はありますが、人生設計ゲームが意味を持ったということがわかります。

授業後の「人間発達」 ぜ業後の「人間発達」
人間発達に関しても同様で、○○グループは自己評価も自由記述も「自己創造」が高まりました。

◆「情報グループ」の特徴 〜「現実把握力」と「人間発達」

「現実把握力」と「人間発達」ここから何がわかるかということですが、情報の「収集力」と「活用力」が、「現実把握力」と「人間発達」の両方に大きな影響をもたらすということです。小学生は両方、中学生と高校生は「収集力」が「現実把握力」に影響をもたらし、大学生になると、「現実把握力」には「収集力・活用力」が影響し、「人間発達」には「活用力」が影響と、両者が影響してくることがわかりました。

小学生から大学生までを通してみてみると、「どこで何を教えていかなければならないか」がわかってきます。

Ⅲ 今後の金融教育の方向性

(1)高校では

高校生になると、自分の力でさまざまな媒体を通じて情報収集が容易にできるようになりますが、「収集力」が「現実把握力」に影響することが明らかとなりました。このため、「収集力」の差によって、「現実把握力」や「人間発達」に差が生じてくることがわかります。ですから、高校生期には情報の「収集力」を高める授業をすることが重要といえます。例えば何かを調べてくるとか、言ったことを書き留めるなど、収集ができる力を自分で高めることが効果的ということです。

消費者庁のイメージマップでは「主体的に生活設計を立ててみよう。生涯を見通した生活経済の管理や計算を考えよう」という目標がありますが、「収集力」が「現実把握力」に影響することがわかったので、イメージマップの通りではなく、生活管理の情報を自主的に収集することで、生涯を見通した生活経済の管理や計算ができるようになるための教育をしていくことが重要だと考えます。

(2)「人生設計ゲーム」の意義

生徒の情報活動によって効果は異なりますが、「収集力」と「活用力」は授業効果に大きな影響がありました。早い時期から「現実把握力」をつけることで、実際の行動に活かすことが容易になり「人間発達」が進むのではないかと思います。人生設計ゲームは、子どもたちが自分の人生を自分自身で切り開いていくきっかけとなります。

情報の「収集力」と「活用力」の獲得を支援する教育は、「現実把握力」と「人間発達」を促すことがわかっています。これは、金融教育、保険教育、消費者教育の枠だけでなく、すべての教育に適用できる能力であり、知識+自分で情報を収集し活用できるようになると、卒業後もトラブルに巻き込まれず、情報を適切に選択していくことができるのではないかと考えます。

講演風景

 

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