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キャリア教育の一環としての『キッズ・ベンチャー』
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(2007.5)
大阪教育大学 教職教育研究開発センター 准教授   関 隆晴 先生
はじめに はじめに
大阪教育大学では、体験型早期起業家教育の一つ「キッズ・マート」に、ものづくりの視点を加えた『キッズ・ベンチャー』を、大学の所在地である地元大阪府柏原市の産業振興課、柏原市教育委員会、柏原市商工会、柏原市内の小学校との連携により、2002年度から実施している。また2006年度は、「地域連携学校教育のできる教員養成」プロジェクトが文部科学省の「現代的教育ニーズ取組支援プログラム」(現代GP)に採択されたが、『キッズ・ベンチャー』はこのプロジェクトを構成する3つの取り組みの中の一つである。
キッズ・ベンチャーとは 授業の目標
子どもたちが自分達で開発した商品や仕入れた商品をお店で売って利益の使い道を考える、起業家教育をベースとしたキャリア教育である。 この授業を通して、子ども達は学級の枠を超えたグループで会社組織を作り、地域ボランティアや大学生サポータと共にモノづくりから販売までを企画・実践する、9ヵ月に及ぶ総合的な学習の時間を活用した学校教育プログラムである。
活動目標 授業展開
子どもたちの目標
  • 自分たちでつくったモノをお店で売って儲ける過程を通し、経済産業活動の基本認識を育てる。
  • 多様な地域人材の支援によるグループ活動において、創意工夫・独創性・表現力・コミュニケーション能力・課題発見・解決能力等、自らの人生を切り拓くことのできる力を身につける。
学生の目標
  • モノづくりから販売までを行う子どもたちの活動を指導・支援することにより、多様な場面における子どもをより深く理解 し、子どもの潜在能力を引き出す力を養う。
  • 学校や地域の多様な人材との交流を通じて、地域連携学校教育のできる教員として求められる人材コーディネート力を培う。
大学の目標
  • 地域連携学校教育のできる教員を養成する。
  • 地域と大学の支援による学校現場を中心とした教育の実施体制モデルを構築する。
  • キャリア教育用教材を開発する。
学校の目標
  • 総合的な学習に求められる「生きる力」の育成の場を充実させる。
  • 他教科と関連させた体験学習を充実させる。
  • 地域を担う人材を育成する。
地域の目標
  • 地域の教育力の向上を図る。(地域教育委員会)
  • 地域産業の活性化を図る。(柏原市・商工会)

実施体制 授業展開
キッズ・ベンチャー 大阪教育大学モデル
学校の児童・教諭、保護者、大阪教育大学の学生・教職員、柏原市の職員、地域の一般企業や市民ボランティアがそれぞれの思いを持ちつつ、連携して活動を進めている。
活動内容 授業の目標
多彩な人材の参画により運営される本プログラムでは、様々な効果や成果が期待できるが、教育改革のGP(グッド・プラクティス)という点では、これまでの学校教育では実現できなかった経済産業活動の基本を体験できるカリキュラムを学校に提供し、学生が多彩な地域人材とともに活動に参画することにより、新たな実践的教員養成を行っているということができる。
その活動内容を、モデル校として4年連続して実施している柏原市立柏原小学校の2006年度の活動経過と会社一覧により紹介する。
<活動概要>
活動概要
 
<2006年度 柏原市立柏原小学校第4学年での活動経過>
時期 テーマ 活動時間
5月 1.「キッズ・ベンチャーを始めよう」
      導入授業・動機付け
1時間
6月 2.「作ってみよう」
      たまねぎ染色・ひょうたん加工・粘土細工
6時間
3.「どんな商品があるかな」
      商品例展示
1時間
4.「グループを作ろう」
      作成商品により、グループに分ける
5.「新聞記者になろう」
      商店街でのお店調査のインタビューの仕方についての学習
2時間
7月 6.「地域のお店を調べてみよう」
      校区の商店街の勉強
      夏休みの『商店街新聞』作成の指導
1時間
7.「どんな商品を作ろうかな」
      商品開発・知財教育
3時間
9月 8.「お店新聞コンクール」
      児童による商店街新聞の選考
1時間
9.「会社を作ろう」
      会社名、商標、理念、役職の決定
1時間
10.「どんな商品をいくつ売ろうかな」
       販売戦略、販売計画
1時間
11.「必要なお金はいくらかな」
       原材料費と必要経費の計算
1時間
10月 12.「銀行でお金を借りよう」
       利益見積もり
2時間
13.「材料を仕入れよう」
       商材や原材料の仕入れ、お店代や道具代等経費の支払い
1時間
14.「製造工場で働こう」
       商品作成 原材料加工・商品として仕上げ
7時間
11月 15.「宣伝をしよう」
       看板、のぼり、ポスター、チラシの作成
4時間
16.「売り方を考えよう」
       商店主から小売業の話を聞く、挨拶の練習
1時間
17.「入ってきたお金(売上げ)を正確に記録しよう」
       商品と売値の最終決定、売上げ記録の仕方
1時間
18.「販売準備をしよう」
       商品確認、値札付け、おつりの確認
1時間
19.「柏小わくわくキッズ・マート」
       販売活動
5時間
20.「いくら儲かったかな」
       収支決算、銀行に返済、利益の確認
1時間
12月 21.「活動を振り返ってみよう」 1時間
22.「新商品を開発しよう」
       新商品開発、知財教育
1時間
23.「活動を記録しよう」
       『キッズ・ベンチャー日誌』を基に児童感想文
       お礼の手紙
2時間
1月 24.「利益の使い道について考えよう」
       H17年度の利益使途の話を聞いて考える
1時間
2月 25.「ユニセフ学習」
       ユニセフ活動の紹介
       インターネットでユニセフについて調べる
       「ユニセフ」新聞作り
5時間
<2006年度 会社一覧>
会社名 取扱商品
ひょうたんDX 栽培した瓢箪の加工商品
ウィンターナチュラルショップ 地元特産ブドウのつるのリースや木の実の加工商品
スーパー・ザ・ねんどろー 手作り粘土の焼き物商品
マルタ君の木工細工屋 自然素材を活用した木工細工商品
木工細君 木材を使った加工商品
ボタンのベストベンチャー 産業廃棄物のボタンを使ったオリジナル商品
ごみパワーアップ会社 廃油石けんや不用になった布などのリサイクル商品
そめもの畑 たまねぎや藍で染めた布商品
オリジナルノート店 和綴じのメモ帳や、猫の写真入りカレンダー
トリプルラッキー店 カラーワイヤーの加工品、キャンドル、地元の新鮮野菜
手作り手芸店 手編みのマフラー、手鏡、コサージュなどの手芸品
おわりに 生徒の反応
今、教育の中で最も求められているのは、『自分が社会の中でどう生きていくか』ということを小さい時から学んでいくということである。それはキャリア教育という言葉でもあらわされているがキャリア教育の一環として、小学校の時から社会的なシステム、経済的なシステムにふれ、仲間との共同作業の中で自分の目的を達成する成就感などを味わうことがキッズ・ベンチャーのいいところである。
柏原市においてこれまで5年間取組んできたが、毎年子ども達の感想文には充実感と満足感が溢れている。今年度も柏原市において継続実施されることが決まっているが、全国の学校にキッズ・ベンチャーが普及することが期待される。

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発行/(財)生命保険文化センター