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授業実践報告
『省エネルギーと環境に優しい家づくりを企画しよう』
〜エコハウス企画への挑戦〜
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(2007.8)
    光市立浅江中学校 河本 政之 先生
1.はじめに 1.はじめに
本校では、3年前より金銭・金融教育(平成18年度指定終了)ならびにエネルギー環境教育の指定をいただき日々の授業実践に取り組んでいる(金銭・金融教育の指定は山口県金融広報委員会からの指定、エネルギー環境教育の指定は(財)社会経済生産性本部エネルギー環境教育情報センターからの指定)。

指定を受けた当初は、何をどのように学ばせることで、子どもたちの学習成果を最大限に引き出すことができるのか、試行錯誤の連続であったが、全教科での地道な取り組みから、学習成果の高まりが感じられるようになった。
なかでも、各学年全教員が参加し学習を展開する「総合的な学習」において、大きな収穫があったと考えている。

今回は、金銭・金融教育ならびにエネルギー環境学習を軸に据えて展開した総合的な学習「省エネルギーと環境に優しい家づくりを企画しよう〜エコハウス企画への挑戦〜」について紹介させていただく。
2.単元構成の意図 2.単元構成の意図
本単元は下の図のように、学習課題「省エネルギーと環境に優しい家づくりを企画しよう〜エコハウス企画への挑戦〜」の解決を図る活動を通して、金銭・金融ならびにエネルギー環境・郷土に関する知識の獲得をねらいとしている。

よって、学習課題の解決のみに注目するのではなく、あくまでも、その学習課題を解決するための子どもたちの学習過程に注目しながら指導にあたることが重要となる。このことで、子どもたちは、3分野の知識の獲得だけでなく、それぞれの内容の関連を見い出しながら学習に取り組むこととなり、内容や意義をより深く捉えることができるようになる。
また、このように複数の視点から捉え直す学習活動のもと獲得された知識は、より実用的な知識として活用されていく。

次に、この単元は、下図のとおり大きく2つの学習活動から構成されている。
「共通課題を追究する段階」「追究過程を検証する段階」の2つの学習の流れを仕組むことで、子どもたちが調べ・考え・発表した後の疑問点・課題点を授業で取り上げることができ、子どもたちの主体的な活動を継続させていく効果も期待できる。
授業イメージ
3.単元構成ならびに活動内容 学習の評価
(1)単元構成 「省エネルギーと環境に優しい家づくりを企画しよう〜エコハウス企画への挑戦〜」
段階 学習内容・活動 主眼
共通課題を追究する段階 1 課題との出会い 現在の資源や環境の様子を知り、省エネ・環境保全の必要性を感じ、学習課題に対する関心を高めることができる。
2 仮説の設定 これまでの学習や生活経験から得た知識をもとにして仮説を立てるとともに、仮説を追究する上で有効な調査項目を設定することができる。
3 調査活動 課題解明のために必要な資料を収集したり、吟味したりすることを通して、仮設を裏付けたり、新しい可能性を発見することができる。
4 意見の構築 調査結果を分析して、自分なりの意見を作りあげることができる。
5 発表・討論 討論活動を通じて、様々な認識の違いを読み取るとともに、さらに調べてみたいことや疑問点を整理し、自分なりの意見をまとめることができる。
6 まとめⅠ これまでの調査活動を振り返ることを通して、さらに調べてみたいことや疑問点を整理するとともに、自分なりの意見をまとめることができる。
7 販売企画会議1
(追究活動の検証と新たな視点獲得)
ビデオ視聴と討論活動を通じて、これまでになかった環境問題以外の経済面(費用面)の重要性に気づくことができる。
販売企画会議を実施し、学習計画を見直すことを通して、自分たちが選択した内容や方法が、適切であったかどうかを判断することができる。
追究過程を検証する段階 8 金融の仕組み
(世の中のお金の動き)
提案された企画から、金銭に関する提案が少ないことを確認する活動を通じて、金銭面からのアプローチの必要性に気づき、世の中のお金の動きに対する関心を高めることができる
9 エネルギーの現状 世界・日本・都道府県・市町村規模でのエネルギーに関する現状を知り、資源・経済の視点からの考察を通じて、価格・資源両面からの省エネルギーの必要性や改善策について理解・提案することができる。
10 家づくりの現状と歴史 日本古来の家づくりや最新の家づくり技術に触れる活動を通じて、地域・日本の風土にあった家の構造・部材の特色を理解し、省エネ・省コストに関する多様な知識を獲得することができる。
11 デザインの検討
(形や色で何かが変わる?)
美術科・技術科教員からのデザインや色のもつ特性に関する講義を通して、自然との調和の重用性に気づかせることで、複数の視点を獲得させる。
12 未来像を探る 今後の山口県(周南・光)の姿を中国地方や日本と重ねながら捉える活動を通して、「経済」「資源」「文化」の視点から未来像を捉えることができる。
13 販売企画会議2
(追究過程のまとめ)
(金銭教育のまとめ)
販売企画会議を再度実施し、学習内容を見直すことを通して、学習課題を解明するために、自分たちが選択した内容や方法が、適切であったかどうかを判断することができる。
14 まとめⅡ
(最終発表会)
これまでの学習活動を振り返ることを通して、省エネ・環境対策の必要性を理解するとともに、新たな課題を発見することができる。
15 方法面の検証 これまでの学習活動の方法を検証することを通して、課題解決につながる有効な方法を明らかにすることができる。
(2)活動内容
段階 学習内容・活動 時間 会場
(形態)
主な学習活動
共通課題を追究する段階 1 課題との出会い 2 武道場
(一斉)
・ビデオ視聴(環境問題)
 「MISSION POSSIBLE !?」
・ねらいの説明
・世界規模の環境や経済問題についての確認
2 仮説の設定
3 調査活動 2 各会場
(個人)
(小集団)
・何を調べるのか(内容)
・どんな方法で調べるのか(方法)
・だれが何を調べるのか(分担)
・発表での役割分担をどうするか(分担)
4 意見の構築
5 発表・討論 2 各会場
(一斉)
(個人)
(小集団)
・発表活動への準備(1時間)
・発表活動(1時間)
・発表の振り返り(態度・内容)
・調査方法の振り返りと新たな方法検討
(振り返りのための学習シート)
・ビデオ視聴「未来はぼくらの手に」
6 まとめⅠ
7 販売企画会議1
(追究活動の検証)
追究過程を検証する段階 8 金融の仕組み
(世の中のお金の動き)
2 各会場
多目的室
(一斉)
・現在の生活の振り返り
・お金の価値
・信用によって成り立つ経済
・株式模擬売買
・企業の仕組み
9 エネルギーの現状 2 現地視察
(中国電力訪問)
・エネルギー事情について
(世界・日本・周南・光地域)
・中国電力の方からの講話
(現状と対策、今後の課題と対策等)
・現地でのエネルギー実験(火力・水力・原子力・風力・バイオマス発電の仕組み)
10 家づくりの現状と歴史 2 武道場
(一斉)
・省エネと家づくりについて
・構造による安全対策
・高齢化に対する対応等(ハウスメーカー)
・伝統的な家づくり(地域の方々)
11 デザインの検討 2 多目的室
各会場
(一斉)
(小集団)
・デザインの効果と実用性
(前時の確認ならびに経済・環境に与える影響に対する考察)
・デザイン作業の留意点
(構図のポイント、配色による効果)
12 未来像を探る 2 多目的室
各会場
(一斉)
・日本の現状、周南・光地域の現状を3観点から探り、未来像を提案する
・考えられる課題に対する対応策の考察
13 販売企画会議2
(追究過程のまとめ)
(金銭教育のまとめ)
2 各会場
(小集団)
(一斉)
・経済からみた周南・光
・資源からみた周南・光
・環境からみた周南・光
・地域住民の要望
・市場の動向(周辺地域、山口県、日本)
14 まとめⅡ
(最終発表会)
2 武道場
(一斉)
・武道場での発表
(評価シートの配布)
15 方法面の検証 1 各会場
(小集団)
(一斉)
・有効であった方法の確認
・他分野への転用への模索
・新たな課題や疑問点の把握
4.授業の様子ならびに生徒の反応 4.授業の様子ならびに生徒の反応
当初、子どもたちは金銭・金融教育の意味や意義に気づくことなく学習に取り組んでいた。それどころか、多くの子どもたちは総合的な学習に対してすら同じような感覚をもつものが多かった。なんとなく調べ・まとめ・発表して終わる、この繰り返しが総合的な学習として捉えられていた。
この単元も、最初の段階での子どもの取り組みは、今までどおりの様子で進められていた。しかし、発表会を学習のゴールとして位置づけるのではなく、学習のスタートとして位置づけることで、子どもたちの学習に対する姿勢が劇的に変化することとなった。
発表会を通して感じた(個人の発表・周囲の発表を通じて)疑問点や課題点、調査内容や方法について、授業で取り上げていくことで子どもたちの学習意欲は大いに高まっていったのである。

また、この学習において、単元構成の意図でも述べたが、3つの学習の関連について教師が意識することで、子どもたちの学習成果は、更に高まっていった。
次の文章は、第8次と第9次の学習を終えた後の子どもたちのレポートの一部である。

第8次「金融のしくみ〜世の中のお金の動き〜」を終えて
今日の学習の中で、株式はオランダの東インド会社が、今から500年位前に始めたものだと知り、すごい歴史のあるものなんだなあと思いました。
株の話を聞いて、改めて人と人との結びつき、「信頼」が社会では大切なんだと思いました。私たちもいい加減な生活をせず、信頼できる学校社会をつくっていこうと思います。
当然、いまやっている総合学習の「エコハウスの企画」も、だれがみても信頼してくれる、納得してくれる内容にしていきたいと思います。今日は楽しい授業ありがとうございました。
わかりやすく、とても良いと思いました。
わたしたちが発表すると、本当に伝えたいところが伝わらないことがあって、なんとなく不完全燃焼で終わってしまうことがあるのですが、今日のプレゼンテーションをみて、次の発表会に向けてのいいヒントになりました。
今日は本当にありがとうございました。
第9次「エネルギーの現状」を終えて
エネルギー教室を開いていただき、ありがとうございました。
…今日の学習は主に発電についての内容でした。太陽光発電や風力発電等の大体の原理はぼくたちも知っていましたが、その構造については、今回のこの学習で初めて知った人が多いと思います。
ぼくたちのエコハウスの企画では太陽光発電や風力発電を用いたものが多かったですが、それには莫大な費用がかかるし資源も限られているので、難しいと実感した人もいるはずです。
次のエコハウスの企画会議の時には、これらの反省をふまえた上での企画になると思います。
機会があれば、また、ぜひとも柳井発電所のほうへ入ってみたいです。本当に有難うございました。
先日は私たちのためにエネルギー教室を開いていただき、ありがとうございました。
…私は今まで電気のことなんて考えたことがなくて、もしかしたら、私の孫の孫ぐらいの頃は電気を作る原料がなくなっているかもしれないと考えると少し怖いです。それをちょっとでも防ぐために、太陽光発電や風力発電が開発されたんだなあと思いました。ですから、これからのエコハウスの企画では、太陽光発電や風力発電の費用面や発電量の問題を解消して、なんとかして企画に取り入れていきたいと思います。
このように、子どもたちは経済に関する学習を行った際には、経済に関する学習のみに注目するのではなく、経済の歴史や、人々とのつながり、実生活との関連に目を向けるようになり、また、エネルギーに関する学習を行った際には、経済との関連や環境、今後の展望にも目を向け、課題解決に取り組もうとする姿勢が高まっていった。
少しずつではあるが、扱う分野の学習のみならず、他分野とのかかわりや関係を見い出すことから、現在行っている学習内容の価値を子どもたち自身が高め、より実用的な知識へと転移させていくことができるようになっていった。
5.おわりに 2 指導展開と指導の実際
金銭・金融教育ならびにエネルギー環境教育を軸に据えた総合的な学習を展開していくことで、「自ら課題を設定し、自らのペースで学習に取り組み、学習した内容と絡めて自らの生き方やあり方を見直す」という、総合的な学習が本来目指すべきものに近づくことができたのではないかと考えている。
金銭や環境に関する事象は、子どもたちにとって関心の高いものであり、これらの学習をどういう位置づけで、どのタイミングで提示していくかによって、学習成果が大きく左右される。また、教師が、子どもの活動を分析する視点として、金銭・金融、環境といった視点をもつことで、的確なアドバイスが可能となり、子どもたちの獲得する知識の実用性を高めることにつながった。

その結果、「こんなことに挑戦したいけど、ここまでしかできない。…だから工夫しよう」といった発想が、当たり前のように子どもたちの学習活動のなかで見られるようになり、更にその活動を楽しむ子どもの姿も見られるようになった。
理想論を言い放つだけで、壁にぶつかると諦めてしまうといった子どももいたが、課題を克服する活動に楽しさを見い出すことができる子どもが増える中で少しずつ変容し、このことで、学校での学習全体が大いに活気づくこととなった。
つまり、この一つの取り組みから徐々に学校の教育活動全体が活性化されるようになっていったのである。

昨年度までの取り組みから、多くの成果をあげることができたが、当然のごとく、これで完璧というものではない。
「この取り組みで得たカリキュラムを形骸化させないこと」「研究指定を終えた後も取り組みに対する姿勢を変えないこと」「生徒を見つめる温かくも確かな目を持ち続けようと意識し続けること」など多くの課題も抱えている。
これらの課題を教職員が絶えず意識し実践し続けることでしか次のステップを踏み出すことができないことも十分承知している。
今までの取り組みが無になることとならないよう、また、更なる成果を生み出すことができるよう、今日からの教育活動に真摯に取り組んでいきたい。
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発行/(財)生命保険文化センター