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授業実践報告
『ハンバーガーショップを経営しよう』
 
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(2007.9)
仙台市中学校社会科研究会 公民部長 吉岡 康則 先生(仙台市立鶴谷中学校)
1.はじめに 1.はじめに
昨年度、仙台市中学校社会科研究会(略して仙中社研)公民部会では、中学校3年生の社会科(公民的分野)の経済学習の導入として、「ハンバーガーショップを経営しよう」という単元を構想して、授業実践を行った。
 本単元は、中学校学習指導要領公民的分野の内容(2)の「国民生活と経済」の中項目ア「私たちの生活と経済」に区分される部分であり、経済活動の意義や市場経済の基本的な考え方、生産の仕組みや商業・流通について学習する時間である。
 仙中社研公民部会では、「ハンバーガーショップ」という生徒にとって身近な企業を中心的な題材として取り上げ、さらに、生徒がその経営者になると仮定して、経営案(経営方針)を考えさせることにより、経済学習への興味・関心を高めるとともに、経済の基本的なことがらについて学習できるよう単元を構成した。

なお、この実践報告は、仙中社研公民部会が共同研究として単元や授業の構想を練り、仙台市立中田中学校の千葉靖彦先生(現在は、仙台市立東仙台中学校に勤務)が授業実践したものをまとめたものである。
(平成18年10月26日、仙台市立中田中学校3年3組での授業実践からの報告)
2.授業の目標 2.授業の目標
(1)単元の目標
「ハンバーガーショップ」という生徒にとって身近な経済活動を題材として、生徒の経済学習への興味・関心を高めること、「経営者と消費者」など、異なった視点から経済的な事象を見ることなどにより、社会的な事象を多角的に考察することをねらいとしている。

(2)本時の目標
自分たちが開発した新ハンバーガーショップの経営案を、経済の用語を用いて分かりやすく適切に発表するようにする。
どのようにしたらお店の経営で利益が出るのか、他の班の発表を参考にして、より広い視野で考えるようにする。
3.授業展開 3.授業展開
(1)教科 : 中学校社会科 公民的分野
(2)使用教科書 : 「新しい社会 公民」(東京書籍)p106〜119
(3)単元の構成
主な学習内容 指導上の留意点・学習形態 等 資料・準備物
1 ハンバーガーショップの経営者になってみよう
・学習課題の提示
・今後の学習への見通し
つぶれそうなハンバーガーショップの経営者という設定で、どうやったら有名ハンバーガーショップに対抗できるようなハンバーガーショップを経営できるのか考えさせるなど、今後の学習活動に見通しを持たせるようにする。
グループ学習
教科書 p106〜107
学習プリント 27
2 有名ハンバーガーショップの流通のしくみ
・流通
・流通の合理化
・商業
有名ハンバーガーショップを事例とすることで生徒の興味を高めながら指導を行う(2〜5時間目)
流通の合理化やコスト削減など企業の利益追求の工夫を学ばせる。
一斉学習
教科書 p112〜113
学習プリント 28
3 有名ハンバーガーショップの生産のしくみ
・資本主義
・株式会社
経済活動の意義が人間の生活の維持・向上にあることを理解させ、企業の役割について多面的・多角的に追究させる。
一斉学習
教科書 p114〜115
学習プリント 29
4 市場経済と価格について
・市場経済
・需要と供給
・価格
有名ハンバーガーショップのハンバーガーの価格を例にして、市場経済における価格の成り立ちや価格の役割を理解させる。
一斉学習
教科書 p116〜119
学習プリント 30
5 消費者の視点から学ぼう
・商品の選択
・家計
・消費者の権利と保護
消費者の立場からハンバーガーショップを考え、次時の開発会議につなげさせる。
一斉学習
教科書 p108〜111
学習プリント 31
6 新ハンバーガーショップ開発会議
・テーマの選択
様々な視点から考えられるよう、いくつかのテーマを提示し、その中から選択させる。
これまでの学習をもとに、どうすれば利益の出るハンバーガーショップが開けるかについて話合いをさせる。
前半;グループ学習(話合い活動)
後半;グループ学習(調査活動)
教科書 p112〜119
学習プリント 32
7 新ハンバーガーショップ開店に向けて調べよう
・調べ学習
・発表準備
より良いハンバーガーショップを作るために必要な資料を収集・活用させる。
グループ学習
教科書 p112〜119
学習プリント 33
8 新ハンバーガーショップ経営案を発表しよう
・発表
・話合い
(本時)
自分たちが開発した新ハンバーガーショップの経営案を、経済の用語を用いて分かりやすく、適切に発表できるよう支援する。
グループ学習(発表会)
教科書 p106〜119
学習プリント 34
(4)本時の学習指導
○題材名「新ハンバーガーショップ経営案を発表しよう」
○学習指導過程
段階 主な学習活動(形態) 指導上の留意点・支援 資料 その他
導入
5分
○発表会の仕方を学ぶ(一斉)
・教室をコの字型に机を配置して、グループごとにまとまって着席し、中心で発表を行う。
・他のグループの発表のときは個人ごとに学習プリントにメモをとる。
・これまでに学んだ経済についての知識を生かし、新ハンバーガーショップの経営案を発表する。
○他のグループの発表をしっかりと聞き、メモをとるように指導する。
・それぞれのテーマごとにどんなことを工夫したのか?
学習プリント
展開
35分
○グループごとに中央に出てきて、開発案を発表する(4人グループ)
 ※アメリカ産牛肉激安バーガー
  高級牛肉バーガー
  農家直接契約野菜の使用
  店員はアルバイト
  国産品だけで作ったハンバーガー
  地産地消ショップ
  他の会社との経営統合
○発表の際にフリップを高く持ち上げ、すべての人に見えるようにさせる。
○他グループの発表を聞きながら、個人ごとに学習プリントにメモをとらせる。

・工夫した点は何か?
○発表から浮かんでくる問題を発表させることで、生徒全体で問題を共有化する。
○発表やまとめの様子を見て、指導を行う。
学習プリント
フリップ
まとめ
10分
○自分たちの考えなかった視点で、とり入れるべき点や、学んだことを学習プリントに記入する
※○班は発表が分かりやすく、フリップが見やすいように工夫されていて良かった
※△班のハンバーガーは安心してハンバーガーをつくるために農家から直接野菜を売ってもらう契約をしていて、自分たちもとり入れるべきだと思った
○机間指導を行って支援する。
・他のグループの発表を聞いてどう思ったか。
・自分たちのグループにとり入れるべき点はあるか。
○時間があれば数人を指名して感想を発表させ、意見を共有させる。
○教師の側から各班の発表の良い点をあげ、評価する。
○発表の中で出ていた経済的な考え方について、必要があれば補足し、一般的な知識でつなぐなど、今回の発表がハンバーガーに限ったことではないことを説明する。
学習プリント
 ※は、予想される生徒の反応
4.授業の様子、生徒の反応(8時間を通しての生徒の意見・感想) 4.授業の様子、生徒の反応(8時間を通しての生徒の意見・感想)
<1時間目>
どんなハンバーガーショップを経営したいかという問いに対する生徒の答えとして、出されたアイディアは、以下のような内容であった。
・10円メニュー  ・1円バーガー  ・出前サービス

→単なる思いつきが多い。しかし、これから始まる学習に対しては意欲を見せる生徒が多く見られた。

<2〜4時間目>
・有名ハンバーガーショップはうまいことやってるなあと思った。
・もっと宣伝をとり入れることも大事なのかなあと思った。
・有名ハンバーガーショップより品質を良くしてセルフサービスにして、価格を安くする。
・値段を安くして、品質はそこそこに。
・ちょっと安めで多く作って売る。

→授業で学んだことを少しずつとり入れるようになってきた。しかし、具体性はあまりない。どのように考えればいいのか戸惑っている生徒も多かった。

<5時間目>
・もっとよく、経営について考え、そしてお客にも安全・安心して食べてもらえるようなことを考え、店にも利益が出るように考える。
・収入を計算に入れて支出が収入を超えないように、店の収入にあったハンバーガーを考える。
・安全性、人件費の削減に取り組む。

→経営者からの一方的な考え方だけではなく、消費者にとってどのようなことをするのが大切なのか、という視点を理解した生徒が出てきた。これからの方向性をつかんだのか、意欲的な姿が多く見られた。

<6・7時間目>
・人件費を削減…客がコンピュータのタッチスクリーンを使ってセルフサービス方式を導入
・健康食をとり入れる…チキンや野菜など
・ポテトを売る…ドリンク・ポテトは利益率が高い
・地産地消で、消費者の食に対する安全、安心志向の高まりを背景に消費者と生産者の相互理解を深める取組をする
・アレルギー体質の人でも食べられるものを作り、マークで表示する
・検査した農家のみと契約し、産地直送を行う(流通の合理化)

→学習したことを生かし、テーマごとに自分たちで資料(図書・インターネット)を収集することで、より具体的な意見が出てきた。よいお店を作るためにはどうすればよいのか、多面的に考えられるようになってきた。
また、生徒が自分からいきいきと積極的に学習に取り組む姿が見られた。

<8時間目>
・何も考えないで食べていたファーストフードだけど、このようにいろいろな工夫がされていてお店が成り立っているのだと思った。
・4つの権利で消費者側になって考えていくことやアンケートをとってお客様の意見を反映させること、いろいろな人をターゲットとして工夫するなど、とり入れていきたいと思った。
・今までの時間はとても勉強になった。そして、お店をオープンするまでの過程がこんなにも大変だということを改めて実感した。
・おいしさだけで客を集めるのではなく、もっと違う方法で宣伝するべきだと思った。
・8時間も授業時間をかけただけにとても楽しかった。各班とても個性的なアイデアをきかせてくれて、サービスと利益をうまく両立させたアイデアもあって面白かった。
・他の班の発表も聞いて、人件費削減のために高校生や若い人を雇うことも考えられるけれど、安心・安全のために正社員を雇うことも必要だと思った。

→発表を聞く中で、他の班の視点を知り、安全のためにはどうするのか、安くするためにはどうするのか、などの工夫を現実のこととして見るようになっていった。
また、お互いの発表内容を評価しており、何をすることがお店の経営にとって良いのか、自分の意見をそれぞれもつようになっていた。経済単元の学習で使用する用語を用いて、自分たちの考えや意見をまとめて発表しており、学習した内容をある程度は自分たちのものにしていた。
5.まとめ 5.まとめ
生徒から、「経済単元の学習は、出てくる用語が難しく好きでない。」といった声をよく聞く。日常生活を題材にして興味深く学習できるはずの経済の授業が、「面白味に欠ける」といった状態を何とか打開すべく、今回の授業・単元を構想した。授業後の生徒の感想からは、「楽しく学習できた」といった内容のものが多く、概ね良好のようであった。

ハンバーガーショップの経営者となって、経営案を考えることによって、社会的事象を多面的・多角的に考察することをめざして授業作りをしたが、実際に授業を行ってみると、こちらの予想以上に生徒たちは考え、活動していたようである。おそらく、お店の経営案を自分なりに考えて、それをもとに班で話合い、学級全体で発表するという学習活動により、生徒はハンバーガーショップの経営という1つの社会的事象を自分の問題としてとらえることができ、そのことが活動への意欲を喚起したのではないかと思う。

仙中社研公民部会では、これまで、生徒にとって身近な、地元の商店街、大型のスーパーマーケット、コンビニエンスストアなどを題材としてとり入れて、経済教育に取り組み、実践を重ねてきた。これからも、「楽しく学べる」経済学習をめざし、さらに研究を深めていきたいと考える。
参考資料(学習プリント) 資料
資料1 資料2
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