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授業実践報告
「家電選びでデシジョンメイクツリー(意思決定力)を養う」
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(2007.10)
千葉県立鎌ヶ谷高等学校 家庭科 石島恵美子 先生

デシジョンメイクツリーとは、意思決定する過程を樹形図にして、決定するまでの思考を整理して表記するものです。
1.はじめに はじめに
人生の岐路の意思決定には勇気が必要である。そこで私は高校生に、自信を持って意思決定をしていける社会人になってもらいたいと思っている。失敗のない人生などない。だから、1つのつまずきで「負け組」となるような昨今の風潮に負けてはいけない。しかしながら、懐の浅い世智辛い世の中で、失敗を恐れずに自分独自の道を切り拓いてゆける若者が、今どれほどいるだろうか。閉塞感に満ちた時代だからこそ、高校生に自信を持たせ、元気に社会に巣立って欲しいと思うのである。
モラトリアル、ピーターパンシンドローム、フリーター、ニートという言葉は豊かな現代社会の若者を象徴する。そして晩婚化、少子化の現代の社会問題も意思決定を先送りにしてきた結果のようにも考えられる。
家庭生活では日々小さな意思決定の連続である。意思決定の練習は必須であり、その都度自分の意思決定の評価を確認する必要がある。家庭科の学習を通してデシジョンメイクツリーを思考回路に組み入れ、現状の正しい把握、情報収集、多様な価値観の容認、計画性、等々が身に付くような疑似体験をさせたいと考え授業案を考えた。
2.本校の概要・教科・対象学年 2.本校の概要・教科・対象学年
本校は、千葉県の北西部の鎌ヶ谷市の住宅街に位置する男女共学の全日制普通科の学校である。交通の便が良く、隣接の市からの通学者が多い。部活動加入率や出席率が高く、進学指導の充実の他にも生徒を元気にする魅力のある学校である。
家庭科は2年で「家庭基礎」2単位必修、3年文系で「家庭基礎研究」2単位が必修である。また、選択教科として3年で「フードデザイン」3単位と「服飾文化」2単位が設定されている。
3.授業展開 3.授業展開
教科 : 家庭科 家庭基礎
教科書 : 高等学校 改訂版 家庭基礎 自分らしく生きる
配付資料 : プリント 冷蔵庫パンフレット類
単元 : 消費を考えるー消費生活と環境
資料
4.単元の指導計画 4.単元の指導計画
具体的な評価規準(評価方法)
指導
項目
時配 関心・意欲
・態度
思考・判断 技能・表現 知識・理解
私たちの暮らしと経済 2 自分の将来を積極的に捉え、ライフステージのテーマを考えようとしている
(ワークシート、発表、観察)
新聞の経済に関する記事を収集できる
(資料、ワークシート)
ライフステージごとの収支やテーマを的確に考えている
(ワークシート)
新聞の経済に関する記事について的確な批判力や感想を持つことができる
(レポート、ワークシート)
生活にかかるお金について的確に調べ記入している
(ワークシート)
新聞記事を的確に要約し、コメントを的確に記入している
(レポート、行動観察)
家庭経済の仕組みについて理解している
国民経済制度を理解している
(ワークシート、定期考査)
消費者の権利と責任 3 デシジョンメイクツリーのロールプレーイングゲームに積極的に参加している
(ワークシート、発表、観察)
消費者問題のVTRを積極的に視聴している(観察、ワークシート)
消費者として責任をもって生活しようとする意欲がある
(観察、レポート)
的確な情報収集ができ、デシジョンメイクツリーに従って、意思決定ができる。
(ワークシート、発表、観察)
売買契約や契約トラブルの対策について、解決する最善の方策を考えることが出来る
(ワークシート、発表、観察)
デシジョンメイクツリーを的確に記入することができる。
(ワークシート、発表、観察) ロールプレーイングが適切に記録され、発表ができる。 (ワークシート、発表、観察)
暮らしと情報について理解している。
消費者の意思決定と責任について理解をしている
消費者問題や消費者保護について理解をしている
売買契約とクレジットについて理解をしている
契約トラブルとその対策について理解をしている
(定期考査)
私たちの消費生活と環境 2 現代の消費生活を問題意識をもって捉えることができる
(観察、レポート)
循環型社会を実現していくために、消費生活を考え、環境に負荷を与えないように工夫していく方策を考えることが出来る
(ワークシート、発表、観察)
環境負荷の少ない生活を目指して生活様式を見直し、環境に調和したライフスタイルの確立をはかる
(ホームプロジェクト、宿題)
循環型社会について理解を深める
環境に優しい消費行動について理解を深める
(定期考査)

5.本時の目標

授業展開
(1)題材  消費者の意思決定と責任 〜デシジョンメイクツリーを意思決定の過程に植樹する〜

(2)目標
1. 消費者として適切な意思決定のもとに権利を行使し、責任ある消費行動をとっていこうという態度を養う
2. 消費行動は、生産者や行政に対して自分たちの意向を伝え、その実現に向けての義務と責任があることを理解する
3. 消費者運動が消費者の権利を行使し、責任を果たすうえで大きな役割を持つことを理解する

(3)本時の学習指導過程  ※表中の◯は指導上の留意点 【】は評価分類
 
段階 学習の流れ 学習形態 学習内容と活動 指導上の留意点と評価 備考
導入5分 ・本時の内容の確認 クラス ・本時の時程の確認
・デシジョンメイクツリーについて説明する
・ロールプレーイングゲームの注意事項の確認
◯本時の内容の確認をする プリント
展開40分 ・冷蔵庫のパンフレットの説明を把握する
・各班で割り当てられた家族構成の確認と名札付けをする
・パンフレットをみて自分の主張を考える
クラス
各班
・6人
(出席番号順)
・パンフレットの見方の説明を聞き、それぞれの商品の概要を把握する
・代表者がくじをひき、各班ごとにモデル家族を割り当てる
・班員でくじをひき、班員の役割を決める
・自分の役にあった主張を考える
◯パンフレットのメーカー名を消しておく
◯摸擬家族の名札を班分作っておく
 A 父 母 子(6、10歳)
 B 父 母 子 祖母
 C 父 母 子(16、20歳)
 D 1人暮らし
A〜Cは2班ずつ、Dは1班
各班で司会者と記録を作る
D班はいろいろな立場の1人暮らしについて役割を演じさせる
【意・態】
素早く机を移動させて班を作ることができたか
◯パンフレットを見る観点(機能、容量、スペース、エコ、値段、付加サービス)についてヒントをだす
パンフレット
ビデオカメラ
モニター
摸擬家族パック
家族員の名札
・ロールプレーイングゲームでそれぞれの家族にあった冷蔵庫を選ぶ
・いろいろな角度から家庭生活を分析する
・ロールプレーイングゲーム
・司会者の進行でその家族にあった冷蔵庫を決める
◯ロールプレーイングで役割にあった発言を考えさせる
(巡回指導)
◯円滑にロールプレーイングが各班で始められるように助言する
(巡回指導)
◯円滑にロールプレーイングが各班でできるように助言する
(巡回指導)
【意・態・関・技】
巡回中に生徒個人個人の活動を観察する
・各班で発表をする
・他の班の様子を聞く
・各自で意志決定の評価をする
・消費者の権利と責任を考える
・各班毎に代表者が決定した冷蔵庫について決定経過を説明する
・消費者の8つの権利を記入し、覚える
【意・態・関・技】
発表を円滑にし、他の班の意思決定への経過を理解できたか



5分
・学習内容の整理
・自己評価
・次時の連絡
クラス ・他の班の意思決定を参 考に各自の反省・感想を記入する
・自己評価を記入する
◯プリント整理と自己評価を作成するよう助言する
【意・表】
自己評価を積極的に書き、的確な反省ができたか
 
(4)評価
 主に諸活動の評価はプリントで行う。プリントで客観的にどのような活動をしたか、観察・考察から評価する。
1. 情報収集に興味関心を持ち、積極的に分析しようと努力している。
 (関心・意欲・態度・表現)→ ワークシート、行動観察
2. デシジョンメイクツリーを理解し、ロールプレーイングを実践している。
 (思考・判断・態度・技術)→ ワークシート、行動観察
3. 自己の意思決定の評価をするために分析し、積極的に話し合いに取り組んでいる。
 (関心・意欲・態度)→ ワークシート、行動観察
4. ロールプレーイングをとおして、多様な価値観や意思決定の過程を理解し確認している。
 (知識・理解・関心・意欲・態度・技術)→ ワークシート、行動観察
5. 消費者の権利や責任を正しく理解し、それを踏まえて家庭生活を送ろうという意欲を持っている。
 (知識・理解・関心・意欲・態度・技術)→ ワークシート、行動観察
6.生徒の感想(抜粋) 授業の目標
・初めはロールプレイングなんて嫌だと思ったが、役割があると発言しやすいと思った。
・役をやることで、家族の気持ちがわかったような気がする。
・冷蔵庫を買うことを通して、家族が家の中でどのようなことをして、どんなことを考えているのかを考えることができた。
・お母さんの負担をなくす冷蔵庫を探すよりも、家族のみんなが家事分担を心がけることのほうが必要だと思った。
・最近の冷蔵庫はいろいろな機能が発達していると思った。
・コマーシャルで宣伝していること以外でも、慎重に選ぶことが大切だと思った。
・こんなにいろんなことを考えて買い物をしたことが無かったので、奥が深いと思った。
・家によって、配慮しなくてはいけないことが違うと思った。そのニーズにあうものが見つかるためにも沢山の商品が必要で、自由に選べることはすごいことだと思った。
・広告のチラシを見ることも大切だし、流されないためには商品の知識が必要だと思った。
・自分の考えは自分の親の考えが普通に入っていた。他の人の親役の発言は斬新だった。いろんな人の考えを聞けてよかった。
・当たり前だと思って考えていなかったことが、違う考え方も普通にあると思った。
・家族によって冷蔵庫の使い方が違うと思った。
・野菜室は大きい方がいいと思っていたが、保存しないほうがよい食品だった。反対に冷凍食品は安い日に買いだめをする。
・毎日買い物にいけないお年寄りには冷蔵庫はないと生きていけない。
・家電はいつの間にか家にあったし、自分の意見はきいてもらえないから初めて真剣に考えた。自分が大人になったら今日のことを思い出してデシジョンメイクツリーに従って選びたい。
・盛り上がって楽しかった。今度は携帯のこともやってほしい。
・ふざけているのかわからないくらいの雰囲気だったけど、みんなで意見を沢山出せて、結論を導くことが出来た。
・エコのことはいつも最優先に考えなくてはいけないし、企業も気を配っている。値段は高いけどエコのことを考えた製品を買って応援したい。でも国は援助とか出して安くしてほしい。
7.まとめ 生徒の反応
コミュニケーション能力に長けていない高校生は、発言の場を設定すると自信をもって発言することができるようだ。役の台詞をいうことで、自分の責任も半減し自由に活発なディスカッションの場となる。教育の場でこのように安全に守られた機会に発言する練習をすることは、ディベートの入門としては意味のある授業だったと思う。自分の意見を言い、聞いてもらえることは気持ちがよい。
この授業には答えがない。立場の違う人が暮らす家庭や社会で、主体的に考え、話し合う経験こそが大切である。生活力は主体的に生活しているうちにつくものである。私は家庭科の授業で主体的に生活していこうという意欲と自己效力感を味わえる機会を多く作っていきたいと考えている。
また、他単元との総合的な授業を開発することもテーマとしている。この授業の発展型として家族にあった住居の選択を課題解決型の授業として展開している。
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