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経済的自立のための金銭感覚
web.09
(2007.12)
山口県立下関南高等学校 社会科 三嶋 和雄 先生
1. 教科、学年、単元
  1. 対応教科 : 社会科 現代社会
  2. 学年 : 高等学校2年生
  3. 単元 : 現代の経済社会と政府の役割 〜政府の役割と租税〜
2. 指導目標
  1. 給与所得の内訳から、所得に対する国税と地方税の割合のほか、健康保険料・厚生年金保険料・雇用保険料などの主要な社会保険料の割合を知り、「消費者、納税者、生活者としての社会的責任」について考えさせる。
  2. 所得税の累進税率の変更が「所得の再分配」機能に与える影響を推測させる。
  3. 税収における所得税、法人税、消費税の推移のグラフから、財政にとってどのような税が望ましいか考えさせる。
  4. 高卒の初任給、それに対する租税や社会保険料を実際の金額で考えることで、家計と財政の関連を具体的に考えさせる。
3. 本時の目的
  1.  経済的自立のための金銭感覚を養う。
  2.  家計と財政の関係を実感させる〜給与明細と一般会計を結びつける。
  3.  累進税率の変化が「政府の経済的役割」にどのような影響を与えるかを考察する。

4. 指導内容
教師の動き 生徒の動き
【導入】
・発問「一人暮らしをするには1ヶ月どれくらいのお金が必要か?」
→生徒の答えを板書する。
※金銭感覚がない生徒がいれば、どんな支出項目が大きいか答えさせる。

・自由に予測し、答える。近くの者同士で相談する。
・ネットで1ヶ月の生計費を調べるよう指示する。
※参考サイト「おしえてHOME’’Sくん」
・調べた結果を板書する。
・ネットで調べる(ヤフーまたはグーグル)
・当初の予測した金額と比較し、1ヶ月の必要収入を理解する。
【展開】
・発問「高卒または大卒で就職した場合の初任給はいくらぐらいだろうか?」
※導入の「必要生計費」と関連づけさせる。

・自由に予測し、答える。近くの者同士で相談する。
・厚生労働省のデータを板書し、プリントを配布する。

1. 資料(1)「18年度求人票」の見方を説明する。

2. 資料(2)給与明細のモデルで賃金から控除される社会保険料と租税の内訳を説明する。

3. 資料(1)による給与明細書を書かせる。
※資料(2)と比べて、所得税の累進制の影響がでていることに注目させる。

・「基本給」「税金」「社会保険料」「手取り」の意味を確認する。
・健康、年金、雇用の3つの保険料と、所得税、住民税の2つの税金は必ず控除されることを知る。
・「給与明細書」を作成する。累進課税制度を数字で実感する。
・20年間で最高税率が70%→37%、最低税率は変化がないことを読み取る。
・累進税率の変化を、既出の用語「所得の再分配」「ビルトインスタビライザー」「水平的公平」と関連させて理解する。
(時間により以下は次の時間に回すこともあり)
・発問「資料(3)累進税率の変遷を見てわかることは何か?」
・発問「最高税率が低下するとどうなると思うか?」
※答えが返ってこない場合はこちらで解説する。

・累進度が弱まった結果、(1)政府の経済的役割のうちで第2の「所得の再分配」機能が弱まっていること、(2)景気調整の方法のうちでビルトインスタビライザーの効果が弱まること、を説明する。

・20年間の所得税率の変化により、所得格差が広がる社会になりつつあると予測する。
【まとめ】
一人暮らしをするための金銭感覚をもつことが大切であること、給与明細書から日本社会の経済問題が読み取れることをおさえる。次回は消費税との関連を考えると予告する。
 
5.生徒の反応
  • 本校にきていた高卒予定者の実際の求人票を提示した点など、実際の金額をもとに授業した点は、いつもの抽象的な経済用語を使った授業と比べて生徒の興味・関心は格段に高まったようである。
  • 累進税率の低下が所得の再分配効果を弱めることについては、指導要領を越える内容であり、やはり生徒の関心をそこまで深めることはできなかった。
  • 「税収における所得税、法人税、消費税の推移」グラフの読み取りはできたようだが、そこから「直間比率」の問題にまでは考察させることは難しかった。
6.生徒の主な感想
  • 将来、社会に出る時に役立つと思った。
  • 興味深い授業だった。
  • 金銭感覚を養うことは、とても大切なことだと思った。
7. 所感
高卒で就職、または大卒で就職する前に、具体的な金額を提示しながら生徒に家計を考えさせることが、経済分野における公民的資質を高めることになる、と信じてこの授業を考えた。特に教科書では所得税や年金保険料などの用語は出てくるが、それを給与との関連で実際の金額を提示しないため、生徒にとっては実際に就職して給与をもらうまでそれを真剣に捉えることはできていないと感じていたからである。しかし実際の授業では、こちらの目的を達成するまで生徒の思考を深めさせることができなかった。今後も、このような視点から授業を改善していきたいと考えている。
資料
資料(1) 求人票
資料1 求人票
資料(2) 一般的な「給与明細書」のモデル
資料2 給与明細書
資料(1)の企業に就職したら、来年の給料はどうなるか?
資料1の企業に就職したら、来年の給料はどうなるのか?

※平成16年度の初任給(厚生労働省資料)
【大卒/195,000円  高専・短大卒/166,300円  高卒/152,600円】

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資料(3)所得税率の変遷〜累進制はどうなっているか?
所得税率の変換
(ア) 資料からわかることは?
(イ) 累進度の強度または所得の再分配の効果について?
     

資料(4)国の「一般会計」における所得税、法人税、消費税の税額の変遷
一般家計における所得税、法人税、所得税の税額の返還
 (ア) 所得税、法人税、消費税グラフの特徴は?
 ※法人税率の推移
〜87年   43.3%
88年   42.0%
89年   40.0%
90年   37.5%
98年   34.5%
99年 30.0%
 
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発行/(財)生命保険文化センター