「働くこと」と「保険」 ~はじめてを無くすために~
1.はじめに
本校は、埼玉県にある私立高校です。全校生徒を合わせると3000人近くになる、いわゆるマンモス校です。学校行事が多い特性から、授業時間に関してはあまり多く取れないことが現状です。
今回、生徒用ワークブック「君とみらいとライフプラン」を「商業科・高校2年生」の「家庭総合」の授業において、使用しました。各クラス35名程度で、自発的な発言率が高く、とても授業のしやすい環境になっています。また商業科という特性上、彼らにとって「お金」に関する内容は、比較的取り組みやすい内容であると感じています。
※生徒用ワークブック「君とみらいとライフプラン」の詳細は、生命保険文化センターのホームページをご覧ください。
2.授業内容
(1)働くってどういうこと
①目的・概要
家族・家庭分野における「仕事」に対する考え方の中で、職業労働と家事労働の違いや、働き方の違い(正規雇用と非正規雇用)を取り扱いました。近い将来、社会人として働くであろう彼らに、働き方の違いによってのメリット・デメリットについて考えさせる時間、家庭を築いたときにどのようにしていきたいかを考えさせる時間として、有効的に活用したいと考えました。
②授業展開
項目 | 内容 | |
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導入 |
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展開 |
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まとめ |
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◆使用プリント
③生徒の反応
アルバイトをしている生徒もいるため、収入を得るということがいかに大変か、身を持って感じている生徒もいました。また高校生になり、それなりに大きい金額の金銭管理を行うようになってきた彼らにとって、自分の将来の生活を考える上で、働くことの大切さを認識しているようでした。
授業の冒頭、「将来、正規雇用として働きたいか」との問いに対し、正規・非正規の違いが分かっていないため、反応がいまいちでした。「とりあえず働けばいいんじゃないか」「働いていれば収入はあるから大丈夫じゃないか」と考えている生徒もいました。
しかし、生涯年収での金額の違いには衝撃を受け、「絶対正規雇用の方がいいじゃん!」と大半の生徒は言っていました。一方で、「自分がやりたい仕事に就くためには、最初から正規は無理。だから、アルバイトをしながら地道に頑張る」と決心している生徒もおり、将来の自身のライフプランに合わせて、働き方を選択しようと考える生徒も見受けられました。
(2)保険って何だろう?
①目的・概要
家庭経済の分野において、「リスク管理」の展開内容として「保険」を取り扱いました。毎日のようにTVCMで放送されており、また生徒も商業の授業の中で「保険」という言葉を使用することがあるため、少しイメージを持った状態で授業に臨めると思い、あえて「保険」という言葉をメインにしました。
また社会人になって初めて保険に加入するとなった時に、知識が全くない状態よりも、ほんの少しでも触れたことがあれば、しっかりと理解したうえで必要か必要ではないか判断できると考えました。
②授業展開
項目 | 内容 | |
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導入 |
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展開 |
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まとめ |
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◆使用プリント
③生徒の反応
授業のはじめに「保険のイメージ」を尋ねたところ、「なんかあった時の備えになるやつ」「保険に入ると病気になっても安心」など、正しいけれどもぼんやりとしたイメージを持っている生徒が多数いました。他にもTVCMの影響を受けている生徒もおり、難しい内容という印象は無く取り組み始めることが出来ました。
そもそもの保険の仕組みについて、生徒が理解していないのはわかっていました。そのため身近な例である、部活による怪我や自転車の盗難を出し、金額も小さく設定したところ、生徒は「自分の小遣いでも、自分のこと守れるんだ」という意識が生まれ、「保険はみんなで支え合っている」という認識ができていました。
また、生命保険と損害保険については、「モノにも保険をかけられるの?!」と驚いていたことがとても印象的でした。まだ車などの高価な買い物をしたことがない生徒たちには、損害保険の存在が不思議に思えたようです。しっかり説明をしていくうちに理解できたようですが、あまり身近でないものだと想像が出来ず難しく思えてしまうのかと思いました。
一番の山場である保険と貯金の比較では、三角と四角の意味を理解できると、すごく納得をしていました。期間を指定して、必要になった時にその金額が用意されていなかったら…ということを考えると、保険に加入していた方がいい、加入していた方が安心することができると実感していました。一方で貯金も万が一の場合の備えになることも理解していて、保険に加入しない分、保険料と同じ金額を毎月貯金していけばいいじゃないかと考える生徒もいましたが、「健康な人であっても、誰かに怪我させられる(事故など)場合だってある」「もしかしたら学校の帰り道に、いきなり後ろから車にひかれてしまうかもしれない」そう伝えることによって、自分だけが注意していればいいというわけではないという意識を持つようになりました。
授業の最後に生徒たちに伝えたのは、「自身のライフプランに合った保険を選ぶこと」「保険は若いうちに入っておくこと」でした。世の中には保険貧乏という言葉があるように、むやみやたらに保険に加入するというのはよくないと。また、家族ができた、子どもが生まれたなど、ライフイベントで保険の内容を変更する人も多いのだから、その時に応じて選んでいくべきだとも話しました。すると、今自分自身にどんな保険がかけられているのか気になる生徒や、将来自分が結婚したらどうするかなど、しっかり考えなければという声もありました。
彼らに感想を書いてもらった内容から、一部抜粋します。
『保険は便利だけど、何もなかったらお金が無駄になるのは嫌だと思った。貯金は好きな時に使えるからいいけど、使い過ぎや足りなくなったら大変だと思う。しっかり考えて使いたい。』
『今回の授業で私は、保険がいかに大切かということがわかりました。大切だと言ってもやっぱり保険は高いので入るか入らないかは悩みどころ。私は保険は安心を買うということなのかなって思いました。』
『保険がある場合とない場合のメリット・デメリットがよくわかったので良かったです。万が一の時に保障してくれるという保険のメリットがとてもいいと思いました。改めて知れてよかったです。』
このような感想がありました。内容から、しっかりと理解でき、保険に対してしっかり考えることが出来ているのかなと感じました。
3.考察など
今回教材を使用させていただき、生徒が意外と内容に食いついていることに、教員として驚きました。
将来の働き方については、近年の雇用形態の変化に基づいて説明をしているため、約5年後にはほとんどの生徒がこの問題に直面するという危機感を覚えたようでした。そのことから、メリット・デメリット・生涯年収に関するデータはとても有効だと感じました。男女別での金額も、仕事をずっと続けたいと考えている女子生徒にとっては、同じ仕事をしているのにずるい、と感じるきっかけを与えることとなり、さまざまな影響を与えていました。
保険については、生徒自身があまりよく理解していない部分が多かった分、理解した後の納得した顔がとても印象的でした。特に、「生命保険と損害保険」「貯金と保険」の比較に関しては、とても分かりやすく、生徒の理解が早かったです。埼玉県では平成30年4月1日から自転車保険の加入が義務となるため、損害保険に関しての知識をここで与えることが出来て、とても良い機会でした。これから先、車や家、骨とう品など購入する、創設家族を作り生活をしていく、そんな生徒も出てくると思います。その時に、今回の保険についての授業を少しでも思い出してもらえればと思います。
また、教材には万が一の場合として、定期保険や養老保険といった生命保険が出ていましたが生徒にとっては、少し先の話過ぎるのかなと感じました。そのため、説明をするだけにとどめ、病気やケガをメインとした医療保険に重点を置きました。まだ高校生の彼らは、部活で怪我をすることも多く、体育の時間に怪我することもあります。そんな身近なところを題材にすることによって、生徒も実感しやすいのではないかと思います。
学内考査で、保険に関する内容を出題したところ、正答率が高く私も嬉しく思いました。特に、「貯金は三角、保険は四角」というワンフレーズは覚えやすかったようで、印象に残ったと言っていました。やはり生徒にとっては、リズム感のあるフレーズが覚えやすいのだなと実感しました。
全体を通して、授業で使用するためには、生徒にとって身近である内容に寄せていくことが大切だと感じました。実感しにくい内容は、ただ難しい内容としか認識することが出来ない生徒が多いため、苦手意識を持ってしまいます。また提示する金額なども大きすぎる金額(1000万円など)であると、金額が大きすぎて現実味がわかず、ただの事実としてしか認識することが出来なくなってしまいます。そのため、生徒のお財布を考えて金額提示をすることが大事だと感じました。生徒に尋ねるところ、高校生が高いと思う金額は3000~5000円で、月のお小遣いの金額がこの金額に近いことから、そう感じるようです。大人と高校生の金銭感覚の違いも考慮することが、生徒の考える力においても必要だと感じました。
4.さいごに
今回教材を使用するにあたり、どの分野を使用するか悩みました。最終的には「働き方」と「保険」に落ち着いたのですが、選んだ理由は生徒の初めてを無くしてあげたいというのがきっかけでした。どんな仕事も正規・非正規が分かれていることが多く、その選択をしなくてはいけない場面に出くわすこともあるでしょう。また、社会人になり一人暮らしを始めたり、結婚・出産などを機に民間の保険に加入することもあると思います。その時に慌てふためくのではなく、落ち着いて考えることが出来るきっかけの1つになってもらえたらと思います。